一般国道49号 旧道
音無川右岸道
第5部(完結編)

2019年3月10日 探索・2019年4月14日公開

前回は音無川の堰に到達したところまでお話した。
ここからは、ゴールまでをお送りしたいと思う。

音無川の堰から先へ進んでいくと、左側にポツンと立っている白い棒を見つけた。
これは…標識柱だろうか。だとすれば「やった!」である。あの標識柱の足元辺りに、朽ちた標識があるかもしれない!。私は思わず駆け寄った。すると…

おっ!「警笛鳴らせ」ではないか!。しかも、上半分がない。
この「警笛鳴らせ」の標識、警笛自体が騒音になるということで徐々に少なくなっていった標識で、今では山間部の旧道くらいしか見かけることの出来ない貴重な標識である。
この標識は、これの他につく補助標識で意味が変わった標識で、この標識単体だと「警笛鳴らせ」、この標識の下に補助標識で左右の矢印が付くと「警笛区間」と言う意味になるのだった。今となっては懐かしい。

そこから視点を横にずらすと、山肌に何か黒いものが見えた。おや?何だろう?と思って見てみると…
不法投棄されたタイヤだった。廃道や旧道を歩いているとこうした不法投棄を目にすることがよくあるが、自然を破壊している風景は見たくない。やはりリサイクル出来るものはリサイクルしないといけないと思う。

見よ、この美しい造形を!。これは人工で作り出すことが出来ない、微妙なバランスの上で成り立っている造形だろうと思う。バランスが悪ければとうの昔に崩れているだろうから。きっとここは川の流れが山を削っていったんだろうなと言う気がする。
それはきっと十年単位ではなく、数百年単位なのだろうな。

この旧道のそばをずっと寄り添うように流れている音無川。その音無と言う名前とは裏腹に、山からあふれ出てくる岩清水の、山の栄養分たっぷりの雪解けの水を集めて阿賀野川に注ぐ川。イワナやヤマメ、いるかなぁ…

森のようになっていた区間を抜けると、急に辺りが開けて景色が明るくなる。先に民家のような建物が見える。脇を流れる音無川も、ここにきて護岸が人工的なものになっていたり、変化が見えてきた。もうすぐ花立集落だろうか。だとすると、この音無川右岸道旧道も終わりを迎える。

先へ進むと分岐点に出た。左へ行くとすぐに現道の49号に合流、右に行くと花立集落の市街地に入る。旧道はおそらくここから右へ向かって花立集落の中を通っていたはずだが、今回はここまで。
だが、ここで何の未練もなく現道に合流するにはあまりにも味気ないので、花立集落へ向かう道を眺めてみよう。

右側に見える森の奥に花立集落がある。やはり旧道は音無川の川岸を忠実に進み、花立集落の街中を通っていたようだ。現道はそれより一段高い山沿いを進んでおり、今では太平洋側と日本海側を繋ぐ大動脈として機能している。

振り返って撮影した一般国道49号音無川右岸道。音無川に沿って進む、実に雰囲気のある旧道である。三郷側にあった馬頭観音塔が物語るように、ここはきっと旧街道で馬車や牛車が行き交っていたと思うが、大動脈としてはいかんせん道幅が狭く、それで一段高いところに現道を開削したのだろう。

三島通庸が拓いたこの道は、今でこそ国道としては外れているものの、現役で使われている道としてちゃんと残っているのは非常に喜ばしいことだ。
これからも往時の姿を思いこさせてくれつつ、長く活躍することを心から願う。

一般国道49号旧道
音無川右岸道

完結。