赤谷発電所・常盤用水

2018年8月10日 探索・2018年10月9日 公開
2018年11月2日 加筆修正

突然の質問だが、皆さんは新潟県で最初に稼働した水力発電所は、どこかご存じだろうか?。候補はいくつかある。長岡市の信濃川発電所?。加治川の飯豊川第一発電所?。いやいや、やっぱり阿賀野市(旧笹神村)の大荒川発電所だろうか?。正解は、明治36年に発電を開始した、新発田市赤谷にある赤谷発電所(当時は内之倉発電所)である。そして、この赤谷発電所は(発電機こそ三代目なのだが)、現在も現役で稼働していたりする。

そして、この発電所へ向かう道の脇には、歴史上ほとんど姿を現すことがなく、しかも現地の滝谷・滝谷新田集落にとって大切な水を内之倉川から引水している「常盤用水」が流れている。実はこの常盤用水のことは以前から耳にしていたが、実際に文献を辿ってみるとそれがどこにあるかが一向にわからず、いつも途中で途切れてしまう。この常盤用水がどこにあって、その歴史的背景はどのようなものか、私は非常に興味があった。

調べていくといつも途中で途切れてしまう文献を漁ってみると、この常盤用水がどうやら赤谷発電所に関係していることを知り、それでは赤谷発電所を探せば常盤用水に行きつくだろうという短絡的思考によって、たどり着いたのが今回の探索である。では、その場所へ行くことにしよう。ここは新発田市滝谷新田地内にある、赤谷発電所への入口である。

これでもか!と言うくらいに、しっかりと表示してあるではないか。もしかして、結構メジャーだったりするのだろうか。実は、ここにたどり着く前に赤谷発電所の場所がどうしてもわからず、近くで畑を耕しておられた老夫婦にやむなく場所を尋ねた結果、ここにたどり着いたのだった。農作業でお忙しい中、手を止めて親切に道を教えて頂いた老夫婦に、この場を借りて厚く御礼を申し上げたい。
その節は、ありがとうございました! m(__)m

その老夫婦のおかげでたどり着いたここは、新発田市滝谷新田地内(滝谷とは違うので注意)。
ちなみに、ここで内之倉ダム方向に行くとそれはそれでまた楽しいことになるのだが、それは後日機会があれば紹介することにして、ここは素直に赤谷発電所方向へ直進すると…

水と緑の道だ!

道の横に流れている水の流れが「常磐用水」と言う。この用水にも、やっとお目にかかることが出来た。発見なり、文献なりで目的のものを一度見つけてしまうと、まるで霧が晴れたように関連する情報が舞い込んでくることは珍しいことではないが、今回もご多分に漏れず多くの情報が舞い込んできた。
それによると、その昔、現在の滝谷や滝谷新田に新田開発で入植された方々が、水の流れがなかったこの地に生活用水と田んぼに水を引くために、昼に開発の作業を終えて辺りがすっかり暗くなった夜に、村人が松明(たいまつ)で勾配を測りながら掘削し、内ノ倉川上流から苦労して通したのがこの用水で、内之倉発電所はその水を貰って発電していたそうである。そして、滝谷・滝谷新田の上水道は、現在でもこの常磐用水の水を滝谷地内で浄水して使用している。

この辺はまだ道幅が広いが、先へ進むと…
これは帰りに撮影したものだが、なかなか狭い道で良い雰囲気である。そして、赤谷発電所に到着。

撮影当時は点検中で水が少なかったが、通常は豊かな水量でここを流れている。おかげでこの時は構造をじっくり眺めることが出来た。水路上部の丸石の擁壁は、この水路竣功当時からのものだろう。歴史を感じさせる。

敷地内にあった発電機器が収められている小屋に取り付けられていた、赤谷発電所の沿革の説明板。ここもやはり赤谷鉱山に関連しているようである。しかし、ここから福島潟まで索道(簡単に言うと、スキーリフトの荷物版)って、かなりの距離があるような気がするのは気のせいか。

発電所の流れから分流する常磐用水。
この流れが延々と道のそばを、まるで山肌をトレースするかのように流れて集落に向かって流れ込んでいる。非常に豊かな水量である。

最後は、内之倉の豊かな水を流す常盤用水と、その脇を走る狭き道の共演をいくつか。道好きにとってこの風景はたまらない。

夏の日差しに照らされた木々の美しい緑と、緩やかに右にカーブして集落へと目指す道。以前にどこかでこんな林道を見たような気がする。今はあちこちでセミの声が響き渡り、気温も非常に高くてすっかり夏の様相なのだが、なぜかここはそれほど暑くはない。もしかすると、左の用水の水が辺りの空気を冷やしているのかも。

昔の方々の引水の苦労が偲ばれる用水の流れと、赤谷の歴史が垣間見える場所は…

新潟県新発田市滝谷新田地内
赤谷発電所
常磐用水

完結。

※赤谷発電所は、現在も稼働している現役の発電所です。赤谷電気工業株式会社様の御厚意により、画像の部分は見学が出来るように開放されていますが、現地にはそれ以外に立ち入り禁止の部分も多くあります。発電施設の立ち入り禁止場所へ立ち入ることは非常に危険ですので、絶対に立ち入らないようにお願いします。