新潟県出雲崎町道
尼瀬稲川線
稲川隧道 再調査編
2025年4月5日 探索 2025年5月12日 公開
それは突然に
この稲川隧道は2018年(平成30年)に探索して完結したレポートだった。
この「古の道標」はWEB更新時などにX(Twitter)やInstagram、Threadsなどで公開情報をアップしているが、たまに過去の作品を「古の道標ーRemenber」として紹介もしていたりする。そこでこの稲川隧道のレポートを紹介した際に、メッセージをいただいた。その方は、この稲川隧道は現役時代から内部崩壊が進んでいたこと、そして隧道までの旧道がまだ残っていること、地元の方々は「稲川トンネル」と呼んでいたことなどを教えてくれたのだ。前のレポートの終わりで私は、稲川隧道は現在の稲川トンネルと同じ位置にあること、そこにアプローチする道も現在の道と同じと結論付けて完結としたが、これが違っていたことになる。
稲川隧道に旧道が存在すると!
これは再調査しなくては!
そしてここが大事なのだが、アプローチする旧道が現在も残っているということは、その旧道の旧道(つまり現在の道からすると旧旧道ということになる。いわゆる「ナナマガリ」という道だ)へのアクセスも可能になるんじゃないか?と直感した。Threadsにメッセージを頂いたのが4月2日。その3日後の4月5日には、私は現地に立っていた。
正直に言うと、この探索は冬の期間は休止していた探索の、シーズンインに向けてのリハビリの目的も兼ねて行おうとしていたのだが、実際はリハビリどころではなく…ということになる。
一旦は完結したレポートが、新たな情報でまた動き始める。それは実に素敵だし、こうして修正の機会を頂けるのはとても嬉しいことだ。公開当時の間違いを正せることは私としても非常にありがたいことだし、その情報をメッセージとして頂いた方には大変に感謝している。で、こういう時には得てして、すぐに行けるシチュエーションが揃うものだし、その探索は成功するものだったりするのが、また不思議なところで…。それは八ツ口旧道の時もそうだし、惣座峠や三坂峠の時もそうだった。「探索しなくてはいけない」という時には、必ず廃道の女神が微笑むものなのだ(なんで「女神」なのかということは、この際触れないでくれ(笑))。

と言うことで、現地。
ここは新潟県三島郡出雲崎町。尼瀬稲川線の経路上に私は立っている。時刻は4月5日の13時59分。近くの路肩の少し空いたところに車を停めてベース基地とし、歩いてここまでやってきた。実はこの画像の中にその旧道が隠れているのだが、皆さんはお気づきだろうか。
また新たに時間が動き始めた、この稲川隧道のレポート。この隧道をレポートするきっかけとなった友人には久しく会っていないが、どこかでこのレポートを必ず見てくれるだろうと信じて、探索を始めることにしよう。…と、その前にまずはこの稲川隧道がどこにあるのか、おさらいしておこう。

ここは新潟県三島郡出雲崎町。
この出雲崎町は海側と山側の市街地があるが、件の友人の話によると、
「昔は海沿いの方が栄えてて、トンネルを通って山の方の人は買い物に来ていた」と言うことらしい。そして他にも、
「海沿いで花市があってそれに来たり、時計屋さんとかに来てたのは覚えている」
「天井から水が滴って、大人でも通らないような怖いトンネルだった」
という話を聞いていた。海側と山側を結ぶ道が数少なかった中で、稲川隧道は非常に重要な役割を過去も現在も果たしていたのだろうし、それは今も変わっていないだろう。で、私は再調査するために、およそ7年の時を過ぎて再びここに立っているというわけだ。
もうそんなに前のことなのかと、感傷的な思いが私の脳裏をよぎる。その頃は私はまだ40代だったのか…と感慨に浸ってみるが、今はそんなことはどうでもいい(笑)。
私が立っているのは中山という海側の集落の交差点に立っている。この地図がまた細かくて申し訳ないが、ズームして見て頂きたい。中山集落は、この地図でいうと上のほうになるだろうか。下側が(見切れているが)稲川集落ということになる。画像中央よりやや左、「荒城址」という記述のすぐ右隣が、現在の稲川トンネルだ。これが過去の地図になると…

こうなる。この地図ではまだトンネルはない。その代わりに峠を越える「ナナマガリ」と言われた峠道の姿が見える。この「ナナマガリ」がどこにあるのか、それもこの峠道とトンネルの大きな謎だった。前回はこの峠道までは探索の力が及ばずに完結としたが、今回は「もしかして…」という希望もある。
7年の時間を越えて新たに動き始める、幼き日に見た隧道の物語。友人の幼き日の記憶を今に繋げようとした探索は、まだ終わっていなかった。たった一枚だけ今に残された画像を再び手にして、友人がどこかで見てくれているだろうと信じて、思い出の謎を探し出す探索が再び始まる!。
さぁ行こう!
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