新潟県一般県道513号
中ノ沢内川線の短い旧道
2018年8月2日 探索・2019年2月4日 公開
その日、私はある道を探していた。
その名は「茅峠」。この峠は古くから阿賀町(旧三川村)の地図に記載されており、昔から集落と集落を結ぶ重要な道だったということが伺われたのだが、最近の地図では名前が消え、道だけになっていた。しかも、現代の地図で言うところの点線の道になっていたのである。言うまでもなく、この峠道は私は一度も通ったことはないし、その名前がなぜこの道に付けられたのかも、私にはわからない。それでも、なぜかこの道は気になった。
こうなると私の悪い癖で、すぐに対象を調べようとする。謎を追いかけようとする。
と言うことで私はこの茅峠に調査に向かったのだが、今回紹介する道はその際にたまたま発見した、県道の旧道である。いや、旧道と言うには短すぎるかも知れない。なにせ、わずか百メートル程度しかないのだから。
でも私には、そのわずか数百メートルが思い出に残った。今回は、その旧道を紹介したい。
場所は新潟県東蒲原郡阿賀町。
国道49号から分岐して山中の集落の中ノ沢(ここには中ノ沢森林公園と言う公園がある)とを結ぶ、新潟県一般県道513号。この県道513号は3桁県道だけあって結構道幅が狭かったりするのだが、まずはそれを見て頂こう。
なんて素敵な表示板だ!(笑)
この印象的な表示板をよ~く読むと「落石及び川底転落に注意して通行のこと」とある。
ここから見ると、川底転落に注意して…とある割には、路肩にガードレールも縁石も、全くと言っていいほど何もないのがまたいい!。実に素敵だ(笑)
おまけに左の標識は「路肩注意」と表示がありながら、イラストの車は既に路肩から外れてしまっており、転落寸前じゃないか(笑)
道幅は狭路県道のチャンピオン、県道506号には勝てないまでも、なかなかの狭さが非常に頼もしいヤツ。
こいつは意外と楽しめそうな県道かもしれない。
この狭さ!いい道だ!(笑)
しかし、転落はしないように気を付けないといけない。もし転落したら遭難必至である。この道幅ではチャリンコでも対向車が来たら離合は神経を使うなぁ…来ないことを祈ろう。
この道幅と正対した時に、思わず県道506号に感謝した。あの、ものすごく狭い県道506号を最初に通っていたおかげで、今この道に出会ってもさほど動揺しなくて済んだから。これを書いている今は雪の中だろうが、雪が融けたらお礼も兼ねて506号に会いに行こうか(笑)。ところで、ここを探索した際は夏だったが、御覧のように木々の緑が非常に美しい。紅葉の時期に訪れるときれいだろうなぁ。
この道は見ての通り左側に中ノ沢川が流れており、県道はその川に沿って中ノ沢集落を目指している。その道を進んでいくと、左後方に道が分岐する地点を見つけた。思わず通り過ぎるところだったが、道の雰囲気からすると、現道の川沿いを進む旧道のようだ。どうやら、手前にある最初の左分岐を見逃したようである。見つけたからには入ってみなきゃ。実はさほど期待しないで探索を開始したのだが…
うん!美しい!
撮影時期は夏で、撮影時間は14時ころ。良い具合に太陽が傾いて木々の緑にあたり、柔らかな木漏れ日が手入れがされていない古めかしいアスファルトを照らして、その反射光でより一層緑が輝く、私の一番好きな時間帯。この道のカーブの具合がいい。道は中ノ沢川をトレースするように進んでおり、やはり旧道のようだ。ゆっくりと進んでみる。
おお、いいじゃないか!
ふと左を見ると、草に埋もれた中に石垣を見つけた。玉石で規則的に積み上げてあるのが美しい。間瀬隧道や中永隧道の側壁のような石垣も好みだが、山中や旧道でこういった草に埋もれた石垣を見つけるとつい嬉しくなって、石垣の周辺をウロウロしながらじっくりと観察してしまう。
石垣を抜けると、このような木立の中を進む道に変わる。辺りには鳥のさえずりが聞こえ、時折川のせせらぎも聞こえてきたりして、なかなか楽しい。不思議とアブはほとんどいなかった。足元は道幅こそ狭くなっているもののアスファルトが生きており、チャリンコには何の支障もなく進めるので、これは非常にありがたい。
いいねぇ!
明るい陽射しが降り注ぐ旧道に、玉石の石垣。思いっきり深呼吸したい気分だ。取材時の季節は8月だが、不思議とここは暑くなかったことを覚えている。恐らくだが、木陰と隣を流れる川の水が空気を冷やしていたのだろう。
こういう道でチャリンコを走らせていると、非常に気持ちいい。ここはのんびりと走るべきだろう。左側に見える、道路を彩り続ける丸石の石垣の美しさがよくわかっていただけると思う。現道を走る車の音が、近くに聞こえてくる。私が最初に見逃した入口が近づいているようだ。ゴールはもうすぐだ。
この直後に現道に合流したのだが、この道があまりにも名残惜しくて、実はもう一度引き返した。
これは引き返した時に撮影した画像。さっきと光の当たり方が違うので、同じ場所でも新鮮に見える。なので、先ほど止まった場所でまた止まって、同じように眺めてしまった(笑)
ここが最初に旧道に入った、入口の風景。この先が現道である。この道は距離自体は100m程度しかない旧道だが、短くても非常に満足することが出来る旧道があることを私に教えてくれた。そして、太陽に照らされて緑が輝く季節の旧道の風景は、やはり美しい。
そのことを改めて実感させてくれた道は…
新潟県一般県道513号
中ノ沢内川線の短い旧道
完結。