一般国道253号
犬伏トンネル旧道
第8部「永遠の眠りへ」
2024年4月20日 探索 2024年12月23日 公開
永遠の眠りへ
生温くなったルイボスティーを飲んで一息入れたあとは、探索の再開だ。とは言えど、この画像を見て頂くとおわかりいただける通り、残りの距離はそんなに長いものではない。目の前に先ほど一度見えた現道の出合橋の姿がすぐ近くに見える。ここまで来るともう目の前にゴールが見えているので、進む足取りもやや早足になったりするが…。ところで、この旧道はここにきて左直角右直角の道が続いている。それに道幅もここに来ると、なぜか非常に狭くなっている。およそ1車線分しかないではないか。うーむ…やっぱりこの区間は、局改前は大きなネックだったのかもしれない。そんな気がしてくる。
てくてく…。足元は枯草が敷き詰められ、フカフカして非常に歩きにくい。左の山側が斜めになって、何やら土砂が落ちてきたように見えるが、これは…?。先には犬伏トンネルを抜けてきた現道の姿が見える。渋海川の流れに沿って進む旧道よりも、安定した路面状況を求めてトンネルと橋を架けて無雪道路を実現化した、と言うところだろう。その時代によって道の造り方が違い、安定した交通を求めて不断の努力をしてきたであろう関係者の方々の意気込みが感じられるというものだ。
しかも、川の洪水対策のために現道の橋は一段高いところに造られ、それにつながる旧道は合流点が坂道になっているのがポイント。廃道となっている旧道は、現道時代には川の増水による被害が頻発していたのかもしれない。
ところで、さっきの土砂が落ちてきたような山側の斜面。土砂かな?雪かな?と思って掘り返してみると…枯葉とゴミでカモフラージュされた雪だった。これは雪は雪でも、根雪になっている雪だな。今は4月、豪雪地帯で知られる新潟県十日町市でも山沿いの地域になる松代地域。こういったところの雪解けは、まだまだ先のようだ。しかも表面が枯葉などのゴミに覆われているこういった雪は、なかなか融けない。でも、それでもその隙間から緑の若葉が顔を出しているのに注目だ。この廃道に本当の春が訪れる日も近い。
そういえば、少し手前から道の様子を眺めた時に、川岸の擁壁が壊れているのが目に入ったが、それがここだった。よくよく見ると大きく路肩が壊れている。路肩が非常に不安定なので近寄れないのはもちろんだが、それでも何か掴めないかとカメラを持った手を川に向けて伸ばして撮影してみたのが、この画像だ。以前にここに川の流れが強く当たることがあったのだろうか。路肩を固めていた護岸のコンクリートの残骸だろうか、破壊された大きなコンクリートの構造物の塊が渋海川の流れの中に、静かにその躯を晒していた。
しかし、こりゃまた大きく削られたなぁ…。しかも一部分だけ大きく削られてしまって、路盤が非常に不安定になっている。こういうところに近づくのは厳禁。これも、この道が廃道になってしまった理由の一つなのかな。
今は静かに流れている渋海川だが、ひとたび大雨になると暴れてしまうのだろう。その渋海川を覗き込むと大きく崩れた護岸のコンクリートや、玉石が組まれた石垣の残骸が見えている。惜しい!この石垣が現役の姿を一目でいいから見たかった。…と言うことは、今でもひとたび川が暴れてしまうと、ここが削られてしまうかもしれないと言うことでもある。この廃道も、通行できるのはもしかすると今年が最後かもしれないなぁと思うと、やっぱり「通れるうちに通っておかないと」という探索の原則とも言えることを改めて実感した。
再び振り返って、これまで通行してきた道程を見てみる。高台の上にある犬伏の集落、その真下を通る旧国道。この国道がもしも犬伏の集落を通っていたら、この道の運命も変わったのかもしれないと思うと、道を造るにあたって道筋も大事なんだな。もし犬伏の集落を通っていたら、この道は今でも現道でいられたかもしれない。災害国道だったかもしれないこの道は、今ようやく眠りにつこうとしているようでもある。そう思うと、この探索がもうすぐ終わりに近づくのが、なんだか心残りでもある。