新潟県一般県道480号
山中上野線
 第5部
「草と苔に覆われて」

2024年9月28日 探索 2025年2月6日 公開

草と苔に覆われて

前回の最後で私が一気に元気を取り戻した立役者、それがこの石垣だ。残暑の暑い空気の中、自転車を押しながら峠道を登っている中年のオジサンが元気を取り戻すと言ったら。やっぱりこれしかないだろう!(←そんなことはない(笑))。てことで、じっくり見てみよう。

丸石を積み上げた石垣。しかも空積み。こりゃあ年季が入った代物と見た。この道が開通した当時からここにいるであろうこの石垣、私なんぞよりも大先輩だろうから、敬意を払いつつ接していかないといけないだろう。石垣の表面を見てみると、草や苔などがびっしりと生えて遥かな時間を感じさせてくれる、逸品の仕上がりになっている。やっぱり道路構造物は良いよねぇ…たまりません(笑)。

この石垣は、実は山側の道路脇にある一段高くなった住居用地のために造られたもの。従ってこの家の敷地に入る私道沿いも実にいい雰囲気を醸し出していて、このように見事な石垣になっている。…こんな石垣に囲まれて日々を過ごせるんだったら、実に素敵で幸せなことじゃないか!と私なんかは思ってしまう。大小様々な大きさで組み合わされた石垣、実にいい。

ところで、この私道のように落葉と苔が覆う道は、見方によっては一見すると廃道のようで、そこにも滅びていく美しさのようなものを感じてしまって、つい追いかけてしまいたくなるのだが…ここは私道なのでやめておいた。でも、見たかったなぁ。

ひとしきり石垣を愛でることが出来たので(一部心残りもあったが)、また旧道に戻って探索を続けていくことにしよう。こうして辿っていく道筋の画像は、その探索当時に撮影したもので間違いはない。但し、再度訪れた時に同じ景色が見れるかと言うと、私は「見れないと思う」と答えることにしている。見る角度や時間、わずかな季節のズレでさえも、そこに目に見える景色に変化があるからだ。何気ない景色でも見る人によって感じるものが違い、それがキーになっていろんなことを思い出すきっかけになって頂ければ、実に嬉しい。

話を道に戻そう。旧道でよく見かける、クモの巣のようにひび割れが走っているアスファルトの路面。昔はそれとなく、よく見かけたもののように思うが、今ではさほど見かけないこの路面の模様に懐かしさを覚える。その道は集落を抜けて、また山の中に突っ込んで行く。

角度を変えて集落の一部を撮影してみた。右側の家の脇を旧道は走っていて、家々の下には川を挟んで田圃。その田園の畦道には携帯電話のアンテナが立っている。こうして眺めていると、実にうまい具合に家々を立てているもんだと感心する。田圃は段々になっていて、秋にはこの山間の急傾斜地が黄金色に染まることだろう。それはきっと、とても綺麗な風景になるに違いない。

道の脇にこんなものが。足を止めて見てみると、だいぶ傷んではいるものの地すべり防止区域の標識だった。立てたのは新潟県柏崎地域振興局。やっぱりこの周辺、地すべり地域だったのね。そういえば、これと同じものを山ノ相川や尾神隧道でも見たな。やはり新潟県でも中越や上越地方には地すべり地帯が多いようだ。その中を、この旧道は通っていることになるから、道路改良もさることながら事故防止という観点もあって、山中トンネル経由の現道に切り替えられたのかもしれない。

と、山側の斜面にこんなものを見つけた。探索した時季が雪が消えた直後なら、草も少なくてもっとよく見えたことだろう。さほど旧くないようにも見えるが、これは落石防護か雪崩防護か、どっちかな?。見上げると、地形がここだけ溝のように凹んでいるように見える。これは斜面が滑った跡だろうか。そうだとしたら、滑ったところにわざわざこんな柵を造るか?。となると、これは雪崩防護柵だな。きっと。

道の真ん中でこんなことを考えながら斜面を見上げている、ヘルメットを被って自転車を押して歩いている一人のオヂサン。

うーん、やっぱりアヤしい(笑)

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