新潟県出雲崎町道
尼瀬稲川線 稲川隧道 再調査編
第7部「ナナマガリの痕跡」
2025年4月5日 探索 2025年6月16日 公開
ナナマガリの痕跡

針葉樹と広葉樹が様々に入り組んだ森の中に差し込む、幾筋もの光を感じながら、道らしきものを探りつつ先へ進む。ここはもう自分の正面、山の中にこれだけの道のような平場もないもんだと思うから、これが道の痕跡だろう。それに、路面と思しき平場の左隅に生えている杉2本を除くと、上り坂の斜面が明らかになっていく。ここなどはなかなかの道幅があったようだ。

ここは…少し崩れているけど、左の斜面と右にある太い木の間が道の跡…よね。山中に進む道の跡らしきもののトレースを失敗してしまえば、あっという間に遭難するか滑落するか…。もし万が一のことがあれば、探索に快く許可を頂いた地主氏に申し訳ない。これが一番で、道の跡に目を光らせてトレースしながら進んでいく。まるでトレーサー(敵の足跡を辿っていく)みたいだ。正直、私はこのような探索は今までにほとんどない。
…といっても大したキャリアではないけれど。まだ10年にもならないし。ただ、着実に目は肥えていると思う。その証拠に、褒められることでは決してないが、車を走らせていて道端に旧道を発見してしまい、そこで急にブレーキをかけてしまうという数が多くなった。もちろん、周囲に車がいないという大前提での話であることはお断りしておく。

さーて、こりゃ道はどこだろうなぁ…。印象からすると、画像中央付近にある木の辺りを通っていたように思われる。何しろ道がちゃんとしていない旧旧道の、おまけに森の中に数十年放置されてきた道だけに、その痕跡を辿るのも一苦労だ。しかし非常に楽しい。新しい部分を開拓した気分だ。但し、クマには十分に気を付けなくてはいけない。幸いにこの山は地主氏から「この山にはクマはいないよ」ということと、近くで林業作業が行われていて、その重機の騒音からクマやその他の自然生物は逃げてしまっていないよと言うお話を伺ったからだった。でなければ、途中で撤退していたかもしれない。

ここはなかなかに道幅は狭そうだが、それは左側の低木が張り出してきているからであり、これがなかったとすると道幅は結構広いと思う。で、道形はおそらく直進か左カーブだろう。この先の地面が少し凹んでいるようにも見えるので、これは道形が直進だった場合に、斜面が崩れて路盤がなくなってしまえば、探索は終了になってしまうかもしれない。左カーブであることを祈りながら、慎重に進んでいく。

ここは擂鉢状になっている地形。真ん中が枯れ沢のようになっており、道はその脇を頂上方向に向かって進んでいるように見える。この地形をじっと眺めて観察しながら、いろいろと考えを巡らせる。ふーむ、道がこの沢の脇を通っている…ということは、この地形はこの道があるころからこうだったと言うことだろうな。それなら地盤は安定している可能性が高いし、先へ進めるだろう。
そもそも、こんな時には旧版地形図があれば一発でわかるのだが、この時は携帯の電波もなく、突然の入山許可でもあったのでプリントしたものも持っていなかった。まさしく準備不足ということだ。と言うことで、自分の観察眼と知識をフルに使ってクリアするしかなかった。ただ、この時は長袖に長ズボン、ヘルメットに皮手袋、トレッキングシューズと、最低限の装備は整えていたことは幸いだった。

谷の脇を進んでいくと、このような場所に出てきた。もともとの地形が擂鉢状の谷になっていたということだろう。もしかすると、ここに地図に載っていない木橋などがあったのかもしれない。ここに立ってじーっと見てみると、目の前を木を右に回り込むように、道らしき平場が続いているようにも見える。おそらく道はここだろうと見た。…やれやれ、何とかこの場所はクリアできそうだ。
ホントにこの道が正解なんだろうか。もしかして彷徨っているだけなのでは…と我ながら不安になってしまうのだが、せっかくここまで来たんだ。このまま進むしかないだろう。
次回、ナナマガリと呼ばれた旧旧道の痕跡を辿って
更に山の中を進んでいく(彷徨っていく?)