一般国道345号旧道
鬼坂隧道 第9部
「隠された旧き石垣」
2024年5月18日 探索 2024年9月19日 公開
隠された旧き石垣
てくてく…
いやぁ長いなぁ、この直線。この道の妙にきれいな路面がとても気になる。時季になると路肩の草も刈りこまれてると見た。こりゃやっぱり廃道じゃなくて、何かの管理道になってるようだ。おかげで非常に歩きやすいものの、もう少しハードな探索を欲している身としては、いささか面白みに欠けるのは否めない。道幅は優に1.5車線はあるもんだから、ジグザグに歩いて左右の路肩を注意深く見ながら上がっていくようにしているんだけど、おかげで歩く距離は倍以上になってしまって、非常に疲れる(笑)。仕方ない、真っすぐ歩いて先に見える右カーブを過ぎて、そこから見える景色に期待しよう!。そう決めて歩いていくと…
てくてく…(笑)
このカーブを過ぎると新しい景色が見えるんじゃないか。そう期待しながら意気揚々と曲がっていくと…また直線だった。菅野代側に比べてこちらの坂野下側は、まだ現役の道かと見まごうような手の入れられようで、立派に道路としてその役目を果たし続けている。だけどその道は決して平坦ではなく、先ほどの直線も、その前の直線も、全てにわたって見事になだらかで緩やかな上り坂だ。こういった道は歩いて上るにもなかなかに体力を使うけど、車にとって長い坂道というのは上りも下りも速度の制御が難しいもの。局所改良で現トンネルが造られたのも、わかる気がする。
なだらかな坂道をてくてくと歩いて、「やれやれ…」と顔の汗を拭いながら路肩を見てみると…。おおおっ!苔生したコンクリート製の擁壁!。こんな擁壁は普段旧道や廃道を巡っていると結構目にするもので、新鮮さもあまりないもんだけど、この道で見かけたこいつは別だ!。この旧道ではほとんど目にすることがなかった擁壁、実に目新しい!(笑)。
と言うことで、遠距離の彼女に久しぶりに逢うときのように少し小走りで駆け寄っていき、少しだけ背が低い擁壁を見上げてみる。ここだけ崩れたんかなぁ…そうすると、この道はしばらく通行止めになってたんだろう。旧旧道の鬼坂峠は徒歩でないと通れない道だろうから、その間は菅野代や坂野下の方々はどうしていたんだろうか。地図を見てみると、この区間が通行止めになると菅野代から鶴岡方向に向かうには一旦国道7号に出て向かうしかなく、それこそ大迂回しなくてはいけない。細くて通行するのになかなか困難な道でも、通れなくなると困る。やっぱり道路と言うものは無くてはならないものなんだなと言うことを、改めて実感した。
コンクリート製の擁壁を見ながらひとしきり想いを馳せたのち隧道目指して進むと、だんだん道を取り囲む緑が深くなってきた(←喜んでいる)。手元にある地図を見てみると、ここから鬼坂隧道の坂野下側坑口まではさほど離れていないように見える。これまで広かった道幅も、ここからは急に狭くなって、およそ三分の二ほどに狭まっているし(だけど「幅員減少」の標識は見当たらない)路面もやや荒れてくる。これまであまり特徴のない平穏な道だったが、ようやく本領発揮と言ったところかな。なんだか嬉しくなってきて足取りも軽くなってくる(笑)。
ふと山側の斜面を見ると、なんとなく違和感を覚えた。草に覆われてはいるものの、その隙間から見える山の斜面の壁。その奥に何か見える。どう見てもさっきのようなコンクリートの擁壁じゃない。ということで、顔に絡みつく蜘蛛の巣を払いながら草の下に隠れているものを見てみると近寄って…石垣じゃないか!。画像ではややわかりにくいかもしれないが、大きな丸石がゴロゴロと一見乱雑に積み上げてられているかのような、いかにも旧そうな石垣だ。もしかすると、この道が開通した当初の物かもしれない。もう少し近寄ってみよう。
不勉強で申し訳ないが、名前もわからない小さいピンク色の花が咲いているその奥に、その石垣は隠れていた。表面を苔やツタなどの草木に覆われて埋もれてしまっているが、十分に旧いものと思われるので、隧道の開通と時を同じくして施工されたものだろう。こんなところに開通時の痕跡を残す石垣が残っているとは思わなかったので、非常に嬉しい。
路面との間に側溝があり、更に草が覆い茂っているので石垣に接近するのになかなか難儀したが、それでも何とか手が届くくらいに近寄って触れてみると、「よく見つけてくれたな」と迎えてくれているような気がした。
さて、この石垣の先に見える右カーブを過ぎれば…!