一般国道253号
犬伏トンネル旧道
第9部「越道川と渋海川」
2024年4月20日 探索 2024年12月28日 公開
越道川と渋海川
前回、ここよりもう少し道に入ったところで通ってきた道を振り返ったが、今回は手前に見えるアスファルトが物語る通り、現道に合流した地点から旧道を見ている。ようやくこの探索も終わりだ。この国道253号の旧松代町田沢から犬伏までの道路は、ほとんどがこんな地形のところを通過していて、冬季の雪が多い時季にここで雪崩でも起きようものなら、それこそたまったものではなかっただろう。下手をすると渋海川に落とされていたかもしれない。
そりゃあ、田沢トンネルと犬伏トンネルを造ろうかってことになるわねぇ…
ここから見る景色はとても穏やかなんだけど。それに、この付近には炭鉱もあったはず。その炭鉱がどこかはこの後、自宅に戻っての机上調査で調べることにしようか。見る限り、そんな穴はなかったようにも思えるんだけど…
現道の合流地点から犬伏トンネル方向を見てみる。うん、坑口が見えんな(笑)
なんとなく遥か遠~くに見えるような気もするが…それだけこの区間の旧道が、非常に厳しい地形のところを通っていたと言うことだろうな。そういえば、ここから見える景色は道路を真ん中にして巨大な切り通しのように切り開かれた気もする。目の前には渋海川を渡る現道の橋が。そういえば田沢トンネルの入口付近も橋で始まっていたなぁ。
まずは左側の親柱から。この橋の名前は「であいばし」。漢字で書くと「出合橋」となる。「であいばし」とは、これいかに。もしかすると、ここに来たら出会えるのか(←そんなことはない)。
正解は、川の出合いだ。この橋が架かる地点は「越道川」と渋海川が出合う地点で、ここから先の渋海川は多くの河川と合流しながら蛇行を繰り返し、河岸段丘をあちこちに作りながら途中で塚野山を通過し(塚野山と言えば聞き覚えがある方がいるかもしれない。そう、新潟県一般県道550号東谷塚野山線の終点の、あの塚野山である)長岡市の信濃川合流点を目指して流れていく。
出合橋から合流点を覗き込んでみたのがこの画像だ。手前を右から左に流れるのが渋海川、そこに上から合流してくるのが越道川。地図では越道川の方が大きいように描かれているが、実際は渋海川の方が川幅も広く、水量も豊富だ。エメラルドグリーンの川の水が非常に美しいが、ここでも川岸を見るとこの地域特有の地層などが現れていて面白い。
ここは…どんな河川の合流点でもその危険はあるのかもしれないが、降水時や積雪時と際に水位が上がると、渋海川の流れが速く水量も多いために越道川の水が渋海川に合流できず、渋海川の水が越道川に流れ込んで逆流する、いわゆる「バックウォーター現象(背水現象)」が起きることがあるのかもしれない。
そういえば、正面に見える針葉樹(ありゃ多分杉だろうけど)の根元付近に広がる笹のヤブの川岸の辺りが妙な生え方をしている気がする。大雨が降ったりして川の水量が上昇すると、あの付近まで水位が上がるのかもしれんなぁと、ふと思った。
今度は出合橋を渡って反対側の親柱を見てみよう。橋が所属する道路の名称が記載された銘板が銘板として親柱に嵌め込まれているのは、全国でも非常に珍しいと聞く。もしかしたら新潟県だけかもしれないが、その銘板は「一般国道二五三号線」とある。路線名称が「一般国道」となっていることから、この国道は一級国道・二級国道の名称が廃止された1965年(昭和40年)4月1日の道路法改正以後に指定された国道と言うことがわかる。
橋の親柱に所属する路線名称が表示されているだけでこれだけのことがすぐにわかるので、この「親柱に所属する路線名称の銘板が設置される」のは、ぜひ全国に広がっていって欲しいと思うのは私だけだろうか。
出合橋で残るは最後の銘板、この橋の漢字表記の名称が記された銘板が嵌め込まれている親柱だ。そこには「出合橋」と彫り込まれていた。さきほどまで私が通っていた旧道の姿も見える。こうしてみると、改めて「なんちゅうところに道を通していたんだろうか」と改めて思う。いかにも「雪崩が起きてください」と言わんばかりの地形に道を通しているもんだから、現道の田沢トンネルと犬伏トンネルが開通する前の、この地域の冬季の道路交通は非常に難儀していたことは想像に難しくない。冬の積雪でこうなのだから、降雨が多い時季(例えば梅雨とか)も土砂崩れの危険は非常に高かったと思われる。
道路が改良されることで、その沿線の地域に交通の安心が生まれ、やがて人も物も文化も発展していくと言うことは、こういうことなんだなぁと改めて思った。
さて、現道を通ってクルマに戻ることにしよう。
次回はいよいよ完結編となる机上調査編だ。この隧道と付近にあったであろう炭鉱、そして道路事情を改良するために穿たれた、雪中隧道にも触れておかねばなるまい。
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