一般国道112号 旧道
名川橋

2025年6月7日 探索 2025年8月11日 公開

(1)昭和6年のトラス橋

今回も、山形県の国道112号の橋をお送りしたい。
この橋は鶴岡市から国道112号を月山方向に走って行くと、右側に否が応でも目に入るので、見たことがある方は多いと思う。水色の、実に美しいトラス橋。一見すると、そんなに旧い橋に見えないのだが、実はそうでもなかった。その橋はどこにいるのか。おなじみの地理院地図を見てみよう!

国土地理院の電子地形図(タイル)を掲載

地図中央に赤い道が見える。この赤い道は国道112号で、下が月山方向、上が鶴岡市街地方向。この中央に「新名川橋」という橋が見えるが、その左脇にしれっと無名の橋の記号が見える。これが今回の主人公、「名川橋」だ。ここをご覧になっている皆様はすぐにお分かりと思う。この橋は旧道だ。しかも隣に架かる「新名川橋」の旧橋で、間違いないだろう。早速、現地に行ってみよう!。

というわけで、現地。あっ!いかん!涎が…(笑)
この橋、今は路面の幅が狭くなっているが、これは後世に架け替えられたものだろう。本来はトラスの幅だけ路面があったと思われるので、現役時代は離合がギリギリできるくらいかな?の道幅だったんではないかと思われる。もちろん歩行者も通行していたわけで…なかなかのスリルだったことは想像に難しくない。ただ、ここから見てもわかる通り、この橋には当時の親柱がしっかり残っているようだ。これは非常に助かるし、ありがたい。では早速、じっくりとこの橋を眺めてみよう。

では、じっくり眺めてみよう。いったん橋を渡り、反対側から探索(というかジロジロと確認しまくるだけなのだが)を始める。実はこのすぐ近くに車を突っ込んでいるからで、こっちから始めることに深い意味はない。でも、なかなかの雰囲気でしょう?右側には立派な親柱。この親柱の位置が、もともとの道幅だったと思われる。右側の親柱を確認してみよう。左側は…おや?、草に隠れてはいるものの、ちゃんと残っているようだ。これは素晴らしい!。

右側の親柱。おおっ、1931年(昭和6年)6月竣功!。これはなかなかに旧い橋だぞ?!。ちょっと待てよ…この近くに架かる県道349号の尾浦橋が、確か1928年(昭和3年)12月。…でも、待てよ。この親柱の橋は元々は桁橋で、トラス橋は後年に架け替えられたのかもしれない。ということは…橋の建造銘板があれば、その橋の建造年月がわかる。どっかにないかなぁ…と探していると…!

あった!。うおおっ!「東京 株式會社櫻田機械製造所 昭和五年製作」とあるじゃないか。ということは、この橋は昭和6年竣功で間違いなさそうだ。最初は桁橋ということではなく、初めっからこのトラス橋が架かっていたのか!。今から94年前(2025年現在)のトラス橋が現役とは素晴らしい。シビれるっ!(笑)。

トラスの間から渡っている川を覗き込んでみる。この川が渡っているのは「大鳥川」。そう、あの大鳥隧道笹根隧道荒沢隧道の間際を流れていて、尾浦橋旧橋が渡っていて大針洞門の脇を流れていた、あの川だ。またまたこの大鳥川に縁することになるとは…なんだか奇妙な縁を感じてしまう。でも、いつ見てもなんとなく親近感を覚えてしまうこの川、今回あった時も変わらず滔々と流れていた。

橋を渡り終えて左側を見ると、親柱が見える。その先、国道112号の現道の道筋が見える。こうして橋から道路を見てみると、現道の道筋よりも実に自然に大鳥川に向かっているのがわかる。親柱は銘板が組み込まれている面以外にも、同じように彫り込まれていて、こんなところにもちゃんと意匠があるところが素晴らしい。今だったら…銘板が組み込まれていない面は、真っ平になってしまうだろうな。

今度は橋を戻りながら、その周辺の景色を楽しむことにしよう!

(2)景色に溶け込む橋

と言うことで、今回は初めての新しい試みを行ったレポートでもある。
試みと言っても、そんなに目新しいものではないのだが、一つのレポートの中で二つのURLを持たせようというものだ。これはアンカーと言う手法だが、このため前回の終わりが多少中途半端な終わり方になってしまった。これは今後の課題だろう。と言うことで、今回は前回の続きから始まる。

後ろ向きだった親柱を覗き込むと、そこにも銘板がはめ込まれている。そこには、私にとって馴染みのある「大鳥川」の文字が刻み込まれていた。大鳥川と言えば、大鳥隧道を始めとする三姉妹隧道や、尾浦橋(この橋はまもなく撤去されるという情報をフォロワーさんからいただきました。Yume**🏹さん、情報ありがとうございました!m(__)m)が懐かしい。…あっ!この机上調査編を書かないと…。

それはさておき、この橋も大鳥川を越えていたと言うことで、なぜか親近感を覚えてしまう。

ちょいとアングルを変えて撮影。現道の名川橋が出来て旧道化したこの橋は、今でも立派なその姿を残して歩道橋となっている。本来、橋は私の専門外ではあるんだけど、この橋はじっくり眺めてみて、久しぶりに「美しい」と思った橋でもある(ちなみに、この橋の前に美しいと思った橋は国道7号の旧橋「名月橋」である)。古い橋に新しい歩道橋。ミスマッチのような気もするが、橋がなくなるよりはずっといい。

こちらにもありました、この橋の銘板。昭和5年製造の銘板が取り付けられている。この銘板、先に紹介したように両岸に取り付けられているので、まず間違いないだろう。何度も改修を受けながら、修理を受けながらここまでやってきたこの橋。94年間もの長き間ここにいて、この橋は何を眺めてきたのだろうか。いろいろ悲喜交々見つめてきたんだろうなぁ…。ある意味、私たちよりもここの国道112号や大鳥川のことを知っているのかもしれないな。

元は国道112号の橋だった名川橋。ここから見ると、右側は森の中に接続しているように見えたりするが、大丈夫。ちゃんと歩道が接続している。この画像は現道の名川橋から撮影しているが…やっぱり綺麗だなぁ、この橋。下調べも何もなく、見つけてすぐに探索をかけたが、出会えてよかった。実に素敵なトラス橋だ。

山形県一般県道349号の大針洞門から始まって、大鳥隧道などの隧道探索に繋がっていった大鳥川周辺の探索。残るはあと一つのレポートだけになったが、まだまだ山形県も探索したいと思う。何よりび驚いたのは、山形県庄内地方初の探索だった大針洞門の探索が、2023年9月30日と言うのが驚いた。今から(2025年)2年前じゃないか!。月日が経つのは早いなぁ…!。次の庄内地方の探索でも、この橋は見かけるはず。

その時まで、元気で。また会おう。

一般国道112号 旧道
名川橋

完結。