新潟県主要地方道6号
山北朝日線 旧巻澤橋

2021年9月25日 探索 2022年3月25日 公開

新潟県主要地方道6号、山北(さんぽく)朝日線。
その全長は10.3kmと短く、そのすべてが新潟県村上市内で完結してしまうが、実はこの道は村上市の海側を走る寒川地区の国道345号と、同じ村上市の山側を走る蒲萄地区の国道7号とを結ぶ、非常に重要な道路でもある。まずは地図を見て頂こう。もうすっかりおなじみの、地理院地図である。

国土地理院の電子地形図(タイル)を掲載

この地図は国道345号と国道7号の関係性を示したもので、赤で彩られた線は国道を表している。右の山側を走る赤い道が国道7号、海沿いを走っている左側の赤い道が国道345号だ。

起点の新潟市中央区本町の本町交差点を国道113号と共に出発した国道345号は、そのまま113号と重複しながら新潟県胎内市の桃崎浜交差点まで進路を共にする。桃崎浜交差点で113号は345号と別れて乙(きのと)バイパスに入り、国道7号の十文字交差点を経て荒川沿いを通って山形県西置賜郡小国町へ向かうが、345号は直進して村上市の市街地の片隅をかすめると海沿いに出て、景勝地の笹川流れ(ささがわながれ)を経由しながら、村上市北部の集落である勝木(がつぎ)を目指す経路を取る。

この間、国道7号は新発田市や胎内市などの中心部を通り、村上市の市街地をすぎると旧朝日村の行政区域に入り、板屋越(いたやごし)や塩野町(しおのまち)、大須戸(おおすど)、蒲萄(ぶどう)などの集落を通りながら山側を進み、勝木で345号と合流する。この間、旧・村上市街地以北で345号と7号を連絡する県道は、この主要地方道6号しかなく、と言うことはすなわち海側の集落と山側の集落を結ぶ道も、この道しかないと言うことになる。これが重要な道路と言った理由だ。

だから、海側から山側に出ようとしたときに仮にこの6号がないとすると、勝木経由で迂回するか村上市経由で迂回することになり、かなりの大回りを強いられることになるのだ。実はもう一本、345号が海沿いに出る前に三面川を渡る瀬波橋から右に入って三面川沿いに進み、7号が三面川を渡る水明橋(すいめいばし)のたもとの宮ノ下地区に出る一般県道583号村上朝日線があるにはあるが、この道は幅員が狭く、その狭い道が途中の集落の中心を通ったりしていることもあり、険道と言った方がいいかもしれない。
この新潟県一般県道583号については後の機会に譲るとして、今は6号の話を進めよう。

国土地理院の電子地形図(タイル)を掲載

これは今回の探索場所を表した地図だ。画像中央に「114」の標高点があって、その近くに橋の記号が見えるが、これが現在の巻沢橋だ。この旧橋が今回の探索対象なのだが、ご覧の通り地図上からは抹消されているし、この旧橋に繋がる道路も抹消されているので、これはいわゆる「道路の供用廃止」を行ったことがわかる。

道路の路線や、道路の一部を道路法の道路でなくするときには、その状況に応じて路線の廃止や道路の区域の変更、供用の廃止が行われる。これは道路を一般交通の用に供しなくする廃道の場合や、新道が建設されて旧道が国道から県道や市道になったりする管理移管の際にも行われる。また、路線の一部を変更したり廃止するときには、変更したり廃止される道路の区域が明確でないため、供用廃止の公示を行う必要がある。


旧巻澤橋は、もちろんこの現道の巻沢橋が跨いでいる「巻沢」を跨いでいるのだが、現道からはその姿をほとんど確認することが出来ない。かろうじて、現道の巻沢橋の上から上流側を眺めていると、旧橋の欄干らしきものが確認できるくらいだ。
今回、私は日本国トンネル旧道の探索を終えた帰りに、常日頃から気になっていたこの県道に立ち寄り、たまたま左側に車を停める場所があったので、車を停めて巻沢を眺めていたところ、木々の隙間に欄干を発見した、というわけだ。当然ながら予備知識もなく、それは全くの偶然だった。

この画像は、私が車を停めた場所から現道を眺めたものだ。ここに植えられている手入れされたような森の姿が気になって、思わず車を停めて撮影したというわけだ。左側の前方には現道の巻沢橋が写り込んでいて、私はこの後巻沢橋に向かい、辺りを眺めていて森の中に欄干のような構造物を見つけることになる。

幸い、日本国トンネル旧道の探索の帰りであったことから、探索に必要な装備品はもちろん全て揃っている。こうなると、探索をしない理由が見つからない。私は急いで車に戻って、見つけたその構造物へのアプローチを考えながら身支度を整えると、突然ひらめいた。
もしかして、目の前にあるこの林の脇にある未舗装の、一見すると作業道にしか見えない道。これは6号の旧道なのではないか。それに道の進む先の方角も、森の中に見えた構造物の方向へ進んでいるようにも見える。こうなると、もう迷うこともないと思えた。

よし、行こう。

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