新潟県一般県道207号
大栗田村上線

第8部「白壁の悪魔」

2025年8月31日 探索 2026年1月17日 公開

白壁の悪魔

森林の中を先に進む道。ところところに苔が生えている路面。いやー、滑りそう。人が歩いているときにツルンと滑ってコケるならまだいいが、車で走っているときにツルンと滑ると門前川に落ちちゃった、なんてことになると…。つい慎重になってしまう。
右側の路肩を見ると、案内板が一つ。「大栗田まで5キロ」とある。確か3番カーブの「はこべ」のあたりだったか…。門前の集落からここまで、この県道をのんびりと辿ってきたが、道の途中で家らしきものは全くなく、門前の集落を出てからというもの、道と木と門前川しか見ていない(←言い過ぎ)。
それだけ大栗田の集落が山の中にあるということ。今では通信インフラも発達していて、孤立はないと思うが、交通だけは道路がないとどうしようもない。大栗田にはこの一般県道207号ともう一つ、一般県道273号大栗田越後下関停車場線があり、207号は冬季閉鎖するが273号は冬季閉鎖をしないので、関川村方向には出ることが出来るが…冬の生活は想像を絶すると思う。

道はだんだんと上り坂になってきて標高を上げていくが、その途中のカーブミラーに、この道ではすっかりおなじみの看板がつけられているじゃないの。車を停め、滑る路面に気を付けながら、看板の近くに行こうではないか。今度は何の草花なんだろうか?。
道の外側は門前川。この道は「もういいよ」と言いたくなるほど、門前川に忠実にトレースしていく。こんな山奥にある、目的地の大栗田の集落。この道が何らかの理由で通行止めになると、村上市街地に出れなくなってしまう。とはいえ…この道、維持するだけでも大変だろうなぁ…。

ここは14番カーブ「かたくり」。かたくりとはその昔に片栗粉の原料になった草花のことで、片栗粉は最初はユリ科の植物の「カタクリ」の球根から作られていたのだけど、生産量の問題から片栗粉の原料は馬鈴薯(ジャガイモ)に切り替えられた。まぁそりゃあそうだわねぇ。こんな草花の球根だと、一つから採れる量なんてたかが知れているだろうし…。ということで、片栗粉を造るためにカタクリを大量に採取したために激減してしまい、原料をジャガイモに変えたんだそうな。
ちなみに、この付近にカタクリの花らしき植物は見えなかった。

うおっ?!

おいおい…なんだか道幅が断然狭くなってきたぞ(汗)。ここまでは、確かに道幅は狭かったが、まだ道の雰囲気としてはそこそこに明るかった。だが、ここからはなんだか幽玄郷に入っていくような雰囲気の道じゃないか…。それに、だんだんと標高も上がってきているような気がする。ちなみに道が濡れているのは雨が降ったからではなく、この日の気温の高さ(30℃を超え、35℃に近かった気がする)と門前川の水の冷たさで、辺り一帯が視界不良になるほど川面に靄(もや)が発生したためだ。しかもこの付近、木々に覆われているために靄(もや)が逃げずに停滞してしまったらしく、白壁になって行く先を阻むその様子は、まさしく白壁の悪魔。画像はその悪魔が散った一瞬を撮影したが、直前まで靄で湿っていた様子が伺える画像になった。

道の雰囲気はますます険しさを増し、緑の化粧をした路面は落ち葉も多くあり、いかにも「すべります」と言わんばかり。山の斜面の一部を切り取って道を拓きました!と言わんばかりの道形は、景色の美しさもさることながら、離合箇所が全くない。対向車が来たらどうするんだろう?と思いながら、慎重に先へ進んでいるけど、ここはその数少ない離合地点のようだ。路肩が少し先で左に膨らんでいる。「対向車が来たら、ここで離合してね」ということなのだろうが、普通車と普通車になると、このスペースでは離合にもなかなか難しいものがあるように思える。しかも、離合地点手前の路肩を見てほしい。地味に沈んでいるように見えないだろうか?。ここ、積雪時の雪の重量と、そのあとの雪解けの水分で、果たして路盤が車の重量に耐えられるかどうか…。

試しに、この離合地点で少し車を停め、エンジンを止めて降りてみた。すると、左の直下に流れている門前川のせせらぎの音、小鳥たちが騒がしく囀って(さえずって)いる声が聞こえる。空気は靄(もや)のせいか湿気が多く、高い気温も相まって蒸し暑く、少しいるだけで肌がべたべたになってしまいそうだ。もう少し空気が乾燥している初夏のあたりだと、さわやかな空気が楽しめるかもしれない。

離合地点の少し手前に、舗装を修正した跡がある。道路中央部から山側にかけて、アスファルトを敷きなおしたようだ。路肩ならわかるが、なぜこんなところを…?。ここは…路盤陥没したんだろうか。何せ、これだけ湿気が多くて、苔に覆われている区間だもん。何があっても不思議じゃない。
この章の冒頭で書いたが、この道は冬季通行止めになる。その区間は、大栗田から門前まで、大栗田集落を起点として6.3km。ということは、ここは冬季通行止めの区間だ(今年は、令和7年11月17日 午前9時 ~ 令和8年4月下旬)。

1年に半年の間しか通れない県道。
来年もまた、無事に会えるだろうか。

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