新潟県一般県道480号
山中上野線
 第7部
「ひび割れたアスファルト」

2024年9月28日 探索 2025年2月16日 公開

ひび割れたアスファルト

天空の三差路の手前に、このような道の分岐があった。今回はまずはここから見てみよう。この道は山中集落の手前から山側に分岐して、山中集落の山側を通っている。地図を見てみるとその途中には建物の記号もあれば広葉樹林の記号もあることから、現道の旧道と言う捉え方も出来そうだ。道自体はこのように農道といった雰囲気ではあるものの、この道も非常に興味深い。この県道には国道時代からも含めて数多くの旧道がありそうで、これはやはり再訪して探索せねばなるまい。

天空の三差路から、まずは辺りを見回してみる。これは私が辿ってきた県道から右へ向かう道。さほど交通量もないのか、舗装はしてあるものの簡易舗装と言った雰囲気だが、路面がさほど荒れてないせいか通行するのに問題はなさそうな印象だ。この舗装路の先は旧旧道に繋がっているはずで、この道は来年の春に雪が消えたころに探索予定だ。私が今回進む道は、ここから左に進む道。その方向を見てみると…!。

うん、素敵だ!(笑)

私の行く手を塞ぐ「落石注意」のバリケード。しかしよく見てみると、塞いでいるように見えて実は塞いでないと言うラブリーさがたまらない(笑)。アスファルトはクモの巣のようにひび割れて、長年再舗装されていないことがよくわかる。右に向かう道は先ほどの林道で、その舗装の境界線はくっきりとしていて舗装された年代の差がわかる。私が進もうとしている道は「落石注意」とはあるが「通行止」とは表示されてないので、ここは遠慮なく進入していくことにしよう。この先に仙田隧道があるはずだ。

さぁ、仙田隧道を目指して進んでいこう。この先、この県道は薬師岳に向かっていくはずで、その途中の景色も非常に楽しみだ。今はその導入部分と言ったところか、下枝が丁寧に伐採された針葉樹(杉)が整然と立ち並ぶ美しい並木道が見える。その道幅はこういった道のご多分に漏れず細いが、これは路肩に下草がはみ出してきているからで、元の道幅は2車線の幅はありそうだ。路面は経年劣化はあるものの酷く荒れているとは言えず、もしかすると今でもいくらかの通行はあるのかもしれない。

下草のおかげで道幅が細くなっている区間はさほど長くは続かず、少し進むとこんなに素敵な道の風景が広がる。こんな山中の道だと一見するとどこに行っても同じような道に見えるが、実はそれぞれの県によって微妙に雰囲気が違ってくるのが面白い。「ところ変われば品変わる」と諺にあるが、まさしくその通り。地味に路面に見える苔に足を取られないように気をつけて、歩みを進めていく。

ところで、こういった道にガードレールなどの路肩防護施設がないのは新潟県だけではなく、どうやら全国共通らしい。交通量が少ないからなのか、それとも夜にこんなところを車で走る人も極端に少ないからなのか、その理由はわからないが、山形県でも群馬県でも福岡県でも大阪府でもなかったような気がする。確かにねぇ…さほど交通量がないところに基礎工事や法面工事を行ってガードレールなどの路肩防護施設を設置しても、費用対効果が見込めないからなのかもしれない。

山側にこのような場所を見つける。これはいったい…?。旧道の合流地点なら谷側にあるはずで、山側には合流点はないはずだ。すると、これは過去の地すべりの跡なのか。そうだとすると、こりゃ大規模な地滑りだなぁ。こうして立ち止まって見上げると、その迫力に圧倒されてしまう。自然の力は実に偉大で、我々人間はやはり叶わんと実感する。と言うことは、谷側にも地すべりの跡はあるはずだが、と思って反対側を見ると…

あったあった。これまで自然な形の路肩が続いていたが、ここだけ路肩がコンクリートで施工されていて、デリニエータも設置されている。どうやらここは道も路盤も含めて一気に滑り落ちたようで、路肩のコンクリートはその際に施工されたものだ。やはりこの付近は古くからの地すべり地帯のようで、この道も国道だった時代には災害国道で、冬季通行止めはもちろん崖崩れや地すべりなどでの通行止めも頻発していたことだろう。やはり現道の山中トンネルは、造られるべくして造られたとも言える。それによって、高柳町の岡野町から十日町市の中仙田までの交通が劇的に良くなったのは想像に難しくない。やはり、道はその地域の利便性のみならず、物流や文化までも影響を及ぼす大切な存在と言うことが実感できる。

道は仙田隧道を目指してさらに進む。
言わば「天空の隧道」と表現すべき隧道はどんな隧道か。
自転車を押しながら(笑)進んでいく

第8部
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