一般国道345号
鍋倉トンネル旧道 第2部
「廃道を歩く」

2023年9月30日 探索 2023年12月5日 公開

廃道を歩く

鼠ヶ関川の砂防堰堤を発見し、その風景に癒されたところで先へ少し進んだら、いよいよこんな景色になってきた。普通なら心細くなるはずの風景だが、私は違う。きっと、ここを見ておられる方々も同じはずだと信じたい。ちなみに私は今、心躍っている(笑)。
スタートの風景が風景だったからねぇ。期待も高まろうというもので、正直に言うとここまでは少し拍子抜けだったが、ここからは廃道の本領発揮といったところか。

キタキタっ!(笑)

既に道は草に覆われて、下草を踏みしめないと先へ進めないくらいになってきた。辛うじて見分けがつく道形が廃道らしい。ここから先の方は、上は木々の枝、路面は草に覆われ、道がどこにあるのかわからないような廃道になっているのかも。…いや、楽しみだ(笑)
今は鍋倉トンネルが穿つ源蔵山の隅っこを回り込むこの道は、過去はどんな人たちが通っていたのか。今ここから見える風景からはあまり想像できないが、現道時代の道幅は結構広かったのではないかと思う。

道の路肩には電力会社の電線と…それだけではなく通信回線も一緒に架設されてるだろうか。電力会社と通信会社の共同架設のようでもある。見ての通り森の中を通っているから定期的に伐採などもあるだろうし、その度にこの道は生き返るのかもしれない。

ここが往時の道の面影を一番よく留めているかなと言う気がする。右側の路肩に立つ電柱と(おそらくその下は鼠ヶ関川だ)、左の山側の路面の際と思われる場所までの間は、かなりの幅がある。その部分がおよそ道だっただろうから、道幅としてはかなり広かったんだろうな。左側の山側の路肩辺りを丹念に探してみるも、いつもの「山形県」の標柱は見つからなかった。

それにしてもいい風景だねぇ。目の前に見えている木の下のちょっと広くなった場所で小休止、コンロでお湯を沸かしてドリップしたコーヒーをのんびりと飲みたいような気分になる。

少し路面に近づいて撮影してみる。ここから見ると、廃道の部分だけ見事に空が開けているのがよくわかる。まさしく森の中を進む道、そんな印象の素晴らしい道だ。探索したこの日は「明日から10月」と言う日だったが、今日はなかなかに気温が高くて、ここまで急ぎ足だったわけでもないのに、じんわりと汗ばんでしまっている。久しぶりの探索で運動しているせいか、それともこの廃道に興奮しているせいか。…きっと両方だな。いやいや、クマが多い年の探索なので、緊張による冷や汗か?(苦笑)

源蔵山の麓を回り込みながら先へ進む旧道。おや?、路面の草がない。ここまでは結構下草が茂っていたが、ここからは綺麗に刈りこまれているようだ。最近、作業でも行われたのだろうか。道沿いにはまるで並木道のように杉の木が立ち並び、その雰囲気はさながら鉄道保安林のよう。もしかしてここは、鉄道線路跡を道路にしたのか?…いやいや、そんなことはないな。ここから一番近い鉄道線路は鼠ヶ関駅のJR羽越本線だが、ここから鼠ヶ関駅まで線路があったという記録はない。だが、この立ち並ぶ木々はたぶん保安林ではないかと思っている。
ただねぇ…保安林なら、それを指定する標識がどこかにあるはずなんだけど、見当たらなかったのよね。草に埋もれてしまったのだろうか。


ところで保安林(ほあんりん)とは、森林法によって定められた森林の一種。木材生産ではなく、水源の保持・土砂災害の防止・生活環境の向上などの森林が持つ公益的機能を重視し、機能を発揮することを一般の森林以上に期待された特別な森林である。この道の場合で考えると、防風林や防雪林、水源涵養林あたりだろうか。


ガードレールを代表とする路肩防護施設。もちろんこの路肩防護施設の中にはガードレールのほかにガードケーブルやデリニエータも含まれるが、それが何もない路肩。もちろん現道時代にはちゃんと設置されていたのだろうが、廃道となった今は潔いくらいに何もない。そのおかげでと言うべきか、切り拓かれたそのままの道の姿がはっきり見えて、なんとも言えない美しい風景を見せてくれている。

ここだけ見てるとまるで廃線跡
そろそろ、本来の姿を見せてくれてもいいんじゃないか?
廃道と対話しながら、新たなヤブへ入っていく

第3部
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