一般国道253号
犬伏トンネル旧道
第3部「枯草のクッション」
2024年4月20日 探索 2024年11月23日 公開
枯草のクッション
いやー、いい道だ。昔の道筋そのままではないか(笑)。
現道時代と違うのは、路面が下草に覆われているってところかな。その炉路面をよくよく見てみると、冬枯れで枯れた草のそこかしこの隙間から新しい芽が出ていて、色鮮やかな緑の若葉が顔を見せている。これがただの草原なら「わぁ、綺麗な若葉」で済むところだが(ホントにそう言うかどうかはこの際別にして)、忘れちゃいけない。ここは旧道だ。
この景色を見ると廃道と言いたいところなんだが、地理院地図にちゃんと記載されているので、管理者が道路としての供用廃止をしていないということになる。従ってこの道は道路法上では廃道ではない。
ところで、この道路の供用の廃止とは何かということだが、道路の路線や道路の一部を道路法の道路ではなくすときには、その状況に応じて路線の廃止や道路の区域の変更・供用の廃止が行われる。これは道路を一般交通の用に供しなくする廃道の場合や、新道が建設されて旧道が国道から県道や市道になったりする管理移管、路線の一部を変更したり廃止するときにも、その変更したり廃止される道路の区域を明確にする必要があるため、廃止される道路の供用廃止の公示や、新しく道路として供用される場所の区間を定めて供用開始の公示を行う必要がある。これを行って初めて道路法の道路として認められることになるのだ。
路面に横たわる枯草の山。その隙間から顔を覗かせる新緑の芽。今のふわふわの足元からは想像もつかないが、ここも立派な国道だったのだ。川岸を進む往年の国道の道筋そのままの姿が残る道は、山側の斜面に雪崩防止柵などの道路防護施設が全くなく、雪の季節は雪崩が多発する恐ろしい道だったのかもしれない。もっとも、そうなる前に冬季通行止になっていたんだろうけど。だがこの道が冬季通行止になると、この周辺の方々の麓までの冬の交通はどうやって確保していたのか。北国の冬では「雪害」とはよく聞く言葉だが、雪はまさしく災害に匹敵するものなのだ。
こうして路盤を見ていると、なんだか鉄道の路盤のようにも見えてくるから不思議だ。そういえば鉄道も「鉄の道」、似通っていても当たり前か。ここまで足元には冬枯れで横たわった枯草が大量にある。と言うことは、夏にはこの草が復活するということで、きっと夏には草のヤブに覆われてしまって、通行することもままならないだろう。そんな道を今こうして通っている私は、足元に纏わりついてくる枯草と戦いながら、思わず大きな声で言ってしまった。
旧道じゃなくて廃道やないか!
…それを言ってしまってはミもフタもないという話もチラホラと聞こえるが、それはその通りだ。素直に認めよう(笑)。よって、ここから先はこの道を(親しみを込めて)廃道と呼ぶことにする。
同じような画像ばかりで申し訳ないが、これが事実なので仕方ない。まぁ、どこの廃道でもおおよそ似たようなもんだが、路盤が崩壊していたりしてないだけまだマシか。
こうして見ていると、田澤トンネル旧道に続いて道に寄り添っていた渋海川はどこ行ったのかと思うかもしれないが大丈夫。この路盤のすぐそばに流れている。ただ、単純に道の路盤を歩いているとどこが路肩かわかりゃしないので、枯草を一発間違えて踏み抜いてしまうと真っ逆さまに渋海川に落ちてしまうという危険をはらんでいるのだ。
いささか神経を使う廃道にやや疲れて、少し休憩して渋海川を見てみる。すると対岸の川岸にこんな岩肌が見えた。私は岩や石にはさっぱりなので、これがどういうものかわからないから特別詳しいコメントはしないが、それでもこれが特別な岩肌と言うことは伝わってくる。
このような岩肌が普通にあるということが驚きだし、その姿は実に美しい。探索のことをしばし忘れて見入ってしまった。
素晴らしく特別な岩肌に心を洗われた後は、また探索に戻る。これまでよりも足元の枯草の深さが深くなり、こうして長靴を履いて歩いていても足を取られるので、気を付けなくてはいけない。この先は更にヤブが深くなり、こうなるともう道としての体裁をなしていない。どうやら「道」としては終焉を迎えているようだ。