山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 笹根隧道
第5部 「通せんぼのガードレール」
2023年10月14日 探索 2024年4月19日 公開
通せんぼのガードレール
隧道から現道に戻ろうとすると行く手を塞ぐ、このヤブの出っ張り。こりゃヤブ漕ぎしないとダメか?などと一瞬思ってしまうが、よくよく見ると何やら人ひとりが通れそうな感じで踏み分けが付いているのが見える。どうやら、普段でもここを通行する人が少なからずいて、ここを通れと言うことらしい。
他にはないか…とあたりを見回してみるも、左側はコンクリートの擁壁、その擁壁の上には落石防護柵。さすがに近年まで現役だった道らしく、現代の道路防護施設がそのまま残されている。右側は荒沢ダムの湖面が待っている。ということで、この踏み分けを通るしかなさそうだ。藪に突入してみるとしよう。
踏み分け道が真っすぐ進んでなくて、何かを迂回しているように見えていたのがさっきから気になっていたが、近づいてみてやっとわかった。左側に見える、いかにも強固そうに見える金属の柵。これは崩れた土砂を止める土砂止めで、ここに設置されているらしい。現道時代に発生したのなら復旧されているだろうから、これはこの道が廃道化してから発生したものだろうな。つまり、この道は廃道となっても保守しなければならない理由があったってことだ。その理由は…やはりさっき見つけた山形県のマンホールだろうな。周囲も綺麗に掃除されていたことだし。納得したところで、それじゃ進んでみましょうかと思って、ふと右側を見ると…
おお!絶景だ!
現道のトンネルを通行していては絶対に見ることが出来ない風景。赤川をせき止めて出来た荒沢ダムのダム湖が間近に見える。この景色の左側に少し見えている高い山の向こう側が新潟県だな。すると、この正面の先の辺りが「雷峠」あたりか。
でもって、私は今、山形県の廃道にいる。この道に出会わなければ絶対に見えなかった景色だ。そして、再訪しなければもう二度と見れない。目に焼き付けておかないと。
いやぁ空が高いなぁ…。しばらくこの景色に見とれていたが、先へ進まないと。その前に、もう一度隧道の姿を見ておこう。たぶん、もう二度とここには来ない気がするから。
山に小さく穿たれた隧道。なんだかとても可愛らしく見える。アスファルト部分が元の道路の位置。すると、その周りの広場は何だろう?。こうして離れて隧道を見てみると、なるほど確かにそんなに大きい隧道ではないから、車1台が通行するのにやっとだっただろう。すると周りの広場は行き違いのための退避場だろうか。
こうして離れて見ると、3姉妹の隧道の末っ子は非常に小さく、秋の日差しに輝いて周りを包むような森の緑が美しい。右側には白い落石防護柵。銀灰色ってのはよく見るが、白いというのは初めて見た気がする。
さて、ヤブ抜けしようか…と思って突入すると、拍子抜け。すぐに藪は終わり、その先には白いガードレールが見える。ダム湖に沿って進む廃道は、現道時代には風光明媚な道だっただろうなぁという気がする。廃道にしておくにはもったいない。やっぱりこの道、何かの形で復活できないかなぁ。遊歩道にして歩けるようにすると楽しいかも。
たいして長くない脚を大きく開いてヤブを乗り越えようとすると、足がつりそうになってきた。まったく情けない限りだが、こうして探索する以外はそんなに大して運動を行っていない身体の反応としては、当然とも言える。
誰もいない廃道で藪を乗り越えようとして足がつりそうになって、一人悶絶している中年のオッサンの姿。皆さんも想像したくないだろうが、ここは少し想像してみてほしい。笑えること請け合いだ(笑)。
ヤブを乗り越えた先に見えたのは、ここから先は通れませんと雄弁に語っているように見える、白色のガードレールを使ったバリケード。あのマンホールを保守する方々も、ここまでは車でやってきて、そのあとは徒歩で向かうと思われる。重たい機材があったら大変そうだ。耳を澄ますと、何やら車が走る走行音が聞こえる。現道は左側の森の上を通っているはずで、あと数百メートルほどでこの廃道は現道に合流するはずだ。
この道もあと少し。この先もどんな景色を見せてくれるのか。さぁ行こう!。