持倉鉱山
事務所・精錬所跡

後編

2018年8月19日 探索・2018年8月21日 公開
2018年10月23日 加筆修正

8月19日の土曜日。同じ年の7月に尋ねた場所に、もう一度向かった。その場所は阿賀町五十島、持倉鉱山跡。
前回訪問した際に、そばを流れる五十母川の水位が高くて行けなかった場所に行くためである。

これは、ここではおなじみ母なる川の五十母(いそも)川。
この年の夏は暑かった上に少雨。たまに様子を見に来た際はこれより水位が低かったが、幾分復活したようである。やはり川には水がないと寂しいし、不安になる。

前回は事務所跡まで林道を通ったが、今回は精錬所跡が主体なのでこの地点で渡河し、精錬所跡を目指そう…かと思ったが、やはり事務所跡にも顔を出していこう。対岸だもんね(笑)。

これは前回でも少し紹介したが、事務所跡の対岸にある精錬所跡である。事務所と同じくカラミレンガで組み上げられたそれは、今でも往時の姿を保っている。この精錬所跡を見て回る前に、もう少し事務所跡を見てみよう。

事務所跡にある見事なアーチ。これは通路か窓か。右側を見てみると、同じアーチが並んでいるように見えるが、アーチの下端が地面まで到達してないので。おそらくこっちが窓だろう。なもんで、ここは通路と思ったのだが…

他のアーチも見てみると、同じ構造が妙に多い。全部通路だったと考えると、どこからでも事務所に入れるドアだらけで。妙に風通しのいい事務所じゃないかと思ったり(笑)。
だが、この建物が実際に使われていた頃を想像すると、非常に瀟洒(しょうしゃ)な建物で、そこに多くの人が出入りする風景が想像できる。
正面玄関の前に車が止まると、車の中からハットを被ったスーツ姿の重役さんなんかが降りてきたりして。

見事なアーチ。ここは通路か、廊下だったのか。今でも崩れずに残っているのは、使われているレンガの強度が高いのもあるし、これを組み上げた当時の職人の方々の技量もあると思う。実に見事だ。

ひとしきり見て回ったところで、対岸の精錬所跡に向かおう。

ここからは精錬所跡。五十母川を挟んで対岸には事務所跡が見えている。川岸の草むらを過ぎて階段を上ると、ここに来る。これは精錬所入口のアーチだろうか。右端には私が使用しているトレッキングポールが写っているが、ここに来るにはこのトレッキングポールもあった方が良い。

精錬所からみた事務所跡。ここから眺めていると、さっきの車から降りてくる重役の話ではないが、そういった場面が想像できるようである。精錬所で働く人たちがここから見ていて、事務所に車が止まると「誰だ?」ってな感じで見ていたのかも。

この階段を上がっていくと精錬所立坑跡に出る。立坑の内部は立ち入り禁止になっているが、この階段は上がることが出来るので、上がってみよう。

立坑入口。ご覧の通り立ち入り禁止となっているので、入らなかった。
ここから覗く限りでは、この入口のアーチ全体はしっかりとしており、落盤も側壁の歪みも湧水もなく、内部も乾燥しているようなので、良好な状態と言えそうである。

これは覆道(りどう)だろうか。覆道とは、通行する場所や通路を確保するための覆われた道のことで、赤谷の発電所付近でもこの覆道がある。ここでは側壁が苔に覆われており、湿気は普通にありそうだ。しかし湧水はなかった。だが、天井付近の石が先ほどの立坑よりも緩んでいる。ここも立ち入らない方が良い。

精錬所跡、全体の様子。ご覧のように元々の地形を生かした形で建造されたようだ。立坑などは岩山を生かしているのがよくわかる。この風景を見ていると、「天空の城ラピュタ」を思い出した。持倉鉱山に訪れるのは今回で2回目だが、相変わらず美しい場所だった。次に来る機会があれば、居住区跡まで行ってみたい。

自然に還りつつあるその建物は「神殿」とも呼ばれ、
100年近く前にはそこに街が存在し、豊かな生活が営まれていた、
その場所は

持倉鉱山
事務所・精錬所跡

完結。

※現地へ行こうとされる方へお願い

現地は、はっきり言って山の「ど」真ん中です。
そこには「ヤマヒル」「メジロアブ」(メジロアブは本来、清流にしか生息しないと言われています。それだけ五十母川が清流と言うことなのですが)、さらには「マムシ」「ヤマカガシ」「スズメバチ」「悟空(サル)」「プー(ツキノワグマ)」など、多種多様な生物がいます。

また、歩きやすく整備されてるように見えますが、ロープを使って降りたり、川を渡ったりしなければならない箇所もいくつかあります。

現地へ赴く際は事前調査を行い、準備をしっかりと行いましょう。

ヘルメット(帽子)、長袖の衣類、皮の手袋、長ズボン、長靴(必須)、熊鈴、ホイッスル(呼子笛)、トレッキングポール、コンパス、地形図、水、食料等の山装備は必須です。

草木の茂った未整備の山中に分け入る。
それがどれほど危険なことか、わかっていない方が残念ながら多くいます。
普段着に運動靴と言う軽装で入山するのは、当たり前ですが論外であり、非常に危険です。
この持倉鉱山跡へは、登山に必要な服装・装備、川の渡り方や自然の危険等を用意・勉強してから赴いて下さい。少しハードルが高いかも知れませんが、その代わりに、この場所に到達した時の感激は、他の場所の追従を許しません。

東の(新潟)持倉、西の(長崎)軍艦島と呼ばれるほど、美しい場所です。
そこに事故なく到達するためにも、装備をしっかりと整えてから赴いて下さい。