新潟県三条市道
吉野屋1号線 旭隧道

第3部

2019年4月13日 探索・2019年6月5日 公開

前回は、この画像が最後だった。もう一度見てみよう。

なかなか広々とした空き地だが、もしかすると森林鉄道のヤードだったのでは?と思わせた、この空き地。よく見ると左側に山の方に上る細い道などがあったりして、ますますその雰囲気が濃くなっていくのだが、この空き地の正体はわかっていない。この空き地は旭隧道を出たすぐ左側にあるため、隧道から出て一息ついていた私は「なんだろうなぁ、この空き地」などと思いながら、眺めていると…

隧道から出ると、すぐに沢を渡る小さい橋がある。この橋は欄干もなく名もなき小さな橋で、橋の脇に鉄管が通っていて、この鉄管自体はおそらくは水道管などの類なんだろうから、これはさほど珍しくもないのだが、問題はその鉄管の上から直角に出ている鉄の棒らしきもの。穴が二つ開いている。これは…これはもしかして!!

レールだ! しかも断面が小さい!

通常、レールにはJIS規格と言うものがあって、すべてのレールはこのJIS規格で造られている。これを書いていくと途方もなく長くなるので省略するが、鉄道に使用されているレールは一部の路面電車などを除いて平底レールを使用している。いわゆる一番よく見かけるレールのことだ。更に、鉄道用は「普通レール」と言う種類のレールを使用しているが、この他に工事用軌道やトロッコ、森林鉄道(!)などで使われる「軽レール」なんてのもある。これはもしかして、その「軽レール」では?。一番小さい規格のレールは6キロレールと言われるもので、レールの高さは50.80ミリ、つまり約5センチ。なかなかの低さと言えばいいのか、高さじゃないか。

先の方にも、もう一本レールが出ている。鉄管を吊るためなのか、橋の補強に使われているのかわからないが、正直用途はどうでもいい。私にとっての大問題は「なんでこんな山奥に、こんなレールがあるんだろう?」と言うことなのだ。このレールを更に確かめるべく、沢の中に飛び込もうかとも思ったが、靴が大変なことになりそうなので、やめておいた。
しかし、誰もいない山の中の、隧道を抜けたところにある沢を渡る橋の付近で、「おおっ!これは!」などと結構大きな声を出しながら橋の周りをウロウロしているオッサンの光景を想像して頂きたい。
自分で言うのもなんだが、実にアヤシイ人物である(笑)

さて、そんなこんなで私が橋の袂で大騒ぎ(?)していると、何やら低めの音が隧道の方から響いて聞こえてくる。私はてっきりバイクでも来てるのかなぁと思ったが、念のため隧道の中を覗き込むと…

この明かりは!。相変わらず低い音が響いて、その音がだんだん大きくなってくる。やがて隧道から飛び出してきたのは…!。…普通の軽トラだった。自転車を極力道端に寄せて立っていた私に、すれ違いの時に軽く会釈をしてくれたドライバーの男性は、山仕事のプロのような風貌をした高齢の男性。この隧道の途中がかなり狭くなっていたことを考えると、やはりこの隧道は軽トラ専用で、仕事グルマじゃないと通れないと言ってもいいくらいなのではないかと思う。

さぁ、吉野屋集落側へ戻ろう。その前に、この素晴らしき隧道をもう一枚撮影。改めて眺めても、実にいい感じの佇まいの隧道だ。装飾されたパラペット(胸壁)も何もない簡素な外観だが、なかなか味がある外観と思うのは、私だけか(←お前だけだ)。
この隧道の扁額は、坑門の頭上にある高さ制限1.8メートル、幅員制限1.5mの標識だろう。では、その原因となった、この隧道の一番狭い場所を眺めながら帰ることにしよう。頼むから対向車来るなよ(笑)

狭!(笑)

この一言だろう(笑)。ここだけ見ると奈落の底に続くような雰囲気を持っているが、大丈夫。ちゃんと吉野屋集落へ続いているので安心されたい。ただ、私はここを自転車で通行しているので落ち着いて観察できるが、これが歩きで通行となると、観察二の次で通っただろう。それほど迫力がある。

吉野屋集落側に戻ってきた。坑門の頭上に沢が流れる隧道は、あまり見たことがない。だが、この沢の水のおかげで、隧道を通って汚れた自転車を洗車することが出来た。自然に感謝。隧道を出てしばらく、自転車の洗車と通行した余韻に浸って時間を過ごした後、現地を後にした。

さ、あとはこの隧道を掘り下げて調べてみよう!

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