一般国道345号
小名部トンネル旧道

2023年9月30日 探索 2024年1月30日 公開

トレーサー

その日、私は山形県の2か所の探索を終え、往路行程で寄り道(←単純に、見つけてすぐ探索をかけてしまった)をしてしまったがために時間が大幅に遅れて帰路を急いでいた。おまけに今回の探索は日本海東北自動車道も国道7号も使わず、国道345号を往復で使うと決めていたので、やや遠回りになってしまうというミスをしてしまった。

と言うことで、ここは一般国道345号。山形県鶴岡市関川(ここは新潟県・山形県主要地方道52号山北関川線の終点である)を過ぎて、鼠ケ関の国道7号との合流点を目指して走っていた時に出会ったトンネルがこれだ。

このトンネルの名は「小名部(おなべ)トンネル」。
見るからに現代のトンネルで、その外観は通行する者を落ち着かせてくれる、安定した外観を誇っている。ただ、地中に水気が多いのか、水脈をぶった切ったのか、坑道の内部が変色しているのが多少気になるが、それはさておき、実はこの隧道に入る前の左側に、私にとっては余計なものが見えていた。それは非常にはっきりと見えてはいたのだが、前述の帰路を急いでいるという理由で、見えないふりをしていたのだ。それがこの画像である。

多少撮影時間が前後するが、トンネルに進入する直前にこの感じで見えていたのは間違いない。小名部トンネルの坑門に直進していく現道。その周囲は一見すると森のように見えるが、実はさにあらず。左側の側溝に蓋をしてある部分の奥に道らしきものが伸びているのがわかると思う。正直、この風景を見たときに「旧道があるな」と思って即座にブレーキをかけようと思ったが、先を急いでいることもあり、次回探索と言うことにして(言い聞かせて)そのままトンネルに進入した。そして、トンネルを出て少し走ったところで遭遇してしまったのが次の画像の風景だ。

これはいかん!

これはいかん。いかんですねぇ。この景色を見て私は急ブレーキをかけ(もちろん周囲の状況を確認してからなのは言うまでもない)、少し旧道上に入って車を停め、分岐点を撮影したのがこの画像だ。ちなみに奥に写り込んでいる黒い車は、私の相棒のノート。
そしてその手前に、いい感じの古めかした橋があるのがおわかりだろうか。この地点を通過するときに、この橋が一瞬視界に入ったのが運の尽き。新潟に向けて復路を急いでいるにも関わらず、探索する運びとなった。
さて、ではここで地図を確認しておこう。おなじみ地理院地図のタイル地形図に、私が注釈を追加した、これまたおなじみものである。

と言うことで地図を見てみると、この小名部トンネルの前に、すでにレポートになっている鍋倉トンネルがある。この鍋倉トンネルの旧道は、御覧の通り地図に記載されていないので道路としての供用廃止を行っている完全な廃道と言うことになるが、今回私が探索しようとしている小名部トンネルの旧道も地図の記載がない。と言うことは、この旧道も道路としての供用廃止が行われている立派な廃道と言うことだ。現地で見たときに感じた私の直感は、間違ってなかった。

さて、現道から旧道が分岐してすぐに鼠ヶ関川を渡るこの橋も、道が廃道になっているので地図にも記載がない。それはそうなんだが、旧道は鼠ケ関方向から来ると、ここで右の急カーブで川沿いをトレースしていく道形になっていたようだ。なるほど、確かに無理がある線形ではある。だから小名部トンネルが造られたということか。

トンネルの開通前は、この橋が国道345号の一員として交通を支えていた。その道幅は決して広くないし、対面通行がギリギリだろう。親柱には4枚とも銘板が残っているようで、調べるのは簡単だが橋の素性はこの後の第1部に譲るとして、今は周囲をウロウロしてみようかと思い、ふとこの位置から振り返ると、そこに待っていた景色は…!

そこには、昔ながらの峠越えの雰囲気を持つ旧道が待っていた。右の上空には電線がありことから、この旧道も電線の管理道として第2の人生(道生?)を歩んでいるのかもしれない。となると、厳密にいうと廃道ではないものの、この景色は捨てがたいし、鼻血が出そうになるほど美しい。終着地点は最初からわかっているし、何よりもこの景色の先が見たい。そんな想いにかられた私は車に戻り、身支度を整えてまた同じ場所に立つ。

日没も近いし、あまり探索にかける時間はない。それはどんなに見積もっても最大で30分ほどしかないが、おそらくそれだけあれば十分だろう。どうかクマに出会いませんように。

さぁ行こう!

第1部
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