新潟県一般県道480号
山中上野線 第17部
「丸石積みの擁壁」
2024年9月28日 探索 2025年4月18日 公開
丸石積みの擁壁

前回の最後で、私の頭の中にふと過った考え。この道が「もしかして通行止めになってない?!」と言う疑問。少なくとも今までの道程では、そんなことはなかった。ま、このまま進んでいればわかるか…。ひとまず気にせずに進んでいくことにしようか。
辺りを見回していて足元も確認しながら進んでいて、周りの景色も見る余裕がなかった。ふと視線を遠方にやると、目の前には山中を山肌に沿って進んでいく山中上野線の姿が。この道が、元は一般国道252号と思うと感慨深い。

しかし、この道を辿り続けてから結構な時間が過ぎている。事前調査の段階で、この旧道がかなりの距離になることはわかっていたが、辿ってみると改めて非常に長い旧道と言うこと感じる。「こりゃあ中仙田から山中に戻るだけでも結構な時間がかかりそうだな…」などと思いつつ先へ進んでいく。もうそろそろ中仙田の集落に近づいているはずなんだけど。
で、満を持して登場したのが、この擁壁。素晴らしい!。この丸石の擁壁、思わず涎が出てしまいそうなほど美しい。こんなものが、人通りがほとんど途絶えた県道に潜んでいるなんて、もったいない!。もう少し近づいて観察してみるっ!。

ほれ~、これこれ!。山肌に沿うように進んでいく県道に対して、その道をガッチリとガードする丸石の空積みで造られた擁壁。いかん…ここでテントを張って、この擁壁を眺めながら酒を呑みつつ、この道が古くから積み重ねてきた息吹を感じたいところだ。
石垣をじーっと眺めてみる。…ん?もしかしてこれは空積みではなくて練積みか?。
空積みと練積みとは…
空積みとは裏込めにコンクリートやモルタルを使わずに、割石や砂利を用いて石を積み上げる方法。これに対し練積みは、積み上げられた石と石の間に目地入れや裏込めを行う。と言うことで、空積みと練積みの違いは、石材間及び背面にコンクリートがあるかどうかであり、練石積擁壁は、石材をコンクリートで結合して擁壁の一体化を図ったもの。この擁壁はたぶんこの練石積擁壁だと思う。
ま、どっちにしてもこの擁壁が美しいのは間違いない。今はこの通行が途絶えてしまった県道に眠る、この古来のヒーローを愛でようじゃないか。

あっ!いかん、涎が!(笑)
山中を進むこのカーブ、実にええ感じやーん。実にいい!。この分だと、もうすぐ中仙田かなぁ。左の山肌を見れば冬季には雪崩が起きそうな感じだが、それにしては雪崩が起きた様子もないのが不思議でもある。手元のタブレットを取り出して、地理院地図にアクセスしてみる。この辺だと電波が来てるかもしれない。
…あ、あったあった。ここから中仙田の集落まではそんなに距離はなさそうだ。それにしても、この角度の斜面やこの景色、どこかで見たような気がするなぁ…どこだっけか?。

ここにきて久しぶりに自転車に跨って(久しぶりってのがなんだか変な気もするが)、のんびりと坂道を登っていく。ここまで歩いてきたおかげで、往年の脚力が戻ってきたからだろうか、さほど苦しくもなく進んでいるが…きっと後になって足が痛くなるんだろうな。情けない限りだ。
閑話休題。
ここにきて少しだけ路面に下草が侵食しているものの、国道の面影は十分に残していると思う道。こりゃ現役時代には「酷道」に名前が列せられるほどに道だったんだろうな。そういう意味では改良されたのが残念とも言えるかもしれない。

この道はここで小さな峠を越える。この小さな峠を越えれば中仙田の集落まで一直線だろう。この道の探索はなかなか長かったが、ようやく終わりを迎えそうだ。峠の頂点辺りには道に覆いかぶさる木々の葉。その姿はまるでトトロのトンネルみたいで、なんだか楽しい。この道は古くからここにあったとすると、今年で何年目になるのだろう。そして、このあと何年ここにいるんだろう。どこの旧道や廃道でも同じ想いを抱くけど、この道もどうか一日でも長く通れるように願う。
さぁ、中仙田まで、もうすぐだ。
新潟県一般県道480号 山中上野線
- 山中上野線 第1部「その日は突然に」
- 山中上野線 第2部「取り残された場所」
- 山中上野線 第3部「ヘアピンカーブの真ん中で」
- 山中上野線 第4部「稲架掛けの先に」
- 山中上野線 第5部「草と苔に覆われて」
- 山中上野線 第6部「天空の三差路」
- 山中上野線 第7部「ひび割れたアスファルト」
- 山中上野線 第8部「国道の貫禄」
- 山中上野線 第9部「宿場を目指して」
- 山中上野線 第10部「アースクェイク」
- 山中上野線 第11部「旧き隧道の姿」
- 山中上野線 第12部「断面が変わる隧道」
- 山中上野線 第13部「峠越えの街道」
- 山中上野線 第14部「取り残された道」
- 山中上野線 第15部「嬉しくない出会い」
- 山中上野線 第16部「取り残されたエンドポスト」
- 山中上野線 第17部「丸石積みの擁壁」
- 山中上野線 第18部「通せんぼの県道」