一般国道345号
鍋倉トンネル旧道
2023年9月30日 探索 2023年11月27日 公開
トンネル脇に旧道あり
2023年の夏は、とにかく暑い夏だった。
通常は春から初夏にかけてが探索のシーズンで、例年この時期に集中的に探索を行うのだが、この年は個人的な用事が立て続けに重なり、なかなか行けなかったのだ。このため、仕方ないが夏草が茂って探索がやりにくくなる夏に行おうかと思ったが、今度は暑すぎて行けない。そうこうするうちに時間は流れていき、季節は秋になっていた。
この事態は私にとっても、このWEBにとっても非常に悪い事態だ。いい加減に探索を始めないと、あっと言う間に冬が来て探索が出来なくなる。持っているネタもそう多くない、と言うか、ほとんど尽きかけていたこともあり、次の探索場所を探していた。だが、手垢が付いたところはなるべく避けたい、そんな気持ちもあってGoogleマップで次の探索場所を丹念に探していたところ、新潟県のお隣の山形県に気になる場所を見つけて、そこへ向かっていた際にたまたま見つけたのが、今回のレポートである(なお、この時に向かっていた場所のレポートも、来年(2024年)の春までにはレポートにする予定だ。また、その後ももう一度同じ地域の近い場所に行くことになるのだが、そのお話はまた後日)。
では、まずは場所を確認してみよう。
地図中、注釈を付記して今回の場所をわかりやすくしてみた。画面下端を流れているのが鼠ヶ関川で、その川沿いに進んでいるのが国道345号。この国道は、新潟県内は345号が海沿い、国道7号が山沿いを進み、新潟県の北端部の勝木(がつぎ)と言う集落で合流すると、一緒に海沿いを鼠ヶ関まで進んでいく。そして、そこから先は海沿いを7号、山沿いを345号が走り、山形県鶴岡市の市街地でまた合流するという、お互いを補完するような国道なのだ。
特にこの国道345号は山形県内に入ると極端に道幅が狭くなり、この鍋倉トンネルからしばらく進んだ先は車1台が通るのがやっとと言う場所もあったりして、なかなか楽しませてくれる道でもある。ちなみにレポートになっている日本国トンネル旧道が所属する新潟県主要地方道52号山北関川線も、この345号の関川と言う集落が終点になっている。この主要地方道52号と国道345号の位置関係を知っていただくためにも、その時の地図も掲載しておこう。
これで、おおよそ位置関係はおわかりいただけたかと思うが、中央に走る県境の山々の上側(山形県側)を国道345号、下側(新潟県側)を走るのが主要地方道52号で、52号が雷峠を越えて山形県側に入り、合流するという線形になっている。
余談だが、主要地方道52号が県境を越える「雷峠(いかづちとうげ)」や、雷峠を山形県側に下りた先にある関川の集落は幕末の戊辰戦争の際に激戦地となった場所で、鶴岡市教育委員会から鶴岡市指定史跡に指定され、現在に語り継がれている集落でもある。
(作者注…この戊辰戦争の時の雷峠は現在の雷峠の位置ではなく、数百メートルほど鼠ヶ関側に移動した尾根沿いだったと言われている。このため、現在の雷峠は「新雷峠(しんいかづちとうげ)」と呼ぶ場合もあるようだ)。
さて、私が鶴岡市に向けて国道345号を走っていた時だった。鼠ヶ関から国道7号と別れてしばらく、途中2車線になる部分もあったりして快走路が続く。上の地図を見て頂けるとわかるが、鼠ヶ関から分かれて主要地方道52号が合流する関川集落までの間に、トンネルは2カ所しかない。その一つがこの鍋倉トンネルで、もう一つが小名部トンネルだ。その国道345号を、いつものように(道の脇に注意しながら)車を走らせていると、右側にこんな素敵な光景が見えた。
なんて素敵な光景!(笑)
泣かせる。道幅のほぼ半分を占めているであろう「この先 通り抜け出来ません 山形県」の文字。しかも「通り抜け出来ません」の部分だけが赤字になっている。実に素敵ではないか。「通り抜け出来ません」なら、途中までは行けるんだな。じゃ行けるところまで行ってみよう!と言うのが人情と言うものだ。(←違)
それに、こんな光景を見せられては駆け出しとは言えども「オブローダー」の名が廃る。ぜひ、このトンネルが開通する前の、この道の姿を見てみたい。そこに何があるのか、どんな風景が見えたのか、記録に残しておきたい。今日探索するはずの旧道からは遥かに手前の、予定にも入っていなかった場所だが、これは探索しないといけないだろう。少し離れた路肩に車を停め、そこをベースとしてヘルメット、長靴、ロープ、手袋、クマ鈴、カメラなどの支度を整え、分岐点に向かう。
改めて、もう一度トンネルも含めて分岐点を見てみる。相変わらずだが、右側の隅に見えている、草に半分隠れた「通り抜け出来ません」の看板を、我ながらよく見つけたものだ。自分で自分を褒めてあげたい(笑)。
それにしても、この探索はあの後山隧道以来の探索になる。およそ半年近くのブランクがあり、勘も鈍っているかもしれないから気をつけなくてはいけない。気を引き締めて、もう一度探索時のセオリーを思い返しながらヘルメットのアゴヒモを締める。今年はクマの出没が例年より遥かに多いと聞く。クマ避けと自分への合図に、100円ショップで売っているピストル型の空砲を一発鳴らす。パン!と言う音が辺りに響いたところで…
探索開始!