一般国道113号
朝篠トンネル旧道

2020年5月2日 探索・2020年11月10日 公開

朝篠トンネル。
「それどこ?」と言いたくなると思う人が、ほとんどなのではないかと思う。
このトンネルは山形県西置賜郡小国町の、もうすっかりおなじみになってしまった一般国道113号の小国町松岡と小国町大石の間にあるトンネルだ。この区間は綱取橋方向から流れてきた横川が蛇行しており、このトンネルはそこをまっすぐに抜けているために、前後で横川を跨いでいる。
ちなみに「朝篠」という名前は、トンネルが存在する地名が「朝篠」と言うことから付けられたものだと思う。読み方は「あさしの」だ。
ゴールデンウイーク前、どこかネタはないかと地理院地図やGoogleマップを眺めていた私に、この朝篠トンネルの旧道と思しき道が目に留まった。地図をじっくり眺めてみると、どうも旧道の匂いが強そうだ。
ここでその地図を見てみよう。おなじみ国土地理院の「電子地形図」である。

国土地理院の電子地形図(タイル)に注釈を追記して掲載

この地図上、左側が小国町の中心地である小国小坂町方向になる。この地図のように、現道の113号は小国小坂町方向から真っ直ぐ直進してきて、何も臆することも躊躇いもなく朝篠トンネルで山をぶち抜き、大石集落側で現道と合流している。これより先に進むと、あの片洞門や木附橋の場所へたどり着く。これに対し、米坂線はなぜかここをトンネルで抜かず、横川沿いに進んで朝篠の集落を通り過ぎ(もしかして本当は駅でも作るつもりだったんじゃないかと疑いたくもなるが)、S字に屈曲している横川を二つの橋で越え、不動沢橋の先で旧道の踏切を越えて現道と合流する。
また、地図をよく見てみると、不動沢橋の先で旧道と米坂線が接近する場所がある。また、大石から水沢の集落を超えると、この旧道は横川ともう一本の細い川(おそらくは用水路の類だと思われるが)に挟まれて、非常に細いところを通っているように見える。
道の脇に水路が流れている道は、ここでは新潟県新発田市の赤谷発電所・常盤用水のレポートが思い浮かぶが、あそこは道の脇に流れていただけで川に挟まれてはいなかった。
それに対し、ここは横川と水路にしっかり挟まれているし、何より国道113号の旧道である。
この区間が実際にどうなっているのか。これがこの区間を探索することを決めた理由の一つだった。

と言うわけで、2020年5月2日。時間は15時を少し回ったころだろうか。
初夏の陽気に、もともと暑がりな私はすっかり汗だくである。そんな中、私は山形県西置賜郡小国町の大石集落側の分岐点にいた。画像が逆光で申し訳ないが、この日は日差しが強くて、こうした場所は明暗の差が激しくなってしまい、こんな写り方をしてしまう。これを防ぐにはBKT(ブラケット)撮影をすればいいのだが、どうも面倒でそのまま撮影した。
ここから左に見える橋に向かって進む道が現道で、右に真っ直ぐ進んでいる道が旧道。なるほど、ここから線形だけを見ると、旧道の方が実に自然な道形で進んでいる。旧道分岐のお手本のような分岐点だ。
今回の探索は意外と距離が長いので、車にしようかとも思ったが、ご覧の通り天候も良いし、地図だけ見ると途中で通れなくなりそうなところも特になさそうだし、ヤブ漕ぎもしなくてよさそうだし(笑)。
この画像の中に見える左側の駐車帯に探索のベースとして車を停め、自転車での探索とした。


ここも、おそらくは三島通庸(みしまみちつね)が拓いた道。横川沿いに進む道は、多くの人が行き交った道なのではないかと思うと、その歴史の重さに身が引き締まる気分だ。今は開通当時の面影は見られないかもしれないが、それでも遥か昔を思い出しながら、想像しながら進んでいきたい。

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