山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 大鳥隧道
第1部「深緑のカーペット」
2023年10月14日 探索 2024年5月5日 公開
「深緑のカーペット」
さて、いよいよ探索の開始だ。ひび割れたアスファルトや路面に張り出した草木の類が、廃道の雰囲気を盛り上げてくれる。地図上では供用されていることになっているが、やはり廃道状態になっていると見た方がよさそうだ。しかし…それにしても暑い。秋の高い空、さえずる小鳥、清々しい空気、それに…生暖かい風!(笑)。いかん、探索は始まったばかりだが、少し進んだところの日陰で休憩することにしよう。
少し先に進むと、それまでの路傍の草たちはなりを潜め、穏やかな道の風景に戻る。ただし、これが県道だとはとても思えないくらい狭くて、なんだか昔の街道の雰囲気がそこはかとなく漂う気がするのは気のせいか。路肩をよく見ると、手前左側の路肩の位置に消えかけた白線がある。その昔はもっと道幅が広かったんだろうな。この道が現役であったころの風景を、この目で生で見たかった。
旧道や廃道、隧道、酷道、険道、未成道に足を運ぶようになって6年。まだまだ駆け出しのオブローダーだが、もっと早くこの道に入っていれば、もっと多くの風景を見れたはずなのにと最近よく思う。このWEBをご覧いただいている皆様も、気になったところは出来るだけ早く行っておいた方がいい。いつか突然に、二度と見れなくなってしまう可能性があるから。
いいなぁ!この道!
現在の大鳥トンネルが開通する前の大鳥隧道は、車も通行していたと聞く。と言うことは、その前後の道もそれなりの幅があったはずなので、今のこの姿は下草が路面に侵食してきた結果のものだろう。おまけに脇の木々も元気にすくすくと育っている。道路は、それがどんな道であっても管理の手が一旦緩められてしまうと、自然はその驚異的な回復力で元に戻ろうとするのだ。やはり自然の力は偉大なんだと改めて実感する。
だが、今のこの姿を見れば…およそ県道ではなく、散歩道だな、こりゃ。
旧道を進んでいくと、こんな風景が見える場所に辿り着く。目の前に見えるのは現道の大鳥トンネル坑口の直前にある橋だ。その奥には朝日連峰に繋がる山々が見えて、なかなかいい景色。でも、こんなところに川はなかったはずだが…と思って地図を見てみると、案の定。この橋は川は渡っておらず、地形上の谷を越えるために架けられた橋だった。現道と旧道は並走しているので、ここから左を向くと旧道が見えるはずなのだが…
おぅ…
なかなかの下草じゃねーか(笑)。こりゃ予想が当たったと言わざるを得ないだろう。この風景に名前を付けるなら「深緑のカーペット」だろうか。
それにしても、やっぱりこの道は通れなかったか…。たぶんそうじゃないかと思ってはいたんだが、こんなことでひるんでしまっては道路探索者の名が廃るというものだ。幸いなことに私の足は「これを履いていると勇気百倍!」の勇者の靴(←長靴(^^;)を履いているし、これしきの草など恐れることはないだろう。この先に三姉妹隧道の長女がいるとなれば、なおさらだ。
突入するときに眺めていて気付いたが、こうしてみるとなかなかの道幅を持っている。ギリギリ対面通行できるかな?と言った2車線の道だが、ここだけ道幅が保たれたのはなぜか。それはおそらく、この部分が橋になってるからだろう。親柱も高欄もないが、左右の路肩の状況を見ると、まず間違いない。となると橋自体の強度は大丈夫か、途中に穴が開いていないかなどの問題がいろいろと考えられる。ここは慎重に進むことにしよう。
ゴソゴソ、ガサガサとヤブを掻き分けていくと道は森の奥へ。なぜか奥の方に向かう踏み分け道が一本。この踏み分けはクマか、それともヒトか。ヤブは腰のあたりまでになり、草に埋もれたツタの類が一歩一歩進んでいく私の足に絡みついて、先に進む足取りの邪魔をする。もっとも草に覆われて足元の状況がわからない上に、ここはおそらく橋の上。否が応でも足取りは慎重になってくる。
先に見える黒い穴らしきものが大鳥隧道か?!。ここから見るとなかなか禍々しい雰囲気を持つ隧道のように見えるが、実際にはそんなことはないだろう。道のりはそんなに長くないが、なかなかに濃い探索の道。楽しませてくれそうでワクワクするぞ!