一般国道345号
楠トンネル旧道

第3部
「迫り来る緑の悪魔」

2024年5月18日 探索 2024年6月26日 公開

迫り来る緑の悪魔

カーブミラーの支柱が残るカーブを過ぎて、峠を目指してさらに進んでいく。この付近は御覧のように日影がない。自転車を押して歩いている身では、この陽気は暑くて仕方がないということで、左側に日影が見えるこの地点で休憩することにした。自転車を停め、背負っているリュックを降ろすと、暑くて汗だくになっていた背中に風が巻き込んで非常に涼しい。それだけでもリラックス出来そうだが、水分補給も大事にしよう。

リュックに入れていたルイボスティーを取り出して一口飲むと、生き返った気分だ。今は路面に両側から下草がせり出してきて狭くなってしまっているが、もともとは対面通行が出来るほど広かったんだろうな。賑やかな道だったかもしれない。空気は暑いが、心は清々しくて気持ちいい。身体も心もクールダウンしてきたところで、出発しようかな。

現道当時は多くの人々が行き交ったであろう楠峠。こうした晴れた日に通るには、非常にいい峠であることには間違いない。ここから見える周辺の山々も針葉樹だけではなく、針葉樹と広葉樹が入り乱れた美しい森が道のそばまですぐ来ているのが非常に良い。もっとも、ここで森からヌッと熊さんが現れてきた日には、非常に困ってしまうことになるのだが…。

いやぁ!、何やら緑に迫られて、道幅がますます狭くなってきたぞ!(←喜んでいる)。
しかも道の前方は森の中に突っ込んで行ってるじゃないか!(←喜んでいる)。
道から見える空も、だいぶ広くなってきた!。峠が近い証拠だ!(←更に喜んでいる)。
もう一つ!。隣を流れていた五十川は、いったいどこに行ったんだ!(笑)

誰もいない山の中の旧道で自転車押しつつ、こんなことを呟きながら上がっていく。だが、ここでいきなり峠にたどり着いてしまっては、面白くもなんともない探索になってしまうじゃないか。せめてもう少し長い道のりであってほしいもんだ。でないとレポートにもならないしねぇ(笑)。

作者注…こんなことを一人で言いながら探索をしている私は、十分にアヤしいと言える。一人で探索しているからまだいいが、どなたか相方さんと一緒なら大いに困ることになること請け合いだ。気を付けないといけない。

ふと路面を見ると、こんなモニュメントがあった(別にモニュメントじゃないだろうが)。これは…おそらく路面に埋め込まれた金属ポールの台座ではないのか?。すると、現道当時なのか、その後の時代なのかで、ここで通行止めが始まっていたころにここに金属のポールを立ててチェーンを張ってバリケードとしていたのだろう。路面にコンクリートで埋め込まれていると言うことは、この道が旧道化してからのものかもしれない。
と言うことは、だ。このポールの反対側に相方のポールがいるはずだと思って、路肩のヤブの中を覗き込んでみると…

一見すると木が生い茂っていたヤブ。だが、よく覗き込んで頂きたい。真ん中に金属のポールがあるのが見えるだろうか。今でも光り輝く光沢を放っているところを見ると、おそらくステンレス製だろう。なるほど、ここから峠までが通行止め区間で規制していたのか…。ん?ここから規制していたのはわかったが、それならどうして相方のポールがなくなっているのか。しかも、切り飛ばされたような切り口になっているし…。もしかしたら、この先はなかなかのヤブになっているのではないか?と、ポールを探す顔をふと上げて先を見ると…

おおおっ!(笑)

隠れてしまったポールの先を覗いてみると、御覧の通り。嬉しいことに、より一層この道のアヤシさが全開になってしまっているではないか!。

…これはいい!(笑)。ダブルトラックはあるものの、それはすごく頼りなくて、最後に車が通ったのはいつなんだ?!と言いたくなるほどの道だ。この道幅だと軽トラでも脇の草が車体に当たるんじゃないか?。

草が多く茂る道を楠峠に向かって進んでいく。ここがこの調子だと楠峠はどうなっているんだろう?。ネット上では素晴らしく景色がいい場所のようだが、今はどうなっていることか。一抹の不安がよぎるが、行ってみないとわからないので俄然やる気が湧いてきた。この男はどこまでも探索に一途らしい。

さ、突入!

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