新潟県一般県道480号
山中上野線 第6部
「天空の三差路」
2024年9月28日 探索 2025年2月11日 公開
天空の三差路

山中集落を過ぎた旧道は、また狭い険道の趣に変わる。ここは1車線の幅しかなく、これがこの道の本来の姿だろう。雰囲気からすると、いかにも長い歴史があるようにも思えるから、帰ってから旧版地形図で調べてみることにして、ここをどんな人達が行き交ったんだろうと思いながら周囲を見回してみる。右に杉並木、左に杉も含めた雑木林が広がる山中を、この先に存在するであろう小さな峠に向かって進んでいくのだが、その先の交差点から仙田隧道に向かう道筋が分岐していることが地図上からわかっている。その峠まで、あと少し。のんびりと自転車のペダルを漕ぎながら進んでいく。

進んでいくと、それまで狭かった道筋が更に狭くなり、左右の草の張り出しも多くなってきた。こうして立ち止まって眺めていると、ただの農道である。あたりには田圃も何もないので、おそらくこの先に農耕地があって、そこへの行き来のためにこの道が使われていると考えたが、よくよく考えてみるとここは県道なので、何かの理由で残っているのだろうと思うが…それにしても、県道標識の一本くらい欲しいと思うのは私だけだろうか。この道に入ってから県道標識を一本も見ていないので、果たしてここが県道なのか?と自信がなくなってくるが…間違いないだろう、たぶん。

空が近くなってきた。おそらく峠が近い。相変わらず、車1台しか通れないような狭い道が峠を目指して進んでいる。左側には何やら開けた平地があった。様子からするとおそらく休耕地で、こんな標高の高い場所まで農作業に来られていた方がいたんだなぁと思うと、その大変さに頭が下がる思いだ。この左側の平地は結構な広さがあるので、田圃ではなかったかと思ったりして眺めていた(峠を下りた際に地理院地図で調べてみると、この周辺はやはりと言うか、田圃の記号が記されていた)。こんな標高の高いところで作られたコメはどんな味がするのだろうか。言わば「天空の米」とも言える米、一度食べてみたかった。

道の勾配が急に厳しくなり、峠が近いことを教えてくれる。…と思ったら、目の前に現れたのがこの風景。いかにも「峠です」と言った、いい感じの道じゃないの。ただ…道の雰囲気からして古くからある道ではないような気がしてきた。どうも、この道は奥が深そうだ。右側の路肩には、今は草で覆われているものの側溝の姿も見えたりして、旧道の雰囲気が満載の道だ。目の前に見える峠を過ぎれば仙田隧道への道が開けるはず。少し胸が高鳴るのを感じながら自転車を…押して進んでいく。

さて、あと少しだ。山肌を綺麗に開削したこの切り通しは局所改良のような切り通しのやり方で、やはり後世の物のような気がする。すると、この道の旧道はやはり松代岡野町線から分岐していたあの道と言うことになる。これは来年春にもう一度再訪しなくてはなるまい。その際には旧旧道を探索して、この道の全貌を見てみたい。その際はクマが出ませんように。
さぁ、いよいよ峠が近い。分岐点がどんな感じになっているのか。通れるのか、封鎖されているのか、それも気がかりなところだが、今ひとまず降り積もった落ち葉で路面が非常に滑りやすい。多少コケなども生えているのか、つるつる滑って仕方ない。こんなところで転んでケガしてはシャレにならないので、気をつけて進むことにしよう。

きたぞ!分岐点!
美しい切り通しの峠道を抜けると三差路に到着した。ここは「頂上」とまでは行かないが、それなりに標高は高くて、私がこの三差路に付けた名前が「天空の三差路」。標高280メートルくらいはあるだろうか。ここから左に向かう道が県道だが、そこにはバリケードがある。一瞬「通行止」かと思ったが、よく見てみると「落石注意」だった。右に向かう道は近年に開削された林道のようでアスファルトで舗装されているが、その舗装はまださほど傷んでおらず、通りやすいようだ。ちなみにこの道はこちらの地理院地図を見てみるとお分かりいただけると思うが、旧旧道の途中に繋がっている。私が向かうのは右の道 左の道。まずは仙田隧道を目指そう!。
(初出は「右の道」の表記になっていましたが、正しくは「左の道」です。訂正してお詫びいたします)