一般国道253号
田澤トンネル旧道
第4部
「削り取られた護岸」
2024年4月20日 探索 2024年10月24日 公開
削り取られた護岸
いや~、やべぇもの見つけちゃったなぁ。ここから見る限り、路面より高いところにあるあの穴は何だろう?。果たして人が通行できる穴だろうか。この際、一気に走って行きたいところなんだが、そうするとそこまでの途中の道がなおざりになりそうで、ここはひとつグッと堪えて、極力落ち着いたフリをして(誰に?)歩いていく。
落ち着いて手前の道を改めて眺めてみる。そうすると、なかなかに酷い状況と言うことがわかってきた。道の幅は半分になり、車1台がやっと通れる(それも軽自動車)ほどの1車線の道になってしまった。この1車線になった部分はかなりの距離にわたり、それほどまでに削り取ってしまった渋海川の流れが、いかに激しかったかわかろうというものだ。
左側の斜面に少し上がって、同じ場所を撮影してみる。対岸の崖の様子から渋海川、それに旧道の様子がよくわかる。これを見ると…やっぱり結構削れてしまっているが、ちゃんと擁壁を造って復旧させているあたり、この道がまだ現役であることを示している。…それにしても目立つな、あの穴(笑)。
旧道の脇にはガードレールもなく、山の斜面が川に落ちる場所に切り開かれた一本の道筋。この道は最初は県道、その後1963年(昭和38年)4月1日 に二級国道253号直江津六日町線(新潟県直江津市(現・上越市)~新潟県南魚沼郡六日町(現・南魚沼市))として指定された道。その後、60年近く経って旧道となった同じ道が、今の私の目の前に存在する。時間の経過によって姿は多少変わるものの、正味そのままの姿だ。
この美しい景色を見ながら、あの穴に近づいていきましょう。
左側のなだらかになっている斜面は残雪だろうか。もっとも、その表面は木屑草屑などを纏ってカモフラージュしているようだが、私の目は誤魔化せないぞ。その真下の路面が水たまりになって泥濘んでいるところを見ても、この斜面は残雪だろう。いよいよ、先に見えている問題の穴に近づくが…いやぁ、そそられる穴だなぁ。でも…穴の位置まで上がれるか?。それに穴の近くに斜めに道と繋がっている構造物が。あれは何だろう?。近づいて確認してみる前に、斜面の状態も見ておこうか。
なだらかな斜面を見てみると…やっぱり残雪がカモフラージュしたものだった。それに…おおっ!クラックじゃないか!
まだそんなに不安定にはなってないようだが、逆にいつ滑り落ちるかもわからないだろう。こんな時に私には思い出す言葉がある。「君子、危うきに近寄らず」。とは言うものの、もう既に近づいてしまっているので、あまり説得力はないが…。ひとまず、ここから退散することにしよう。さ、トンネルトンネルっと…(笑)。
トンネルの直下までやってきた。ふーむ…遠くから見ていた時に気になっていた、坑口に繋がっている斜めの構造物。これは…水を逃がす導水路じゃないだろうか。とすると、このトンネルの正体は水路トンネルか。それを確かめるためにこの斜面を這い上がろうと取り付いたが、この斜面の土が非常に脆くて足を掛けるとすぐに崩れてしまい、何度もチャレンジしたが這い上がれなかった。おまけに取りついて上るには急角度。安全に上るには梯子が欲しいところだ。
ん~…何とかして中を確認したいもんだが…
ただ、水が流れなくなった左側の側溝の代わりにこの導水路が造られたと思うので、やっぱり水路トンネルなのかな。ただ、入り口があれば当然出口があるわけで、このトンネルの掘られた大きさや角度を考えると、少なくともこの旧道のどこかに出口があるとは考えない方が良さそうだ。たぶん山を貫いているだろうから、そうなると全長も結構な距離になる。この山を貫くということになると、もしかして次の旧道の入口辺りが…?。いやいや、それは現地の確認が取れてからにしよう。
トンネルの中が非常に気になるが、上れないものは仕方ないし、突っ込んでいくには全長が長すぎるとして旧道に戻り、先に進むことにしたのだが、どうも後ろ髪を引かれてしまう私だ。旧道に戻ると、雪解けの水と用水路の水だろうか、路面にあふれ出して流れている。そのおかげで路面が洗われ、ここだけは現役当時のアスファルトが顔を覗かせていた。その先、大きく張り出した山肌を避けると、その先に見えるのは現道の田澤大橋だ。
ちょいと短めの今回の探索。だけど、この探索が次につながり、やがて呆れるほど長い旧道の探索に繋がっていく。「すべての道はローマに通ず」と言ったのは17世紀のローマの詩人、ラ・フォンテーヌだったか。この景色を見ながら、そんなことを思っていた。
トンネルがどこにつながるか
その謎を抱えつつ、次回へ!