新潟県一般県道339号
小栗山川口線
荒谷トンネル旧道 第2部
2021年9月11日 探索 2021年11月9日 公開
爽やかな涼しい風が私の身体を冷ましてくれている中、のんびりと周りの景色を楽しみながら上がっていくと、やがて左下に現道の荒谷トンネルが見えてくる。こうして見ると、今通っている旧道の道幅は狭く、通行するにもすれ違いなどが大変だっただろう。おまけにこの付近は新潟県でも有数の豪雪地帯。近年は小雪傾向とは言え、荒谷トンネルが開通した1977年(昭和52年)当時は積雪が数メートルにも及んでいたはずで、トンネル開通以前のこの旧道は冬季通行止めになっていただろうから、交通を確保するためにも荒谷トンネルが必要だったことがよくわかる。
ところで、トンネル坑口の左脇から上がっていく未舗装路の先に小さな溜池がある。このトンネルと溜池の位置関係が箱庭みたいで妙に好きだ(笑)。
しばらく箱庭のような景色を眺めていたが、それに別れを告げて旧道の探索に戻る。緩やかな上り坂と左カーブで峠へ向かっているようだが、左の路肩から下の斜面の地肌が妙に綺麗な感じで、少し気になった。ここだけ新たに修復したような、そんな感じさえ受ける。もしかして、ここは中越地震の際に滑ってしまったのかも(想像の域を出ないけど)。もしそうなら、これだけ修復しているわけだから、その技術は見事と言うほかなく、頭が下がる。
道の前方が緩やかに左にカーブしていて、その先がトンネル(あえてこう書く)のように暗くなっている。緩やかな坂道で空も近く明るくなり、道筋を示すように木々が立ち並んでいるところを見ると、もうすぐ峠が近いのかも、と期待感が増してくる。
それにしても、やはり妙に路面がきれいだ。山側となる路面の右端には側溝があり、特段詰まっているようなところも見られない。この旧道は何かの理由でちゃんと管理されているようだ。
来るぞ、峠!
左側に少し見えている退避所を見てもわかるように、道幅は普通車が1台通るかと言ったところだ。道から見える空の高さはますます低くなり、もうすぐ峠が近いことを教えてくれている。古くから(たぶん)多くの人たちが行き来したであろうこの峠、ここに来ても路面は綺麗なままで、今でもちゃんと通行できるように人の手が入って維持されていることに、嬉しくなった。
峠だ!
この景色を見た瞬間、「おぉ~!」と声を上げてしまった。地図上に名前もない峠だが、なんと堂々としている峠だろうか!。このように切り通しで貫かれた峠はいろいろ見てきてるけど、やはりそのどれもが、いつ見ても素晴らしい。これまであった路面右端の側溝は、そのままこの峠まで続いていて、相変わらず詰まっている様子はない。ここまで峠道の沿線に田圃や畑などはなく、この旧道がこんなに管理されている理由が今一つわからないが、ちゃんと維持されているというのは嬉しいもの。
峠に来ると、道がやや荒れてきた。見事な切り通しで抜けている峠道の側溝は枯葉で埋まり、路面は一部が苔むしてしまっているし、道幅も極端に狭くなって旧道の雰囲気満載。それを見て「やはり旧道はこうでなくちゃ」と、何となく落ち着く自分がそこにいた。思わずここで休憩したくなってしまったことは言うまでもない(笑)。
でも、こういった風景を見るために旧道や廃道を辿っていると言っても過言ではなく、街中では絶対に見ることが出来ない景色であり、日本ならではの景色だと思うのは言い過ぎだろうか。
峠を抜けると、道は左カーブで降りていく。直進の未舗装の道は、その先に見える電柱を維持するための作業道だろうか。この作業道が旧道だったら、もっと楽しいだろうなと一瞬思ったことはナイショだ(笑)。ところで、この峠道は最後まで切り通して越えていたようで、左カーブに入る直前まで地山を削って、道を通していたことがよくわかる。改めてしみじみ思うが、よく通したもんだ、こんなとこ。
峠を越えて進む際に離れるのがあまりに名残惜しく、再度振り返って撮影したのがこの画像だ。
相変わらず右も左も見事な切り通しの斜面に、空にそびえるように立っている木々、峠ならではの空への近さに包まれた素晴らしい峠だ。ここを探索して良かったと、心からそう思った。ここから見ても実に美しい峠だ。
ここからは下り。この旧道、全長がそんなに長くないので、峠を越えてしまえばさほど距離もなく現道に合流するはずだが、そこは油断禁物。旧道と戯れながら、峠を下っていく。