一般国道351号旧道
榎峠・比礼隧道
第5部

2019年5月2日 探索・2019年6月29日 公開

浦瀬町側から比礼側に一度通行したものの、その内容にびっくり(と言うほどでもないかも知れないが、私が驚いたのは確かだ)した私は、画像を取り忘れてしまった。ということで、比礼側からもう一度通ってみることにしよう。

これは比礼側の坑門。最初に少し触れたが、この二度目に通行するときに驚いたことがある。洞内に入ろうとするときに、何気なく声を出した。それはどんな言葉だったかは思い出せないが、きっと「さて」とか、何気ない言葉だったように思う。すると、隧道の奥の方から自分が発した言葉と同じ言葉が返ってきた!。これには驚いたが、すぐに「あぁ、なるほどな」と妙に納得してしまったのである。それはなぜかと言うと…

この画像は、比礼側から洞内に入って先に進んだ時の画像である。一見すると、よく管理されている至って普通の隧道なのだが、先の方に光るオレンジ色で縦に光る棒状の物体が左右に見える。これは反射材で、比礼側からこの隧道に進入するときだけ見えるものなのだ。感のよい方は、この時点で「そういうことか」と気づかれたことと思うが、このままもう少し先に進んでみよう。なぜこんな場所に、こんな位置で反射材が付いているのか。実はこの先は…

実はこうなっている。つまり、一本の隧道でその大きさが違っていると言うことだ。こういった隧道はよく見かけるので、決して珍しいものではないものだ。でも、こういった大きいサイズの隧道に存在するのはあまり見かけない。一見、狭くなっている箇所だけ素掘りのようになっているように見えるが、補強のため巻き立てられたコンクリートの端が崩れただけのようにも見える。

先ほど触れた「自分が発した言葉が返ってくる」と言う現象の原因は、まさしくこれだった。つまり、比礼側で声を発すると、この狭くなっている部分で声が反響して返ってきて聞こえていたのである。皆さんも、この隧道に訪れることがあったら、ぜひ試してみて頂きたい。最初はびっくりするが、それは決して「あなたの知らない世界」の話ではなく、ちゃんと説明が付く現象だから安心して頂きたい。

それにしても、なぜ浦瀬町側のこの部分だけ狭くなっているのか。おそらく、この隧道は何らかの原因で浦瀬町側が損傷し、その修復のために坑門が補強され、隧道内部が分厚いコンクリートで巻き立てられて補修されたと考えた方が自然かなと言う気がする。

この浦瀬町側の坑口の異様さは、坑門付近に損傷を受けたか崩落の危険が発生したため、改修されたものだろう。なので、坑道断面も竣功当初の姿から変わっていると判断した。そのため坑道断面が、このような鉄道用トンネルのような、側壁が垂直の隧道になってしまったのだ。こんなことを考えながら、この隧道を観察していたのだが、その途中では車や原付に乗ったおじさんがこの隧道に入っていった。隧道を見上げたりして考えていた私は、時間にして10分程度の短いものではあったが、その間はきっと変に見えたことだろう(笑)。

比礼側に戻ってきた。隧道から少し離れて撮影してみる。比礼側の隧道の雰囲気は非常にいい感じである。左には落石注意の標識が。しかし、落石が起こりそうな崖は隧道付近しかない。すると、この標識はもしかして隧道上部の落石に対して注意を促しているんだろうか…ま、落石には注意しよう(^^;

そこへライダーの方が通りかかった。隧道へ入っていかれたので、思わずシャッターを切ったのがこの画像。中央に小さく見えるライダーの後ろ姿に何となく哀愁が感じられて(もちろん、ご本人はそんなことは全くないのだろうが)、好きな画像の一つになった。何となくここから離れがたかったが、次の予定もあるので離れることにした。さぁ、比礼集落側へ降りていこうと思って降りていくと、先ほどの落石注意の標識の手前に別の標識があった。それがこれである。

どうやら、降雨時は通行止めらしい。でも「時間雨量」などの指定がないから、もしかして少し雨が降っただけでも通行止めになるのか?!。でも、今私が通ってきたばかりの浦瀬町側の道の状況を考えると、狭いし急勾配だし急カーブだし、おまけにガードレールないし…雨天時の通行止めも止む無しか。

長かった榎峠・比礼隧道も、もう少しでゴールを迎える。

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