一般国道345号
鍋倉トンネル旧道 第4部
「栄枯盛衰」

2023年9月30日 探索 2023年12月13日 公開

栄枯盛衰

「あるこう~、あるこう~」

こんな歌が頭の中に響く。ちなみに、私は元気だ。あたりを見回してみたが、でっかい獣のような森の神様はいなかった。少し残念だが仕方ない(笑)。

さて、相変わらずヤブを漕ぎつつ下草を踏みしめながら先へ進んでいるが、道幅はだんだんと狭くなってくる。視覚的なものかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。となると山側が崩れたかな?と思い、少し離れて俯瞰的に見てみると、山側の斜面が崩れた跡が明確に残っていた。この道はここまで災害の跡らしきものはなく通ってきたが、ここで山側が大きく崩れてしまったようで、その土砂は路面にまで及んでいる。やはりこの道も他の3桁国道の御多分に漏れず「災害国道」だったらしい。

ガサゴソとヤブを掻き分けて先へ進んでいく。先ほどからこの道と私に寄り添ってくれている白いガードレールが、ここにきて頼もしく思えてしまうのは気のせいか。そのガードレールにはところどころに緑色の苔が表面に浮いていたりして、廃道の雰囲気を盛り上げてくれる。ただ、その先の遥か前方を見てみると…木陰に見えるのは現道の姿?!。すると、この廃道の探索ももうすぐ終わりってことか?。それは口惜しい!。

てことで、さらに先へ進んでみる。左側に四角いものが見えるのは…現道のトンネルの坑口だろうか。ヤブは先ほどよりも幾分深めになってきて(と言っても、あまり大したことはないが)、おまけに灌木や蔦の援軍も参加して全力で私の行く手を阻もうとしているようだが、目の前に現道が見えているので残念だがさほど効果はないといえる。このヤブを抜ければ現道だ。今こそヘルメット・長靴・皮手袋パワーを全開にして乗り切ろうじゃないか!(笑)

王者のクラウン(ヘルメット)、天使のグローブ(皮手袋)、勇者のブーツ(長靴)を着用して、行く手に蔓延る魔女の森(ヤブ)に立ち向かう私だが、実はもう魔女の森は脱しようとしている。その先は光の村か?!。じゃあそこで宿泊してパラメータをフルに戻そう…などとRPG(ロールプレイングゲーム)では展開するが、冗談はさておき、もうすぐヤブは脱出する。これまで寄り添ってくれたガードレールに感謝だ。道の真ん中で私の進路を遮るように生えているボス級の木は、もはや私の敵ではない。これを抜ければ現道で、楽しかったこの探索も終わりを告げる。左側の四角いものは、現道の鍋倉トンネルの坑門の構造物の一部だ。

新旧の道の切り替え。それは道を通行する際の安全度が増す、至極当然の選択であり、改良だ。当時は安全と思われた道路を作る技術の進化に伴い改良され、新しい道が出来る。当然、それまでの道は旧道となり、通行する者もだんだんと少なくなり、やがて交通が途絶えて廃道となっていく。まさしく栄枯盛衰。この風景を見て、そう思った。

ヤブを抜けて待っていたのは光の村?…なんてことはなく、当たり前だが現道だ(笑)。
なるほど、なんて素敵な分岐点!。二重になっているガードレールもポイント高し、もし私がこちらから来ても、ここは旧道と見ておもむろに突っ込んでいったと思うが、こちらから突っ込んでいくには、一見するとこのようにヤブが立ちはだかる。これに入って行くには、それなりの覚悟が必要だったかもしれないな。ただ、こんなヤブを抜けると美しい景色が待っているのも探索の醍醐味。それはこれまでのレポートが証明してくれていると思うし、ここもやはりそうだっただろう。

さ、トンネルを抜けてベース地点に戻ろう。

石積みのような意匠が施された坑門。坑口付近の土砂崩れや雪崩を想定して、坑門が地山よりも少し飛び出たように施工される、いわゆる突出型坑門になっているようだ。この辺は豪雪地帯、冬になると軽く数メートルの積雪になる地域であるだけに、こうした仕様になっているのだろう。坑門の右上部には何やらイラストが描かれている。長年の風雪のお陰で擦れてしまって、なかなか判別しづらいものの…ヨットだろうか。この坑門をくぐって先へ進むと、海側の鼠ヶ関の集落に出ることから、このようなイラストが描かれたのかも。

トンネルを抜けるとすぐにベース地点に辿り着くが
その前にトンネルの銘板を確認しておこう。

第5部(完結編)
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