一般国道113号旧道
川口橋 第2部

2021年3月4日 探索 2021年4月3日 公開

旧道の川口橋



いよいよ、目的の川口橋に到着した。上流側が右で、下流側が左になる。この川は大石川と言うが、この川の上流には1967年の羽越水害を契機に「洪水調節」と「発電」を目的とした多目的ダムとして建設された大石ダムがあり、現在も稼働中だ。
ところで、今回の探索は実はこの橋だけが目的ではない。この先に続いている旧道の道筋も目的の一つだったりするが、今は目の前の橋を味わっていこう(笑)。
撮影するアングルを低めに取って撮影してみる。ほとんどないに等しい歩道(路側帯らしき白線はあるが、欄干ギリギリで用をなしていない)、立派な親柱に低い欄干、橋名を刻んだ銘板も親柱に負けずと立派なものだ。まずはこの銘板を見てみようと言うことで、上流側の親柱の銘板を見たのがチェンジ後の画像だ。立派な太めの字体で「川口橋」。はしご橋(橋の字の左半分上部がはしご様になっている)ではなく、今の「橋」の字体だ。では、下流側を見てみよう。

おおっ!二級国道!

興奮して、思わず叫んでしまった。ハッと我に返り、おもむろに辺りを見回したのは言うまでもない。幸い、誰もいなかったので一安心(笑)。
旧道を巡っていると、この「二級国道」と言う名称を橋などに見かけることがある(実はトンネルでも一回だけ見た。新潟県村上市の国道7号旧道岬隧道だ)。今は橋の架け替えなどが進み、現役の橋ではこの「二級国道」と言う名称はほとんど見られないように思うので、旧道ならではと言っていいかもしれない。

下流側から川口橋を眺めてみた。こうしてみると何の変哲もない普通のI型鋼の桁橋だ。それに、コンクリート製の高欄を組み合わせているだけのように見える。でも、なんだか向こう側の桁が何か変なように見えるのは気のせいか。橋を支える橋脚も至って現代的な頑丈な構造の橋脚で、これだけ見ていると何の変哲もない普通の橋なのだが…。
今度は上流側から、旧旧道が大石川を渡っていたであろう場所を見てみよう。

この風景は川口橋から上流方向を見たものだ。御覧の通り、旧旧道が大石川を渡っていた旧川口橋の面影は全くなく、おそらくは川口橋に架け替えられた時に撤去されたものだろうと思う。ただ、道形から旧旧道の面影はあるので、橋があったであろうと思われる場所を調べてみたい。今はこの旧道の探索と調査に集中しよう。…地図を手配しないとな。ここで、改めて下流側にある川口橋を見てみると…

おや?

おわかりだろうか。向こう側から2番目のスパンまでの橋桁が、それまでのI型鋼の橋桁と違って、コンクリート製の橋桁に換装されているじゃないか!。これは何故なんだろう。この道(旧道・廃道探索)に入ってから、こういった小さなことが気になるようになってしまった。いいんだか悪いんだか…(笑)。そうだ!鋼製桁なら橋の袂に銘板が取り付けられているはず!。そう思って見てみると…



1959年12月 新潟県建造!

1959年と言えば、昭和39年。この橋、優に60年を過ぎて63歳になろうとしていた!。なかなか年季が入った橋だったのだ。鋼製桁に銘板が入っていると言うことは、コンクリート製の桁の方が後世に架け替えれたものだと思われる。もしかすると羽越豪雨の際に二つの桁だけが損傷を受け、架け替えられたのかもしれない。


羽越豪雨(うえつごうう)とは、1967年(昭和42年)8月26日から8月29日にかけて発生した集中豪雨である。羽越水害とも呼ばれる。「羽越」という名称が付けられた通り、主に山形県と新潟県下越地方を中心に被害が発生。死者104名を出す大きな被害をもたらし、激甚災害に指定されたが、気象庁では「顕著な災害」として扱っていない。この災害を契機に荒川、胎内川、最上川などの治水計画が見直されるきっかけとなった。そして、この災害で大きな被害を受けた国道113号が、直轄区間に指定されることになる。



対岸に渡って、まずは親柱を見てみた。上流側の親柱には、この橋の名称の読み方がひらがなで「かわぐちばし」を立派で重厚な字体で刻んである。チェンジ後の画像は下流側の親柱を撮影したものだ。そこには「昭和35年5月竣功」とある。鋼鉄製の橋桁に取り付けられていた銘板の日付は1959年12月建造。昭和35年と言えば西暦で言うと1960年なので、橋桁を12月に造ったあと、その橋桁を使って翌年5月までに川口橋が架橋されたと考えられる。なるほど時系列的には合うが、念のため図書館に行って記録や文献を調べてみようと思う。

さて、川口橋を抜けると、そのあとは一直線に山に挑むかのような道筋を取る旧道。今は新川口橋と新道で一気に越えてしまう峠も、昔は峠を降りてきた人、これから超える人、そのいずれもがここを通ってすぐ先の雲母温泉で疲れをいやし、また峠を越える英気を養ったことだろう。そう思うと非常に感慨深い。

この探索で第1の目的だった川口橋を越え(問題や疑問は山積みだが、それはひとまず置いといて)、第2の目的だった旧道の道筋へ向かう。どんな道なのか、どんな顔を見せてくれるのか、楽しみに想いを馳せながら進んでいく。

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