一般国道253号
田澤トンネル旧道
2024年4月20日 探索 2024年10月4日 公開
蛇行する川、傍を通る道
最近、新潟県から離れて山形県鶴岡市近郊のレポートをお送りしてきたが、今回は新潟県に戻ってのレポートだ。とはいえ探索を行ったのはこちらの方が先で、もっと言うなら2024年初めての探索がここだった。その場所は新潟県十日町市松代(とうかまちし まつだい)。
もともとは新潟県東頚城郡(ひがしくびきぐん)松代町。新潟県南部の東頚城郡の中でも更に東の端に位置していた町で、2005年4月1日に十日町市、および東頸城郡松之山町(まつのやままち)、中魚沼郡川西町(かわにしまち)・中里村(なかざとむら)と合併して新設の十日町市となったため消滅した。
その松代町の名物と言えば、松代そば。寒暖差が激しいこの地域に育つ良質のそば粉を使っていて、コシと喉ごしが特徴。つなぎに海藻ふのりを使用している「へぎそば」も非常においしく、そば好きの私としてはたまらないところでもあるのだ。
今回はそんな松代町に存在する旧道を紹介したい。とは言っても、私が探索するのは取っつきやすくて比較的安全に行ける旧道と言うことで、その旧道がどこにあるのか早速確認してみよう。おなじみ地理院地図である。
この地図上を左右に貫くのが一般国道253号。起点の日本海側の上越市の三ツ屋交差点で、そこから東に進んで中越地方の十日町市を経由、終点は南魚沼市六日町の美佐島交差点に至る路線。経路の途中で通過する頸城平野や十日町盆地を除けば東頸城(ひがしくびき)丘陵や魚沼(うおぬま)丘陵などの山間部を通過する、アップダウンに富んだコースを辿っている。総延長は68.2キロで、道としての歴史はなかなか旧く、1963年(昭和38年)4月1日に二級国道253号直江津六日町線として指定、その後1965年(昭和40年)4月1日、一般国道253号となる。この地図では「田澤下トンネル」となっているが、正しい名称は「田澤トンネル」。この田澤トンネルを迂回する形で一本線の道が見えると思うが、これが国道253号の開通当時の本来の道である。道の表記が一本線であることから、今は自動車の交通が出来るかどうか(たぶん出来ないだろうとは思うけど)といったところだろう。距離は短いが、渋海川(しぶみがわ)沿いに沿って進むことから、景色はなかなかのものが望めそうだ。
この区間は地図を見てもわかる通り渋海川が蛇行していて、国道253号はその渋海川に沿って進んでいたため、道幅が狭いうえに崖崩れなどの災害も多発していたのだろう。そこで局所改良で田澤トンネルと隣の犬伏(いぬぶし)トンネル、加えて4本の橋でブチ抜いて直線路にした、ということのようだ。
さて、それでは早速現地に行ってみよう!。
私は今回、松代の中心地側からこの旧道の分岐点に到着した。
ということで現地。緩いカーブで垂直に川にアプローチして渋海川を橋で越え、その先に田澤トンネルの坑口が見える。更にその先を見てみると出口の光が見えてることから、トンネルは真っ直ぐ一直線に貫いていることがわかる。ここまで真っ直ぐだと、見ていても非常に気持ちいいもんだ。
それに対して旧道は川に沿うように左カーブで進んでいる。この道の配置、いかにも「あたしゃ旧道だよ」と言わんばかりで、地図を見て線形はわかっていたものの、現地で実際の風景を見て思わずニヤリとしてしまった。
角度を変えて、もう一枚。今度は旧道の方を向いて撮影してみた。入ったすぐ先の左側の空き地を今回の探索のベースとして車を停める。当日は薄曇りの空だったがやや蒸し暑くて、この日陰のベース地点は助かった。探索から戻ってきても、車の中が暑いなんてことはなさそうだ。それにしても、渋海川沿いに両岸とも木が植えられているおかげで、非常に穏やかな道の風景となった。今は街中に植えられている木々は枝が電線に引っかかったり、カラスやハトなどの住処になってしまうということから伐採されてしまうケースが多いが、こうしてみるとやはり並木道というのは絵になる。
今度は松代側を向いて撮影。右側に見える青い看板は「一級河川 渋海川」の看板だ。ややくたびれているが、これは冬の除雪のせいだろう。ここで「おや?」と思った方は鋭い。「渋海川は先ほどの並木道の傍らに流れていて、さっき渡ったばかりじゃないか?」と思うだろう。それも正解だ。実はこの川、先ほどの橋から180度流路を変えて、ここでまた253号が渡っているのだ。しかも、この画像では見えないので上の地図を見て頂くとわかるが、この先でもう一度同じ川を渡っている。このように253号は、わずか1.6キロ(地図上で計測)の間に6回も渋海川を渡っているのだから、渋海川の蛇行の程度がわかろうというものだ。雨などで増水した際は大丈夫なんかなと思わず心配してしまう。だからこそ、トンネルと橋で直線的に貫いたんだろうな。
さてと、車に戻って支度を整える。暑いがやっぱりここはヘルメット、必要器材(カメラ器材やロープ、ナタなど)を入れたリュック、川の手袋、長靴などいつもの装備で固める。この方が安心だもんね。旧道の先を見ると路面にダブルトラックが見えるから、一応車の通行はあるようだが…その先はわからない。とかく旧道は入口は平穏なように見えても、その先は路盤が消失していました!とか、激ヤブでした!なんてことが結構ある、あたしゃだまされないぞ(笑)。
さぁて、準備も出来たことだし…行こうかな
探索開始!
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