一般国道345号旧道
鬼坂隧道
 第4部
「不思議の森のトンネル」

2024年5月18日 探索 2024年8月25日 公開

不思議の森のトンネル

人ひとりが通れるだけの幅しかない道。だが、本来の道幅はもっと広かったはずで、この先の峠に穿たれた隧道を目指して進んでいた。現道との交差地点は鬼の仕業のせいか未だにわからないままだが(←そんなことはない。ただ単純に私がわからなかっただけだろうと思う)、ここまで来たんだ。交差していることは間違いないので、私が見落としただけだろう。

それよりも私の胸は高鳴っていた。それはもちろんこの探索のきっかけになった鬼坂隧道に逢えるからだが、その隧道がどんなものか、今どうなっているのか、それをこの目で見たい。その隧道にもうすぐ逢える、理由はただそれだけだ。

ここは…?。現道時代はどのような場所だったんだろうか。中央に踏み分けが出来て、これまでと同じように細い道になってしまっているが、おおよその道の幅はわかる。でも、広いよねぇ。こりゃ非常駐車帯のような広場だったのかも。あるいは山道でよく見かけるようパーキングスペースのような場所とか。非力な昔の車ではこの峠を越すのに(別にこの峠に限ったことではないが)大変だっただろうから、多くの車がここで一息ついていたのかもしれない。

踏み分け道が出来ているおかげで、これまで大したヤブこぎもすることなく、ここまで無事に来られている。この旧道の隧道までの途中には、これまで見ていただいている通りで周囲に特に目ぼしいものはない(失礼!)ので、この踏み分け道が出来ている理由がわからない。獣道か?、それとも私の御同業の方々だろうか。でも、それにしてはこの旧道がそんなに有名とは、ついぞ耳にしたことはないが…。

それにしても、だんだんと暑くなってきた。この探索の以前の場所の終わりに着替えたTシャツも既に汗でかなり重くなってしまっているから、早めの水分補給が必要だろう。次の木陰で、熱中症予防の梅干しとお茶で休憩することにしようか。

おや?。周りをキョロキョロしながら楽しく歩いていたために気づかなかったが、踏み分け道の向こうはポッカリと空いた木々のトンネルのようになっている。思わず立ち止まって見てみると、某著名なアニメ(となりのトトロ)で、主人公の娘(メイ)が見つけた、庭の片隅から始まる不思議の森のトンネルのような様相を呈しているじゃないか。

思わず空を見上げる。探索に夢中になっていたので気づかなかったが、空が遠い。まだ峠に近づいていないんじゃないの?と思われる方も多いと思うがそうではなく、ここまで旧道を辿って上ってきたにしては不自然なほど、道が空に近づいていないよねという感覚的なものだ。こういった時には、ほとんどの場合は峠に隧道が穿たれていることが多い。今回の場合は、この先に隧道があることはわかっているので、なるほど、と言った具合だ。

画像で見るとヤブのように見えるが実際はさほどではなく、簡単に言うと草の壁がいくつか重なっている状態。この壁はさほど厚くないので、簡単に突破できる。草木を掻き分けながら進むなんてことは、私の普段の生活ではほとんどないことなので(←じゃ、たまにあるのか)、このくらいなら楽しみながら進んでいく。気分は探検隊だ(なおダニ除けなどのため、探索に入る前に頭の先から足の先までディート系の虫よけ剤を吹きかけておいた)。

近い。

森を切り裂いて進む道は、おそらくだがまもなく終焉を迎える。
この道の左右は切通しだろうか。現地では詳しく見なかったのを今は悔やまれるが、こうして残っている画像を見ていると、ここから幅員が急に減少しているようでもある。

たぶん、もうすぐだ。この感覚はなんとなくだが、道自体に感じられる独特の雰囲気でわかる。V字型に切れ込んだ周りの風景の先に、今は役目を終えて山の中にひっそりと眠り静かに時を重ねる、鬼坂隧道の息遣いを。

やっと逢える

あ、休憩するの忘れてた。…ま、いいか。

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