新潟県主要地方道55号
新潟五泉間瀬線旧道
間瀬隧道 後編
2018年11月3日 探索・2018年11月10日 公開
後編は戻り編である。だからと言って周囲の景色にさほど変わりがあるわけではないが、行きと帰りの風景は見る角度が変わるから微妙に違うし、見る角度が違うことで何らかの新たな発見があるかも知れない。さぁ、行ってみよう!
と言うことで、帰り道である。森の中に一直線に進む旧道。こういった風景は、いつ見てもいいもんである。ここから見ると旧道と言えど結構な道幅で、往来の多い道だったことが想像できる。違う景色を求めて、隧道めがけて進んでみよう。ここだけ見ていれば、まだまだ立派な道のように見えるが…
…来たか(笑)
行きにこんな倒木なんてあったっけ…あったな。数十分でそう変わるわけではないから(笑)
それに、行きよりも日が傾いていることで森の奥まで光が届いているせいか、明るく感じるのは気のせいか。しかし、倒木の真ん中が皮が剥げているように見えないだろうか?
実はこの文章を書きながら気づいたのだが…こりゃもしかしてプーさんだろうか?
一応、万が一の時に備えて対策はしているつもりなのだが、それでも会わないに越したことはない。
森の中をガサガサ進む。行きに一度通った道にしても、帰りにはやはりどことなく違うもので、そういう意味では新鮮なのだが、ヤブは少ないに限る。ヤブが濃いと進むのに困るし…ねぇ?。しかし、足元が比較的穏やかなヤブなのには救われる。これが濃かったりすると、探索しているのかヤブ漕ぎしに来たのかわからなくなる時があって、通った跡には一本の道が出来ていたりする。
おお、隧道が見えてきた!。藪の中に埋もれる隧道。いかにも廃道、廃隧道と言った感じで、シチュエーション的には最高じゃないか。左右の切通しの間に埋もれる隧道は、倒木と下草で隠されそうである。今はいいとしても、これから数年が経過すると倒木も増えるだろうし、ヤブも濃くなるだろう。間瀬方向からはともかく、岩室方向からの探索は難しくなるかも知れない。そう感じた。
やはり、行きに見せてくれた顔と違う顔を間瀬隧道は見せてくれた。日が傾いていることもあるだろう。光の入り方が全然違うし、緑に覆われた両側の擁壁も見え方が全然違う。間瀬側と同じ擁壁のようだが、坑口上部の胸壁の高さが違う気がする。石の積み方は同じはずなのだが、雰囲気は変わるものである。もっと近づいてみよう。
水の溜まり具合が確認頂けると思う。深さは長靴でも足首までなく、ほんとに水たまりを歩いているようなものである。それになぜか溜まっている水が澄んでいた。湧水なのか雨水なのかわからないが、この時は足を踏み入れるのに躊躇するような水ではなかった。しかし、最初に履いていたトレッキングシューズでは、靴が水袋になること請け合いである。では、岩室側の扁額を見てみよう。
うん、いいねぇ!
思わず大声でそう呟くほど扁額が非常に美しかった。間瀬側の扁額を撮影した時は、光のあたり具合で少し見えにくかったが、今回はよりはっきりと読み取れるように思う。改めて見ても立派な扁額である。また苔が付いている辺り、歴史を感じさせてくれて非常に良い。では、中に入ろう。
内部が出水で崩れてきている。廃止されてからおよそ40年近くメンテナンスを受けていない訳だから、こうなるのも当然だろう。今すぐ崩壊ということはなさそうだが、この隧道は隧道天井から天井の上にある地面までの土被りがやや浅いような気がするので、万が一この隧道が圧壊すると、地形が大きく変わりそうな気がする。
行きの時には気づかなかったが、あちこちで出水しているようだ。ここは上側を補修した跡が見える。この崩れているところから左右にクラックが入っている。
この場所の崩れ方が一番大きかった。先に見える黒い部分も出水でコンクリートが傷んだ部分である。手前側は大きく崩れ、天井寄りはコンクリートの補修が剥がれ、おそらく元々の隧道壁面だろうが、それが見えている。これでは路面に水も溜まるだろう。
崩れてきている箇所を抜けて、乾燥している部分に入ってから岩室側を振り返って撮影してみた。坑口の先に見える風景が美しい。でも坑口の内壁の状況を見た今では、もし次にここに来たときは、この景色は見れるだろうか?と、ふと思ってしまった。
間瀬側へ脱出。間瀬隧道とその旧道を往復で完抜した。感無量である。もし、この隧道の片方の入口が崩壊していたら、私は後悔していたことだろう。この隧道がまだ元気なうちに訪れることが出来て良かった。心からそう思う。
ずっと肩から下げて行動していた大型のカメラバッグから、もう一台のカメラを取り出した。このカメラには私が生まれた年と同じ年に製造された、マニュアルレンズのNikkor-H Auto 2.8cm F3.5がセットされている。そのカメラで撮影した画像がこれ。
色の写り方がまるで違う。使用するレンズによって、ここまで発色が違うのだ。実際にこの目で見た風景の色は、こちらの色の方が近い気がする。
この一枚を撮ると、私は「ありがとう。また来るよ」と言って、間瀬隧道を後にした。