一般国道253号
犬伏トンネル旧道
第4部「アバランチ・シュート」
2024年4月20日 探索 2024年11月28日 公開
アバランチ・シュート
道としては終焉を迎えているのはいいが、私はそれが専門。もちろん、笹ヤブが深いからって怯んでいるわけにもいきません。それよりも、右側に見える渋海川の対岸の斜面が非常に興味深くて、擂鉢状になっている。一度近くで見てみたいもんだが、元来高いところが苦手な私には川を覗き込んで、更に対岸を見る勇気はないので、ここは遠くから眺めるだけにしておこう。だが、これはこの付近の地形が渋海川の侵食によってもたらされたもの、と言うことの証だと思う。
路面に視線を戻すと、一面笹のヤブに包まれている。今はまださほどでもないが、これから先はこの笹のヤブに悩まされそうな気がするし、道幅がここだけ狭いというのも気になる。道幅がここだけ狭いのは路肩が削られたからで、大雨などで濁流が流れた際の渋海川の侵食が原因だろうか。人間は自然の力に抗えないなぁ。
ちょいと先に進んでみる。路肩には灌木と言う名の貧弱な木が生えていて、道幅は妙に狭い。その原因は濁流時の渋海川の侵食によるものじゃないか?と言うことはさっき書いたが、こうして擂鉢状の地形が深くなっていく。先ほどまであった路面井踏み分け道はここまでくるとなく、ここを通っているのは私以外にはいないようだ。それにこれだけ大量に下草があるということは、寒い時期を過ぎて春になり、ニョキニョキと草が生えてくるととんでもないヤブになるんではなかろうか。夏にはたぶん通れないだろうなぁ。
ふと山側を見ると、私の目の前には深く切り込まれた谷のような地形が目に入った。これ…もしかして過去に起きたアバランチ・シュートの跡だろうか。
アバランチ・シュート…全層雪崩による侵食により岩盤が露出した幅の広い直線状で急傾斜の地形のこと。日本語では雪崩路(なだれみち)ともいう。
そのアバランチ・シュートの上にはコンクリートパネルで壮大に頑強に造りこまれた、見事な大擁壁の姿が見えるではないか。見方によってはこのアバランチ・シュートは大擁壁を越えて遥か上から続いているようにも見える。もしかしてこの地点は、これまで何回も雪崩が発生している地点なのだろうか。そうすると、その真下にある旧道ってもろにその雪崩の被害を受けていたのではないか。…この道はこの道なりに、やはり災害と戦っていたんだなぁ。
ガサガサガサ…。腰のあたりまである笹を両手で掻き分けながら進んでいく。左側にある木はどんな木だろう?。こういった廃道にありがちな灌木の特徴として「山側の斜面に対して水平に生える」と言うことだろうか。すなわち路面に対して並行に枝が伸びていく。ガサゴソと笹のヤブを掻き分けているというのに、それに増してこの「水平の枝」が邪魔をしてくるのだ。長靴を履いているので足元は大丈夫、灌木が一番当たるであろう頭もヘルメットを被っているし、何かを握るにしても皮手袋を着用しているので安心ではあるが…。でも、この灌木がもしもヤマザクラだったら、春にはすごく綺麗だろうな。
うおっ!深くなってきたぞ?!
だんだん笹の背が高くなってきたじゃないか!(←実は楽しんでいる)。これだけ背が高い笹は久しぶりだなぁ…。でも、これまでのヤブはそのほとんどが山の中だった。なので周囲が非常に薄暗くて心細い思いをしたものだが、ここは川岸なので空が明るい。これだけでも気分的に違うもので、大胆に掻き分けて進んでいく(←やっぱり楽しんでいる)。
やっぱり探索はこうでないと?。
それにしても、この国道はなんちゅうところを通っていたんだろうか。山側の急な斜面と渋海川に挟まれたところを、雪崩防止柵や落石覆いなどの道路防護施設や、デリニエータ、ガードレールなどの路肩防護施設が何もないこの道が、一般国道に指定されていたのだ。現役時代のこの道はまさしく酷道じゃないか!。…そりゃ改良でトンネルも掘られるわねぇ。
次回、ヤブを掻き分けて進む私に、廃道の神様が微笑むか!?