一般国道291号
東山トンネル旧道

第3部(完結編)

2021年8月28日 探索 2021年10月28日 公開

前回、朝日川の流れを眺めながら一杯呑みたくなった私は、気を取り直して先へ進む。崖に囲まれた区間を過ぎると、旧道の終点はすぐ目の前なのだが、その前の左の山側に露出した岩肌を見つける。斜面との連続性を考えると道路の部分だけ岩盤が削り取られたようだが、それにしても大きな岩塊だなぁとしばらく眺めてしまった。

旧道の出口側はこのようにロックシェッドの補修工事中だ。東山トンネルの坑口上部も補修対象に入っているのか、画像の左端には山の斜面を登るための簡易的な階段が設置されていた。
旧道は、ここから現道の道筋に戻っていて、旧道の長さとしてはさほどでもない。今回の探索は徒歩だったが、全部の時間を合わせても15分ほどだろうか。のんびりと散歩するような感じで歩くのがぴったりの旧道だ。旧道の探索としてはここで終わるが、その前に何気なく左の朝日川の方を見てみると…

緑に囲まれて静かに流れる朝日川の流れがそこにあった。探索したのは9月も間近な時季なので、言わば「夏真っ盛り」なのだが、こうして画像を見ているととても涼し気で、マイナスイオンがそこら中に溢れているような気がする。しばらく川面を眺めていると、泳いでいる魚が見えた。なんの魚か種類までは判別できなかったが、それだけ透明度が高い水が流れていると言うことで、この水で米を作ったら、そりゃ美味しいだろうなと言う気がした。

おや?、あの平坦な大地はなんだ?。どう見ても、自然な地形ではなく人口的な地形だと思う。眺めれば眺めるほど何故かはわからないが、この場所に行ってみたい、そう思った。手元の地図で位置関係を確認すると、朝日川の対岸のこの位置まで距離的にはさほど離れていなさそうだが、ベースとしている車まで戻って移動する必要がありそうだ。まずはベース地点まで戻ろう。

東山トンネルを通ってベース地点まで戻る途中に撮影した。東山トンネルの中は、照明は設置されているものの、そのほとんどが消灯していて、真っ暗になトンネルだ。だけど、そのトンネルの先に見える出口の光が、今の混沌とした世間に照らす一条の光のような気がして、なんだか感慨深い。

ベース位置まで戻って、目的の場所まで導いてくれるであろう道を進んでみる。ベースとなっている車の位置は変わらず、徒歩で探索している。本来の旧道とは外れるが、こんな探索があってもいいかなと言うことで、テクテクと先に進んでいく。道の周囲には田圃とか畑はなく、ただただ野原の真ん中のあぜ道を進んでいくという感覚だが、それにしては舗装されていたりして、どことなく不思議だ。

途中に分岐点が一カ所あって、それを左に向かうとこの場所に出る。
道の舗装はアスファルトからコンクリートに変わり、ひび割れたコンクリートの隙間から草が生えているという、なんとも雰囲気満点の道になっている。でも、道の周りは何もなく、ただ進んでいるという感じの道。この先に何があると言うのか…

おおっ!これか!

何もない道の先にあったのは、石造りの鳥居と灯篭がある神社だった!。道の脇には土留めの石積みが施してあって、この道と、その先にある神社を守ろうとする地元の方々の気持ちがひしひしと感じられる。きっと、この周りの森は鎮守の森なのだろう。神聖な雰囲気がすごく伝わってくる。どんな神社なのか、行ってみよう。なんだか気持ちがビシッと引き締まる気がする。

白い鳥居に灯篭、その奥には狛犬があり、本殿へ向かう階段が見える。
地元の方々が大切にされている神社に私のような言わば「余所者」が訪れていいのかと言う気がしたが、まったく知らない土地でここに導かれたと言うことは、ある意味で呼ばれたのかなと思って鳥居をくぐる。その鳥居には注連縄(しめなわ)が施されていて、くぐった後の空気はどことなく冷たくて引き締まる気がした。さっき対岸から見た平地は左の脇から向かうと到達できるようだが、ここまで来た今ではまず神社の方が先だろうと言う気になっている。本殿へ向かってみよう。

階段を上がり切ったところにコンクリート製の本殿があった。その構造はひどく頑丈でちょっとやそっとの雪にはビクともしないという気がする。雪深いこの地域ならではの構造なのか。この画像に見える通り、本殿の左側には奉納の銘板がはめ込まれていて、昭和61年4月に兵庫県尼崎市西長洲東通に在住の方が奉納されている。ここは新潟県小千谷市朝日。奉納された方は地元出身の方だろうか。お名前から察するに御高齢の方と拝察したが、遠く離れても故郷を想うその気持ちに胸が熱くなった。


この旧道で一番印象的だったのは、やはり途中にあった「茶屋」らしき建物の跡だろうか。
果たして、この建造物が茶屋だったのかどうかはわからないが、構造を見てみると車庫のようには思えないし、倉庫には間口が大きすぎるような気がする。建物の裏が渓谷と言うことを考えると、おそらく茶屋が正解だろう。

どんな人たちがこの旧道を通り、この茶屋で休んだのか。
今となっては知る由もないが、実際に目にした風景を肴に、
今日はこの旧道の過去に想いを馳せながら、盃を傾けることにしよう。

一般国道291号
東山トンネル旧道

完結。