一般国道253号
田澤トンネル旧道

第6部(完結編)
「古道の趣を残す道」

2024年4月20日 探索 2024年11月3日 公開

「古道の趣を残す道」

さて、この旧道もあと少し。目の前に現道が見えている。右側は田澤大橋。左側にその片鱗を見えているのは田沢スノーシェッドだ。そう、この旧道は田澤大橋と田沢スノーシェッドの間に接続されているのだ。現道はそれこそ一直線に山を貫き渋海川を渡り、旧道を合流した直後に田沢スノーシェッドで雪に護られながら、次の犬伏トンネルに入っていく。まさしく、山中の等高線通りに進む旧道、ここも災害国道だったことは想像に難しくない。よく今まで大きな災害に遭遇しなかったものだ…。この風景を見ながら、そう感じた。



さて、この画像は旧道に合流した後の直後にある田沢スノーシェッドだ。規則的に並んでいる巣のシェッドの天井を支える支柱が、幾何学的で面白い。おや、銘板がある。近づいて見てみよう。これを見れば、いつここにこのスノーシェッドが設置されたのがわかる。

チェンジ後の画像は、その銘板を撮影したものだ。事業主体は新潟県、竣工は1980年(昭和55年)3月。施工は柏崎市に本社がある植木組、今も盛業中である。それにしても、1980年と言えば昭和55年。西暦で聞くとつい最近のように聞こえるかもしれないが、実は今(2024年)から数えると44年前になる。よくよく考えると半世紀近いじゃないか!。…あっという間だなぁ。

これまで通ってきた旧道を振り返ってみる。この画像が、この道のすべてを物語っている気がする。現道当時は危険な道だっただろうし、それは今でもそうだろう。渋海川の侵食で造られたのかもしれない、緑多き擂鉢状の谷底を進む旧道。私が勝手に思っているだけかもしれないが、古き道には何となく味があるもので、ところどころで古道のような雰囲気を見せるこの道も現道時代には多くの人が行き交い、この地域の経済を支えたことだろう。未舗装だったころに砂埃を上げて行き交う車や自転車で通る人、歩く人、さまざまな交通の姿が目に浮かぶ。この道も全長は短かったが趣深かったし、いい道だった。



さて、今度は田澤大橋の親柱を確認してみよう。竣功は1974年(昭和49年)3月。田沢スノーシェッドの竣功よりも、おおよそ6年ほど前になるだろうか。今が2024年だから、今年で50周年じゃないか。何たる僥倖!、この橋の記念すべき年にこうして探索が出来てよかった。チェンジ後の画像はその反対側の親柱で、なんとも味のある書体(手書きを元にしてなのだろうが)で刻まれているので、今でも貫禄十分。今じゃこんな銘板を新しく付けられる橋も少なくなった。



田澤大橋のトンネル側の親柱を見てみる。そこには立派な字体で「一般国道二五三号線」と刻まれている。先ほどの反対側の親柱に竣工年月を刻んだ銘板があったが、その字体と同じだろう。橋と同じように、この古き銘板も永く後世に残ってほしいものだ。
チェンジ後の画像は、同じく現道を渡った先の親柱。…おや?、橋名表記が「田澤大橋」ではなく「田沢大橋」となっている。どちらが正しいんだろう?。

田澤大橋の親柱から田沢スノーシェッド方向を望んでみる。ここで大発見!。田澤大橋の橋台の擁壁が、なんと玉石積みの石垣ではないか!。でも、この田澤大橋が開通したのは1974年(昭和49年)。この当時ならコンクリートの橋台でもおかしくないはずだが、なんで玉石積みの石垣になっているんだろう?。

これを見ながら思いつくことを整理してみよう。橋台自体はコンクリート、その脇の擁壁が玉石積みの石垣。橋台と同時期に造られたのなら全てコンクリートで施工するだろうから、この擁壁だけが以前からここにあったことになる。だけど、この田澤大橋は田澤トンネルと一緒に開通しているから、最終的に考えられるのは…。
真夜中にレポートを書きながらこの石垣に気づいた私は、この画像をしばし眺めた後に、頭を抱えながらつぶやくことになるのだった。

しまった~!

旧道は現道に合流して終わりではなく、もしかしてスノーシェッドの外側を通っていたのでは?。ここから見る限りではそんなことはなさそうだが「そんなことない」って割には「実はそうでした」なんてことが多いのも、また事実。

う~ん、これは再訪せねばなるまい…。


さて、ここまでおよそ50年前に旧道化した道を辿ってきたが、実はここで終わりではない。
今回の探索は、さっき見えていた田沢スノーシェッドを通って次の旧道へ向かっている。
ここで、その旧道から見えた景色を少し紹介しよう。

坑口が突出していて、坑門全体が前にズレて壁のようになっている。このタイプの坑門は坑口直上から路面への落石や雪崩を防ぐには非常に有効なのだが、坑口が突出しているために想定外の大規模な落石や雪崩が起きた際に、坑道が崩れてしまう危険もあったりすると思うのだが。そして、このトンネルが田沢スノーシェッドを抜けたところにある、犬伏(いぬぶし)トンネルだ。ということは、私が今立っている場所は…そう!旧道上なのだ(早)。

ということで、話は次の犬伏トンネル旧道に進みます!。

一般国道253号
田澤トンネル旧道

完結。

一般国道253号 犬伏トンネル旧道へ