一般国道253号
田澤トンネル旧道
第1部
「滑り落ちた斜面」
2024年4月20日 探索 2024年10月9日 公開
滑り落ちた斜面

さて、楽しい探索の始まりだ。私の自宅がある新潟市を出発するときは泣き出しそうだった空も、今は若干回復して薄曇りになっている。それにしても…ここに立ってあたりの景色を見て恐ろしくなった。なぜかって?。ここは一般国道253号、元は二級国道だけど、それにしても仮にも国道だ。にも関わらず、この山側の雄大な斜面はどうだ!。
と思ったが…う~ん、なんか違うな。この斜面自体は安定しているようではあるけど、私がいる手前側と、その先の斜面の様子とでは余りにも違いすぎるし、何か違和感も感じる。もう少し詳しく見てみよう。

斜面全体が鮮やかな春の緑に覆われて美しいが、斜面の角度は相当なものがあることがわかっていただけると思う。今はまだ初夏だけに下草も少なくて、ちらほら見える灌木の枝も芽吹くだけで葉っぱもないが、もう少ししたらその灌木にも葉が出てきて、もう少しにぎやかになるのかもしれない。それにしても、よくこんなところに道を通したもんだ。右隅にわずかに見えるダブルトラックの道。これが探索する旧道だが、その更に右側は蛇行する渋海川。現道時代は道幅が狭く、大変だっただろうなぁ。
ところで、この画像をあらためて見て、さっきの疑問が確証に変わった。
斜面の上の様子と、その下の様子を見れば見るほど、ここが過去に崩れてしまっていることがわかる。斜面の上の木が生えている場所、そこがおそらくもともとの地面だが、そこから下に滑るような動きでズレてしまったと思われる。

改めて視線を道路に戻してじっくり見てみると、やっぱりこの周辺は過去に斜面が滑り落ちたらしい。山側にはコンクリート柱で組み上げられた擁壁、川側にはコンクリートパネルで仕上げられた、これまた擁壁がある。ここだけ道幅が狭くなっているし、コンクリート柱で組まれた擁壁がこの斜面を支えているように見えるし、これは実際にそうだろう。となると、間違いなくこの斜面は過去に大規模に滑り落ちた痕跡だ。原因は中越地震か中越沖地震だろうか。
道は人や物、文化や歴史だけではなく、心も繋げる。自然に抗ってもなお、ここに存在し続ける旧道と、崩れて通れなくなってもそれを復旧して、道を護り戦い続ける人たち。その苦労を思うと、思わず頭が下がる。今はこんなに綺麗な道、いつまでも残ってほしいものだ。

人工的な川岸の擁壁さえ、時間の経過と共に自然の風景の一コマになっていく。ということを感じさせてくれる風景だ。反対側の川岸には溶け残った雪、山々の間の狭い谷間を縫うように進む渋海川、その川岸を傷つきながら今も交通を通す道。この道の少し先の川岸に針葉樹(杉かな?)が見えるが、ここも斜面が崩れる前は川岸に杉が並んでいたのかも。その風光明媚な景色が目の前に浮かぶ。それは街中では絶対に出会うことのない景色だ。

さて、探索はまだ始まったばかり。その証拠に、今の私が立っているところから振り返ると、この通り。目の前に見える赤い橋。これは現道。ということは、見切れている左側は田澤トンネルの坑口ということになる。そしてこれが一番現地で感激したのだが、橋の向こうの渋海川の川岸には桜が見える。あれは山桜だろうか。…などと、呑気に時間を過ごしている場合じゃない。ここで驚愕の事実が判明することになる!。
それは、スタートしてからここまで優に1時間近く経過しているにも関わらず、さっぱり進んでないやないか!。…いかん、多少ペースを上げなくては。

過去に崩れた山側の斜面の場所を過ぎてのんびりと歩いていくと、道は一部分だけアスファルトが復活して、川岸にも針葉樹が茂っている場所を見つける。まるで「ここで休んでください」と言わんばかりの場所。今いるこの場所でも十分に涼しいが、折角なのでお言葉に甘えることにしよう(←まだ探索始まったばっかりじゃん)。
過去に崩れてしまった、滑った斜面を目の前にして少し興奮してしまっただろうか。
休憩するにはものすごく早いような気もするが、ここは少しクールダウンして、この先の旧道を楽しんでいこう!。