一般国道345号
楠トンネル旧道

第9部
「梅干しと麦茶」

2024年5月18日 探索 2024年7月20日 公開

梅干しと麦茶

木陰で小休止してリフレッシュ、スッキリした後はまた探索を続けよう。この画像は、小休止した木陰の場所から、これから向かう方向を眺めたものだ。従って、私の口には今、梅干しが入っている。いやー、スッペぇ(笑)

口の中の酸っぱさを、今回の休憩で新しく開けた麦茶で潤しながら(前回まで飲んでいたルイボスティの空きボトルは当然だが背中のリュックの中だ)傍らに停めた自転車を眺めていると、ブレーキシューが交換時期に来ているのを発見した。部品は家にあったはず。帰ったら交換しないとな。

視線を自転車から周囲に戻すと、目の前には耕作放棄地が広がっている。昔はこうした山間部の至るところに田圃や畑があった。平地の少ない山間部の集落では、こうしたわずかな平地を切り開いて耕作地としていたから、そこに通うだけでも大変だし、冬季には雪解けまで何もできないという不便さなどと戦いながら農業をされていたんだろうから、その苦労は想像するだけでも大変だっただろう。その時代と風景に、懐かしさと同時に思わず頭が下がる。

と思いながら眺めていると、路肩であろう場所に立っている針葉樹の下あたりに、タイヤのようなものが見える。ありゃ間違いなく不法投棄だろう。こんなことをしているから、あちこちの旧道が立入禁止になったり、ゲートで封鎖されたり、その奥にある歴史的に価値のある隧道にまでも到達できなくなってしまうのだ。そんなことを思っていると、なんだか無性に腹が立ってきた。
いかんいかん、落ち着け。せっかくここまで楽しく探索してきたのに、これで台無しになっては道に申し訳ない。最後まで楽しく、この道と向き合うことにしよう。

さて、休憩して塩分とミネラル分も補給したし、現道目指して出発するとしよう。「夏にはやっぱり梅干しと麦茶だな」と変な納得をして先へ進む。この辺は他の場所と比べても陽当たりがいいのか、道の周囲の草が濃い目になっていて多少路面に侵食している。現道だったころは、ここももう少し広かっただろうな。それはさっき薄紫の花束を貰った場所と変わらないほどだっただろうと思う。
でもここは…もしかしたら何か見つけられるかもしれない。自転車で走り抜ける道じゃないな。押して歩くことにしようか。

ダブルトラックが明瞭に残る道を、自転車を降りて押し歩きしながら辿っていく。右側に残る耕作放棄地を回り込むように進むこの旧道は、耕作地のアクセス路としても活躍したんだろう。たぶん、ここから現道に合流するまでそんなに距離はないと思うけど、やっぱりこの峠は珍しいことに全体的に陽当たりがいいというのは改めて感じる。そのおかげで探索中でも暑くて仕方なかったが、それももうすぐ終わる。探索を行った時季もあるんだろうけど(とは言っても初夏なのだが)、やっぱり年々地球の気温が上がってるんだなと感じる。暑いのはあまり好きじゃないんだけどなぁ。虫も増えるし、草は多くなるし…切り口が斜めに刈り取られたイタドリの茎なんか、下手に踏んづけた日にはケガするしねぇ。

現道目指して一直線!

およ?。手前に一部分だけ道幅が広がったところがある。こりゃ退避場所か?。てことは、この前後にもしかしたら「待避所あり(標識番号116の5)(※国土交通省のWEBにリンクしています)」の標識があるのでは?と周囲を探してみたものの…やっぱりこの道には標識なんかがほとんど残ってないんだよなぁ…。その辺に旧制道路標識なんか転がってないかしら(←おい)

立派な峠道にも関わらず、こうした直線の道が結構多いのもこの旧道の特徴でもある。それだけこの道の全長が長いのも理由だろう。自転車に乗ってる身としては、ここは一気に下って爽快感を味わいたいところだが、そうすると路肩などにある貴重な情報を見逃してしまいそうだし、仮に見つけたとしても急ブレーキで止まらないとだから、ここは歩いていくか。幸い、定期的に木陰があるようだし、涼めるしね(笑)。

右側には色鮮やかな緑の絨毯に覆われた、ちょっとした広場。このカーブの待避所らしき場所だったのだろうか。のんびりしていい旧道だ。…おや?、少し先に何やら建造物が見える。あれは現道の橋じゃないか?。となると、この旧道の探索ももうすぐ終わりということになるなぁ。

地図を見てみると、この橋は現道が「藤菜沢」という沢を渡るために架橋された「長元橋」という橋らしい。もちろん、我らが旧道はこの沢を渡らないので、現道に合流するまで橋はない。また、この沢(というか、川なのだろうが)は現道の楠トンネルのすぐ脇から始まっているようだ。ベース地点までの帰り道、行けたら行ってみることにしよう。

沢と橋と…などと、あれこれ考えながらふと山側の道端を見てみると…。おおっ、こりゃデリニエータじゃないか!。コソッと隠れるように、控えめに立っている。しかも「山形県」の刻印があるじゃないか!。もうすぐ現道に合流するが、最後の最後でここが国道の旧道であることを証明してくれるものを見つけたぞ!。反射材は外れてしまっているし、気を良くして周囲の草むらを掻き分けてみたが「山形県」と彫り込まれた標柱は残念ながら見つけられなかった。だが、これは嬉しい。これでこの探索も無事に終われる。ゴールまでもう少しだ。というか、ホントにあと少しのはず。先に見える左カーブを過ぎれば、現道が見えるんじゃないか?。

次回はいよいよ現道に合流!。
しかし、そこで見たものは…?

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