一般国道253号
田澤トンネル旧道
第3部
「自然に抗う旧道」
2024年4月20日 探索 2024年10月19日 公開
自然に抗う旧道
渋海川沿いの、旧道の雰囲気あふれる木陰で一息ついて先の方を見てみる。これまで非常に歩きやすく快適な探索だったのだが、ここからいよいよ本領発揮か?と思わせるようなものが道の上に広がっていた。さーて、あれは土か、それとも土を被った雪か。どっちにしても、一歩間違えると渋海川に一直線、なんてこともありうるから、気を付けないといけんね。
そう思いながら、やや温くなったジャスミンティーをまるで生唾を飲むように喉をゴクリと鳴らして一口飲む。
顔の汗を拭いながら「それにしても、これは昔ながらの道筋だなぁ…」とつぶやく。
一車線しかない道だけど、もしかして昔はボンネットバスが走っていたかもしれない。目を閉じると、そのボンネットバスが走っている風景が瞼に広がる。絵になるなぁ。
さて、先に進もう。…と、目の前に広がっているのは土か雪か。立ち止まって、じーっと眺めてみる。…こりゃぁたぶん雪だな。まだ溶け切っていない最後の雪が斜面を滑り落ちてきたようだ。斜面の上には残った雪はないようだが、滑り落ちてきたであろう沢らしきところには、まだ完全に落ちていない雪塊がウロコ状になって自らが落ちるタイミングを伺っているかのように見える。ここは早めに通り抜けた方がよさそうだな。
路面を見てみると、ここまではダブルトラックがハッキリと残っているものの、この雪が流れ込んでいる場所だけ消えている。もう少し暖かくなって雪が完全に消えると、また車の交通が戻るだろうか。おや?この先にもう一か所崩れているところが。…ありゃりゃ?。
うおっ!
ありゃ~…これも雪だな。滑りそうな雪じゃなさそうだけど、早めに通り過ぎることにするか。それにしても、その上の崖の岩肌の風合はどうだ。私は石や断層などの類はからきしダメで全くわからないんだけど、色白の岩肌は実に美しい。それはわかる。
この十日町近辺には確か断層帯があった。それが何か関係あるのだろうか(作者注…家に帰ってから調べてみると、確かに十日町断層帯という断層帯があったが、それはここから少し離れている。でも、なにがしかの影響はあるのかもしれない)。こうしてみると、綺麗に斜めに線(と言う表現でいいかどうかはわからないが)が入っているし。それにこの谷状の地形も、渋海川の浸食で生まれたものだろう。そんなことを思いながらこの斜面を見上げると、悠久の時の流れをひしひしと感じる。
途中で、これまで来た道を振り返って見てみた。最初に通った時にはわからなかったが、この道の脇の空き地は何だろう?。現道時代に公園でもあったのだろうか。縁石に側溝が残るこの旧道は、少し整備すれば今でも立派に道として機能しそうで、観光資源としても使えるんじゃないかと勝手に思ってしまう。その途中にこの広場を利用した公園。このくらいの広さなら遊具を設置しても十分に遊べそうだし。
目を閉じて耳を澄ませば、賑やかな子供たちの声が聞こえてきそうだ。
少し先に進んで山側の斜面を見ると、このように切れ込んだ沢を見つける。これは常時水が流れているわけではなくて、雪解けの時季だけこうして沢になるようだ。上って見てみようかと斜面に取り付いてみたものの、この辺りの土の質はとてもサラサラとしていて脆く、荷重をかけるとすぐに崩れてしまう。無理して上がって、降りるときに困りましたなんてのも困ってしまうし、ここは断念しておこう。
だが、崩れやすい地質だけに、現道時代はここも災害国道だったんだろうなぁという気がする。もっともこういう旧道は、そのほとんどが災害か線形不良によって局地改良で現道に切り替えられるので、どうしても災害と隣り合わせになってしまうんだけど。そして、ここを後にして先を見ると…
そこには災害の爪痕がしっかり残されていた。渋海川の護岸が抉り取られ、道幅が極端に狭くなっている。目の前には土嚢、その先にはおよそ半分の道幅にして復旧させてある場所。大雨で渋海川が暴れて、この部分の岸を削り取ってしまったに違いない。でも、道の半分でも復旧させてあるところは非常に嬉しいじゃないか。この道を管理する十日町市(たぶん)の気概を感じられる。
さて、この旧道はそんなに長くないから、もう半分は来ているだろう。あと半分だな…おや?!。
この穴はなんだ?!
あちゃー、やべぇもの見つけちゃったよ…(笑)