一般国道351号旧道
榎峠・比礼隧道
第1部

2019年5月2日 探索・2019年6月13日 公開

その日、私は新潟市から国道8号を長岡市まで走り、この峠を目指してやってきた。
長岡バイパスを新潟方面から来ると、亀貝北インターを降りて左折。一般県道8号長岡見附三条線に入って道なりにしばらく走っていくと、やがてこの案内板が現れる。

この案内板が示している浦瀬町交差点はこの先200メートルにあり、角に浦瀬郵便局があるのですぐにわかるはず。画像で言うと少し先に軽トラの後ろ姿が見え、その上に青になっている信号が見えるが、あれが浦瀬町交差点である。今回行こうとしている榎峠・比礼隧道はこの交差点を直進するのだが、案内板からはその存在が抹消されてしまっている。以前は、この直進する道が国道351号だったはずなんだけどなぁ。ではここで、それぞれの位置関係を確認しておこう。

国土地理院の電子地形図(タイル)に注釈を追記して掲載

この辺りは栃窪町や見附市の飛び地があったりして面白い地域なのだが、この旧道は浦瀬町から入ると、峠にある隧道までの距離が非常に長い。しかも非常に細い道。旧道を拡幅したりするくらいなら、新しいトンネルで貫いて新道を作った方が早いと言うことだったのだろう。かくして、新榎トンネルを含む新道が出来上がる。で、浦瀬町交差点から始まる、それまでの道は旧道化したというわけだ。今回私は浦瀬町からこの旧道に入っているので、比礼隧道まで非常に長い道のりである。

さて、現地に戻って、これが浦瀬町交差点。直進する道が旧道のはずで、そこはかとなく雰囲気はあるものの、国道であったという面影はない。画像には写っていないが左手後方にコンビニがあり、そこで最終的な現地確認と作戦を練って、ついでに水分補給をしておいた。旧道の入口にコンビニがあることは珍しいが、探索を開始する前に気分を盛り上げるためにも、補給で寄っておきたいものである。山の中にコンビニはないもんね。

少し行くと、立派な道標があった。掘られている文字は今でも克明に読み取れる。上に掘られているのは矢印で、その下に右行から「水穴 加津保澤 桂澤 亀崎」左行には「北谷村 見附 栃尾方面 約三里」とある。
正面から見てみると…。

今度は矢印が右を向いていて、右から読むと「富曽亀村 長岡市ニ至ル」。左の列には「東山油田 麻〇田 宮地〇吉 栖吉村方面」とある。

すぐそばに案内板があったので読んでみると、ここは石油の道だったらしい。新潟で石油と言うと、新潟市近郊の旧新津市(現在の新潟市秋葉区)がすぐに思い浮かぶが、この付近も盛んに原油が採掘されていたようである。読んでみると、この東山油田開発が始まった当初は山の中で、あたりに道らしい道はなかった。そこで輸送力増強のために道路が計画され、比礼鉱山と浦瀬山鉱山を結び、最終的には県道へ至る道がこの油田開発によって作られ、重機を山に上げることが可能になって輸送力が向上した、とある。
ここで出てくる県道とは、どの県道のことを指すのだろう?。きっと三桁県道ではないだろうから、今通ってきた県道8号だろうか。この辺は机上調査で調べることにするとして、この東山油田が採掘されたことによって、長岡市は商工業都市に発展したとあり、この東山油田が地域にとって重要な油田であったことが伺える。

ここから先、道は浦瀬町の街中を走り、それを抜けるとすぐに下の画像のような長閑な風景が広がる。

ん~、いいじゃないか!。画像は分岐点で、旧道は右の道である。日当たりもよく、道の右側には休耕田だろうか。ところどころに畑も見られる、いかにも旧道然とした道である。でも、国道だったんだよねぇ、これ。
まださほど山中に入っていないこの辺りでこんな調子なのだから、この先にどんな道が現れるか非常に楽しみなところだ。

ん~…一見すると、どう考えても整備前の県道か農道。あるいは林道…。これでは新たにバイパス作ってトンネル掘りたくもなるわな。雰囲気的には非常に良い道なんだけど、栃尾と長岡を結ぶ動脈となるには、明らかに道が狭い。あたりに国道時代の面影は何かないかと探すものの、見つからなかった。

初夏の青空と、日光に照らされて輝く新緑、その中を進む旧道のコントラストが実に美しい。今は空に少しだけ雲があるが、この後晴れてくる予報であることと、この旧道はこの先にある比礼隧道目指して、高度を上げていくことはわかっている。そうすると、この先は非常に美しい山の風景が広がり、いい撮影ができそうだと今からワクワクしてくる。

美しい!と思うのは、私だけだろうか。右に見えているのは砂防ダムだが、そんな巨大な人工物さえも景色に溶け込んでいるかのようにまとまっている。今日が晴れで良かった。路肩の空き地にクルマを停め、自転車を下ろし、近くを走り回ってみる。そもそも車がそんなに来ないので走りやすいこと、この上ない。

青空がいいよねぇ…

森の中を一直線に進む旧道。この道がなくなるには非常にもったいない。旧道でもなんでもいいから、この時代まで残ってくれていたことに感謝したい。でも、比礼隧道はまだまだ遥か先である。この道がこの先、どんな風景を見せてくれるのか、非常に楽しみである。

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