一般国道253号
犬伏トンネル旧道

第6部「カモフラージュ」

2024年4月20日 探索 2024年12月8日 公開

カモフラージュ

前回、沈丁花の花の香と共にこの道に思いを馳せた私は、この道を最後まで感じようと先へ進もうとするのだが、そこでふと山側の斜面を見てみるとこのような斜面の姿が目に映った。今でこそなだらかな滑り台のようになっているが、ここはおそらく過去に大規模に崩れた跡だろう。左右の斜面の様子と比べてみると、大規模に滑った様子が見て取れる。

渋海川に沿って進むこの旧道は、川が暴れればこの道も傷つくし、道の脇の斜面が崩れれば川に土砂が流入してしまい、下手をすると堰き止められてしまう恐れがある。この旧道と渋海川は、どちらかが大きく崩れてしまうと、そのどちらも少なからず影響を受けるという関係じゃないか。この道に限らず、山の中の旧道や廃道はおおよそ川岸に沿って通している場合が多く、それゆえに、ひとたび川が氾濫してしまうとその岸を通している道も影響を受けてしまい、路盤が崩れてしまったりして廃道になってしまうということが多いように思う。

こうした山沿いに道を通すには、わざわざ山を切り開くよりも川のそばを通してしまった方が楽なので(川沿いの道の斜面を削って道を付ければ経路設定に困ることもないし、隧道を掘ることも極力防げる?)、こういった道筋を選択しがちだったんだろうな。

崩れた場所の下の方を見てみると、ここだけなだらかな地面がそのまま渋海川に落ちているような印象を受ける。もともとの路面は、崩れてきた大量の斜面の土で埋め尽くされているんだろうな。そのせいか、ここだけ路面と山側の斜面の境界線が今一つはっきりしていない。
この場所でじっくりと周囲を観察してみると、どうやら斜面の上から大量の土砂が滑ってきたようで、その一部は渋海川にもきっと落ちたと思う。この旧道にとどめを指したのは、もしかしてこのがけ崩れでは…?。なんかそんな気がしてきた。

崩れた場所を慎重に通り過ぎ、改めて振り返ってみたのがこの画像だ。こうしてみると、ここまでの路面と思しき所には草や灌木が茂っていて(さっきまでその笹ヤブに大いに苦しめられたものだが)、どう見ても「道です」と言う雰囲気だったが、この場所だけそれが無くなり不自然になっている。なるほど…上から土砂が崩れ落ちてしまうと、こうなってしまうんだなぁ。川沿いのこの道、崩れてしまう以前はどんな風景が見えていたんだろうか。今、私が見ている風景も非常に美しいが…一目でいいから私も崩れてしまう前の風景が見たかった。

さて、先へ進もうかと前を向くと、まだまだ崩れた斜面が続いている。この斜面はなかなか大規模に崩れたようだが、その先には、おそらくこれが元々のこの道の風景だろうという景色が。4月も後半に差し掛かろうという時季、今は薄曇りと言った天候だが気温はそこそこに高くて、今は23℃くらいだろうか。半袖でもやや汗ばむ陽気だが、私は長袖を着ている。…日影はないけど、少し休憩するか。

リュックを下ろし、すっかり温くなってしまったルイボスティーを飲むと、水分が不足していたのかスッキリする気分だ。これまでのような笹ヤブがないので歩きやすいのはありがたい。飲みながら前方を確認してみると、この先で道は右カーブとなっている。たぶんこのカーブを過ぎれば、この旧道の終着点が見えるだろう。…どれ、ボチボチ行こうか。

再度、山側の斜面を見てみる。そこには、途中で蛇行しながら旧道へと駆け下りてくるような雪の通り道の斜面があった。そして、その斜面の一番下部には、土にカモフラージュされながら扇形となって、自らが融けゆく日を静かに待っている雪の姿が。その上に広がるであろう犬伏の集落の家の姿も見える。これはいったい…?。集落に積もった雪を除雪した後の、俗に言う「雪捨て場」だろうか?。雪崩が多発している場所と言うには、なんとなく妙な気がするが…。

隣にある、崩れたであろう斜面の跡を見て比較してみる。…ん~、どうもこの二つは崩れ方が違うような気がする。その理由はいろいろあれど一番の理由は、奥の斜面はこれまで紹介した通り路面にも土かぶりがあって、斜面が崩れてしまったということが一目でわかったのだが、こちらにはちゃんと路面らしき平場があるのよね。となると…やっぱりここは自然の地形を生かした雪捨て場なんだろうか?!。…一番下に道があるんだけどなぁ。

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