新潟県一般県道480号
山中上野線 第8部
「国道の貫禄」
2024年9月28日 探索 2025年2月21日 公開
国道の貫禄

地すべり地帯から少し進むと、そこに残っていたのはガードロープのエンドだった。自宅に帰ってから調べたところ、山中トンネルが開通したのは1972年(昭和47年)11月28日だから、この道が旧道化したのは2025年現在、およそ53年前と言うことになる。ちなみに私は昭和46年(1971年)製造(←そんなことはどうでもいい(笑))なので、何となく親近感を覚えてしまったのはナイショだ。森の中を走る道は、こうして見ると今でも現役のように見えるし、県道として今でも立派に機能している(と思われる。入口にバリケードはあったけどね)ようだ。どんな形になっても、道として機能している限りは道好きとしては非常に嬉しい。

のんびりと自転車を押して進んでいると(乗っていないのが、いかにも私らしいとも言える(笑))、擦れた路側帯の白線に、草が侵食していて舗装がひび割れ、少し(かなり?)汚れはじめた路面。「廃」の雰囲気がプンプンする良い道だ。道の左側は鬱蒼とした自然豊かな森になっていて、今にも自然生物が出てきそうな雰囲気だ。もしここからヌッとクマさんが出てきたら…それはあまり考えたくはない。複数人が放送しているラジオ番組を録音して、結構な音量で鳴らしながら歩いてはいるんだけど、念のためウエストバッグから8連発の火薬を使うおもちゃのピストルを取り出して、一発鳴らしておく。

前回の画像の地点から左カーブを過ぎていくと、このような道の風景が。実に素敵な風景。路面の中央には黄色のセンターラインがくっきりと残り、これまでのこの道の風景の中で、山中集落の中の道を覗くと、過去の栄華を最も色濃く残している区間ではないだろうか。今は周囲の木々が張り出してきて、多少薄暗い道の風景になっているが、50年前の現役当時は木々もまだ背が高くなくて、とても明るい道だっただろう。こんな素敵な道の周囲を何かないかとキョロキョロ見回しながら、先へ進んでいく。

道が下り坂になる。自転車を押していても自然に下がって行ってくれるので楽だが、早足になりすぎて見落としがないように気をつけながら、自転車には乗らずに押して下っていく。どうやら小さい峠を越えたようだ。道の路肩には枯葉で埋まりつつある側溝があって、小さい切り通しになっている道は道幅も非常に広く、ここが国道だった時代の貫禄を私にヒシヒシと感じさせてくれる。おまけに路面のアスファルト舗装に、何やら線のようなものが見える。もしかして何か埋設されているんだろうか。

前の地点の前方にあった左カーブを過ぎると、そこには雄大な景色が。山の斜面に沿うように、今度は緩やかな右カーブで進む道に切り開かれた森。こんな素晴らしい道の風景を誰の目にも触れさせずに静かに眠らせておくとは、非常にもったいない気がする。おまけに道の左側には、おそらく国道時代に施工されたであろう、コンクリートでガッチリと固められた強固な擁壁。アスファルトの継ぎ目には草が生えているが、これも旧道や廃道あるあるの姿でもある。いい景色だ。

擁壁に寄り添って、道の先の風景を見てみる。路面には先ほどまで見られた下草の姿も見当たらず、道としてさしたる支障はないように見える。ちょっと水分補給しようかと思って、リュックから麦茶を取り出して一息つく。木々の間を一瞬冷たい風が吹き抜けて、汗ばんだ体に気持ちいい。冷たい空気は雨を予想させるが、見上げた空は薄曇りの白い空なので、雨に見舞われることはなさそうだ。麦茶を飲みながらコンクリートの擁壁を眺めていると、この道を通り過ぎて行った旅人や自転車、車や荷車の姿が眼前に見えるようだ。この道、眠らせておくには非常にもったいない。そう思う。
現役の県道ではあるものの、
落石注意のA型バリケードで封鎖された道。
普段見ることが出来ない道の風景を目の当たりにして感激しつつ、
自然動物の姿に怯えながら森の中を進んでいく。