新潟県一般県道427号
五十子平真田線

第9部「集落をつなぐ道」

2025年7月19日 探索 2025年11月13日 公開

集落をつなぐ道

前回の最後で紹介した「望郷の碑」。その碑が建立されている場所から柏崎方向を眺めてみると、確かに眼下に集落のような建物が見える。あれが海老(かいろう)の集落だろう。およそ100年弱前の景色と比べて、さほど変わってないんじゃないかと思う。
海老からここまでは一本道。出発の朝、村中の人々に見送られてここまでやってきて、故郷の集落が一望できるここで、彼らは何を思ったのか。故郷に戻ってくることを決意して先に進んだのか、それとももう帰ることはないと悟り、それでも先に進んだのか。今となっては知る由もないと思うが、せめて、前者であってほしいと願う。

ここから先は道幅も広くなり、新しく整備された区間に入ったらしい。足元のアスファルトも新しく、下草の路面への侵食もほとんどないため、つい最近整備されたばかりじゃないかな。このくらいの道幅なら普通車でも十分に離合できるので走りやすくていいのだが、心情的にはなんとなくつまらんと言うギャップに苦しむ(笑)。それに…左側からクマが出てきそうだしねぇ…。それに、なかなかの急勾配。本来なら「急勾配あり」の標識が設置されてもいいはずなのだが…。

いいねぇ。この道幅。除雪の際に押し倒されたのか、表面の半分の面積が下地が出ていて、今にも倒れそうな「幅員減少」の標識が傍らに立っている。…ん?。せっかく道幅が広くなって走りやすくなってきたのに、また狭くなると言うことで、なんとなく嬉しくなる。道幅が広くなってつまらなくなり、狭くなって嬉しくなったり、忙しい男である(笑)。ここも比較的、路面のアスファルトは新しく感じる。最近、整備されたものだろう。せっかくなので、倒れかけた標識を確認してみることにしよう。

と言うことで、表面が傷んだ標識「幅員減少」。県道だから、設置者は「新潟県」。…しかし、こりゃまたえらく傷んでいるもんだ…。それに、なんとなく支柱が短いように感じる。この短さだと、実際に真っすぐ立っているところを想像してみれば、おそらく私の身長の肩ぐらいではないか(筆者は身長168センチ(当社比))。この高さの標識は以前にも見かけたことはあるが、なんでこんなに短いんだろう?。積雪に関係しているのだろうか。でもそれなら、高くした方が積雪時にもわかりやすいだろうしねぇ…。思わず考えこんでしまった。

先へ進んでしばらくすると、ここも路面はきちんと整備されて、勾配もほとんどなく快走路が続く。空高く、非常に景色がいい道で、これで前進が林道だとは思えなくなってきた。んー…ずっと前からある、重要な道だったのでは?。…もしかして聯路(れんろ)とか。


ところで、旧版地形図やこのWEBにしばしば登場する「聯路(れんろ)」はどういう道なのか、ここで少し解説しておこう。昭和10年に刊行された陸上自衛隊による『地形図図式詳解』には、3メートル道は野砲を、2メートル道は輜重車を、1メートル道は駄場を、小径は単独者を通しうることを基準とすると記されている。これを元にいろいろ調べたところ、日本地図センター発行の「地図記号のうつりかわり」という本にたどり着いた。この本の用語解説では、里道(りどう)の分類として以下の様に記述されていた。
「達路(たつろ)」著名な両居住地を連絡する道路、および著名な居住地から出て、また国県道もしくは他の達路より分岐して数町村を貫通する道路
「聯路(れんろ)」隣接する市町村の主要な居住地を連絡する道路
「間路(かんろ)」「聯路」間を結ぶ小路

この「里道」の分類「達路」「聯路」「間路」は明治24年式~明治42年式で用いられたが、大正6年式でこの分類は廃止され、「里道」は「道幅一間半以上」「道幅一間以上」「道幅半間以上」の様式に変更された。だが、なんとも風情のある道の呼び名で、本来の道幅の数値の設定はともかく、私はこの道の呼び方が大好きだ。


こりゃあ、ますます旧版地形図を確認しないとなぁ…と言う気になってきた。この道の前身がわからないことには、追いかけようがないからだ。でも、そうだよね。さっきの碑の文面からすると、この道は少なくとも1931年(昭和6年)以前から存在していたことになるので、林道じゃないな。途中に海老集落や、赤倉、坪野の集落もあったりするので、林道と言う前提はここで崩れることになる。…なんだか、偶然も面白い道に出くわしてないだろうか。楽しみになってきた。

で、ここにも背が低い標識「落石注意」がある。妙に低いこの標識、なんとなく可愛くもあるけど、積雪時には雪で埋まりそうな気がする(もっとも、ここは冬季通行止めになる区間なので、問題ないのかもしれないが)。

雰囲気は旧道。緩やかに左カーブで進んでいく道は、トンネルが穿たれたあとの山越えの旧道のような感じもする、実に雰囲気のいい道だ。ここにきて道幅は1.5車線に狭まった。それでも、さっきの1車線の道よりかは路肩を気にしなくてよい分だけ通りやすい。路面のアスファルトは多少傷んではいるが、これより酷い道を何度も見ている身としては天国のような道だ。何より廃道になっていないところがありがたい。

道路はいつの時代も自然との闘いで、ちゃんと整備されて通行できれば自然に打ち勝っていると言うことだけど、これが落石などの理由で通行止めになってそのまま廃道になったりすると、それは道が自然に負けてしまった、ということ。この道も危険そうなところはたくさんあったけど、ぜひ自然に打ち勝ってほしいと思う。

ひと区切りとなる、県道528号の分岐点まであと少し。

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