一般国道345号
楠トンネル旧道

2024年5月18日 探索 2024年6月10日 公開

プロローグ

今回の探索は、何よりもホット!だといっていいだろう。何よりも探索から一か月もたっていないレポートだからだ。と言うのも、これまで一連のレポートが山形県の、とある県道のレポートが続いていて、そのレポートは一旦完結したのだが、机上調査編を執筆中になかなか奥が深いことがわかってきて、そこに通常のレポートが重なってきて…というわけだ。今、机上調査編で山形県の県道を扱っているなら、普通に進んでいくレポートも山形県に統一した方がいいかな?と言うことで、この探索のレポートの登場となった。

今回は、一般国道7号と共に山形県の庄内地方と新潟県の県北地方を結ぶ重要な道として活躍している、酷道の旧道のお話。
その酷道は一般国道345号。起点は新潟県新潟市中央区本町、終点は山形県飽海郡遊佐町女鹿の一般国道7号交点、その総延長距離は225.3㎞に及ぶこの道は、一般国道の路線として1974年(昭和49年)11月12日、政令第364号で第3次追加指定、1975年(昭和50年)4月1日施行によって国道になった路線だ。 指定された当初は新潟県村上市 – 山形県飽海郡遊佐町の指定だったが、その後1982年(昭和57年)4月1日、新潟県新潟市 – 山形県飽海郡遊佐町として再度指定された。「古の道標」では「笹川流れ狭路隧道群」としてこの国道の旧道を取り上げてレポートにしているので、おなじみの方も多いと思う。

この道は一般国道7号から分岐する山形県鶴岡市鼠ヶ関(ねずがせき)までは酷道ではないが、その先の鶴岡市の市街地に向かう区間では一転して酷道の様相を呈するという、非常に面白い道。しかも冬季通行止めのおまけつきだ。その道を新潟県と山形県の県境の集落である鼠ヶ関(ねずがせき)から鶴岡市方向へ進んでいくと、関川の集落を過ぎ、温海川(あつみがわ)集落と菅野代(すがのだい)集落の境に楠峠(くすのきとうげ)という峠がある。現道はこの峠を「楠(くすのき)トンネル」で一気に越えているが、過去にはここに峠越えの道が存在した。それが今回紹介する楠トンネル旧道だ。それでは地図を見てみよう。毎度おなじみ地理院地図である。

国土地理院の電子地形図(タイル)に注釈を付記して掲載

現道は中央に走る赤い線で、このように今は一本道で峠を貫いているが、その昔は山の等高線と川沿いに進んでいた。地図中、楠峠の文字がある地点が頂上であり、いくつかの通行された先人の方々のレポートを見ると、ここからの景色はなかなかに良さそうだ。今回のスタート地点は菅野代集落側で、ここから自転車で上がっていくことにした。こちらの方がベースとなる車を停める余裕があることと(県道349号の探索の際に下見を行い、目星はつけておいた)、自転車を使うことから、ある程度広いスペースがあった方がいいと思ったからだ。今回は久しぶりの自転車の登場で、もしかしたら私の脚力も衰えているかもしれないが、これから探索シーズンでもあることだし、リハビリにはいいだろう。

さて、現地。この画像は現道の楠トンネルを越えて菅野代集落側に降りてきたところで、正面がトンネル方面となる。画面左側には何やら分岐点のようにガードレールが入り込んでいるが、ここが楠峠旧道の分岐点だ。少し先には橋が見えるが、この橋は五十川という川を越えており、この川は今回探索する旧道の前半部分を共にする川でもある。さて、ここで左側の旧道方向を見てみると…

こんな感じで「いかにも私は旧道です」と言わんばかりの存在感で、右側に分岐している。つまり、この旧道は等高線に沿って素直に進んでいる、ということで、それなりに勾配も急になっていくのかなという気がしている。

この画像を撮影したのは午前11時くらいだっただろうか。季節は5月の中旬、例年ならまだそんなに気温も上がらない時季だが、今年は晴れが続いて気温も20℃を超えていただろうか。空はご覧の通り快晴で、雲一つない良い天気だ。絶好の探索日和…と言いたいところだが、暑すぎる。水分とタオルを多めに持って行かないとな…と本気で考え始めたところだ。さて、地図上ではこの先に現れる橋の少し手前まで、長閑な道が続くはずなんだけど…

この時点では、まだ車に乗っている。この先の橋の手前あたりを目安としてベース地点を決め、そこから自転車での探索に切り替えるつもりだ。もしここを自転車で通っていたら、太陽の光を遮るものが何もなく、おまけにご覧の通りの結構な坂道で、私は落ちたであろう脚力のリハビリ期間中と来ているから、体力が大幅に削られたであろうことは間違いないと思う。さて、どのあたりをベース地点にしようかな…

のんびりと撮影しながら、ふと山の方を眺めてみると、そこにはさほど高くはないが連なっている山々が見える。現道の楠トンネルは画像外の右側をトンネルで穿っているが、これから探索しようとしている楠峠は、この画像の中央少し左あたりを通っているようだ。これからあの山々に挑むのかと思うと、ワクワクする自分がいるのと同時に、クマが出ませんようにと祈る自分がいた。私は幸いなことにクマには国道49号の惣座峠を探索中に、それらしき唸り声を聴いただけだが、出来ればお会いしたくないものだ。

少し先へ進んでいくと、画像ではわかりにくいだろうが橋が見えてくる。この橋から先がいよいよ自転車の登場となる旧道の区間だ。この地点の少し手前の右側に少し広い空き地のような場所があったので、そこに車を停めてベース地点とした。先ほどとは道幅も随分狭くなり(というより、左右の下草の張り出しが強くなっただけなのだろうが)、普通車がすれ違うのがやっとの道幅だ。こうなると否が応でも気分が盛り上がってくる。

自転車を組み立て、着替えて探索モードに入り、あたりを見回してみる。
最初はやはりあの橋だろうか。それと、ここに来る直前の左側(すなわち山側)にコンクリートと組み合わさった石垣を見たような気がした。そこも見てみようか。

それでは…探索開始!
あちー!

第1部
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